ADK、新興テック企業と関係強化へ
アサツー ディ・ケイ(ADK)が新規事業開発支援プログラム「SCHEMA(スキーマ)」を始動させた。シリコンバレーに拠点を置くアクセラレーター「プラグ・アンド・プレイ・テックセンター(Plug and Play Tech Center )」傘下のプラグ・アンド・プレイ・ジャパン、秋葉原が拠点のハードウェア・スタートアップ「DMM.make Akiba」、グローバルな視点と起業家精神の育成に注力する広尾学園中・高等学校、更にデジタルハリウッド大学大学院とパートナーシップを締結。大手企業とスタートアップ双方の「グローバルな成功」を後押しするため、クリエイティブとテクノロジーのリソースの融合を目指す。
ニュースの視点:
ADKがより競争力をつけてサステナブル(持続可能)なビジネスを展開するため、意外性のある新たなパートナーと関係を結ぶ良いチャンス −− 昨年、ADKがベインキャピタルに買収された際にはこうした見方があった。広告界と技術革新を結びつけようとする企業は、決してADKだけではない。イノベーションを促進する教育システムが必要とされる学校現場との提携は正しい判断だろう。その一方で具体性は乏しく、これらのパートナーが何を成し遂げたいのかはっきりしない。具体的な成果を生み出すことで初めて、パートナーシップの意義が証明されるだろう。
電通、セプテーニと資本業務提携
今週、電通はデジタルマーケティングのセプテーニ・ホールディングスに69億円の出資をすると発表した。セプテーニは1990年の創業。
ニュースの視点:
電通は、独立型組織である電通デジタルの競争力を高めたい思惑がある。電通デジタルがこの分野に参入したのは極めて遅く、社員の多くも「デジタル的」なバックグラウンドがない。セプテーニのようにデジタル空間で成長を遂げてきた会社はソーシャルメディアマーケティングなどの専門知識があり、有益なサポートができるだろう。また電通も、(純然たるマーケティングとは異なる)ビジネスソリューションの提案で一定の役割を果たせるとみる。電通にとって近年における最も重要な買収・投資先は海外市場だった。現在は国内市場により注力、事業の更なる多角化の道を探る。
英国オグルヴィ、全社員に希望退職を勧告
社内再編を行ったオグルヴィのスポークスパーソンが、「全社員の希望退職を促す」と語った。再編によって新たに入社した者も対象となる。これは経費節減対策ではなく、「未来への再投資のため」と強調する。
ニュースの視点:
会社再編は混乱を伴いがちで、居場所を失う社員が出てくることは避けられない。このシナリオは、新しいオーナーの下で再出発しつつあるADKと類似する。新たな試みに挑む人々を会社がサポートすることは「人道的行為」であり、業界では「人への評価」として歓迎されるが、頻繁にあることではない。本気で挑戦する人々の独立を助ける意味でも好ましい措置だろう。
フェイスブック、売上33%アップでも「飽和状態」
フェイスブックの広告収入は9月30日までの3カ月間で対前年同期比33%増となり、135億米ドル(約1兆5000億円)に達した。その一方でマーク・ザッカーバーグCEOは、「最も利益が上がる市場では飽和状態」になりつつあり、ストーリー・動画機能の拡大、ニュースフィードとは相反する「コミュニティーの構築」などに注力していると語った。9月のアクティブユーザー数は1日平均15億人で、対前年比9%増。だが欧州では100万人のアクティブユーザーを失い、北米でのユーザー数の伸びも横ばい状態。アジア太平洋地域では500万人増となった。同氏は「20億人以上のユーザーが少なくとも1日1回、我々のサービスのどれかを利用している」ともコメントしている。
ニュースの視点:
フェイスブックは数多くの危機に耐えたが、その将来は不確実だ。ニュースフィードが牽引力を失った今、長期にわたって消費者を惹きつけるイノベーションが求められるが、それが何かはまだ判然としない。短期的に見れば不安材料はほとんどないが、広告主の構成は変化しつつある。今年の年間広告収入のうち50〜70億ドル(全体の10%)は中国からの広告主になる見込みで、前年に比べ大きな伸びとなる。
アフルエンサーの計り知れない影響力
リサーチ会社「イプソス(Ipsos)」はアジアの富裕層の消費行動を調べる年次調査で、アフルエンサー(Affluencer)という概念を提唱した。同社は、アフルエンサーを「成功した富裕層でセンスが良く、情報感度が高い。常に人々とつながっており、周りに影響を与えようという意思がある人」と定義している。この層の平均所得は約3万3000米ドル。消費額の大きさはもちろんのこと、影響力も多大で「人々の考え方や行動に与える影響が圧倒的」なのが特徴だ。アジアの富裕層はまた、テクノロジー面でも世界より進んでいる:スマートテレビを所有しているのは過半数、スマートフォンは92%で、この割合は欧米の富裕層よりも高い。イプソスによると、このようなアジアのアフルエンサーに訴求するのに大切なのは高級感や独創性だという。
ニュースの視点:
高所得者層が流行を牽引してきたという考え方自体は、それほど新しいものではない。だが、自分たちの意見を広く伝えるというアフルエンサーの特性や、彼らの動向をうかがう一般消費者の所得が増加傾向にある点を鑑みると、その影響力は計り知れない。たとえ超高級品を扱うブランドではなくても、アフルエンサーは注目すべき存在だろう。
WWF、消費者に消費行動の見直しを呼びかける
世界自然保護基金(WWF)は10月30日、『Living Planet Report:生きている地球レポート2018』を発表。人類の消費によって地球環境への負荷が増大し、世界の生物多様性が過去40年間で60%減少したことを伝えるものとなっている。これに合わせて、人々に消費習慣や消費行動を見直すよう促す、力強いキャンペーンも展開した。我々の世代は、自分たちが地球に負荷を与えていることを理解する最初の世代だが、同時にその現状を変えることができる最後の世代ともなり得る、と動画は訴求。「あなたは地球の味方か、それとも敵か?」と問いかける。
ニュースの視点:
WWFは同レポートで、地球環境の改変は人類が自然を過剰に、持続可能でない形で利用し続けてきたことが主たる原因だと指摘している。これは大切なメッセージであり、これで人々もようやく注目するかもしれない。だが本当に大きな変化を生み出すには、消費者がもっと地球環境に配慮した消費をしやすいよう、企業側ももっと責任を果たす必要がある。今はこれまで以上に、正しいことを行うブランドが評価される世の中となった。ブランドにとって、またとない差別化の機会ともいえる。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉、田崎亮子)