X、ブロック機能廃止へ
X(旧ツイッター)のイーロン・マスク氏が「ブロック機能」を廃止する方針を示した。この機能は誹謗中傷や差別的発言をするフォロワーをユーザーがブロックし、自身の投稿を見せないようにするもの。
ハラスメントやスパムを防ぐため、こうしたブロック機能は極めて重要なセキュリティーとされる。ツイッターのユーザーは特定企業の広告を避けたり、企業へのボイコットを表明したりする際にもこの機能を利用してきた。
マスク氏は18日、「DM(ダイレクトメール)以外のブロック機能は廃止される」と投稿。さらに「ミュート機能はまだ使える。ブロックは意味がない」とも。
ミュートは敵対的フォロワーの投稿をタイムライン上で見えないようにする機能。だが他のユーザーのフィードからは削除されない。
マスク氏によるツイッター買収後、Xではヘイトスピーチや反ユダヤ主義的な投稿が増加。一部の国では管理体制が不十分として、Xに罰金を課す動きもある。
またブロック機能の廃止は、「アップルストア」や「グーグルプレイ」の規約に抵触する可能性も。
アップルは、ユーザー生成コンテンツ(UGC)を含む全てのアプリは誹謗中傷・差別的発言をするユーザーをブロックする機能が必要とする。グーグルプレイもアプリにUGCやユーザーを制限する機能を義務付ける。
マスク氏のコメントをフォローするように、リンダ・ヤッカリーノCEOも自身のアカウントに投稿。「Xにとってユーザーの安全性は最優先事項。ブロックやミュートよりも優れた機能を開発していく」
だがそれから1週間も経たぬうち、ナチを容認するコンテンツにクライアントの広告が並列される事態に。広告主2社がX上でのキャンペーンを中止した。
「ユーチューブキッズ」 子どもの個人情報を拡散?
ユーチューブが子ども向けに開発したアプリ「ユーチューブキッズ」には、多くの大手企業の広告が掲載される。だが最新の調査で、これらの広告が子どもたちに対するトラッキングを助長している可能性があることがわかった。
調査を行ったのはメディアバイイング分析専門のプラットフォーム「アダリティクス(Adalytics)」。ユーチューブキッズに掲載される300社以上の広告を対象に、ユーザーのデータの流れを精査した。
それによると、多数のアドテク企業やデータブローカーが「視聴者、主として子どもたちから多くのデータを取得している」
ユーチューブは、子ども向けコンテンツの視聴者のデータは「ユーザーの年齢に関わりなく、全て子どものもの」(スーザン・ウォシッキー前CEOの声明より)とみなす。
ターゲティング広告などを目的とした子どものパーソナルデータ収集には、米連邦法の「児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)」によって、業者に親の同意が求められる。
米ソフトウェア業界団体SIIAのグローバルパブリックポリシー責任者ポール・レカス氏は、「子ども向けコンテンツ上の広告をクリックしたユーザーからクッキー(Cookie)を収集する行為は、たとえ意図的であったとしてもCOPPAには抵触しない」と話す。視聴者が実際に13歳以下の子どもかどうか、証明が難しいためだ。
また国際プライバシー専門家協会マネージングディレクターのコーブン・ヅヴァイフェル・キーガン氏も、「ユーチューブのユーザーが他のサイトを訪れてデータを収集されても、COPPAの規定ではユーチューブの責任は問われない」と話す。
アドリティクスは、ユーチューブキッズ上のいくつかの広告は「行動ターゲティングによるもの」と主張。これに対しグーグルは、18歳以下の若者に対するターゲティング広告はブロックされると反論する。「アドリティクスの調査報告書は重大な欠陥があり、大きな誤解を招く」(同社)
だがグーグルの主張にかかわらず、報告書は米国の政治家の関心を呼んだ。17日、2名の上院議員が連邦取引委員会に書簡を送付、「子どもたちのデータを大量に収集・拡散するグーグルとユーチューブの行為はCOPPAの規定に反する。至急捜査を開始すべし」と訴えた。
「両社の活動は、米国中の何百万という子どもたちに影響を及ぼしたと思われる」(エドワード・マーキー、マーシャ・ブラックバーン上院議員)
今後は公の場でグーグルの責任が問われることになりそうだ。
広告に登場する「シニア世代」は、わずか4%
英クリエイティブデータプラットフォーム「クリエイティブX」が行った調査で、広告に登場する60歳以上の人々はわずか4%に過ぎないことがわかった。
同社は2022年に公開された世界の広告、約12万6000本を精査。対象としたのは日用消費財やヘルスケア、アルコールなどのブランドで、広告中の登場人物は合計約2万5000人。これら広告への支出は計1億2400万ドル(約173億6000万円)に上った。
広告中のシニア世代がわずか4%でも、英国ではこの層の人口は全体の約4分の1(23%)を占める。デジタルメディア広告ではさらに登場する率が減り、3%だった。
また、シニア世代の描かれ方が極めて限定的であることもわかった。65%は「家庭の中の存在」として描かれ、職場で活躍したり、社会でリーダーシップを発揮したりという描写は1%にも満たなかった。これら世代の購買力を考えると、現在の広告は「現実を正確に反映していない」(クリエイティブX)
英金融大手バークレイズは2019年の報告書で、60歳以上の人々の購買力は2020年に15兆ドルに達すると記載。現在の世界の消費者の購買力は、独市場調査プラットフォーム「スタティスタ」によると58兆ドル。これらのデータを考えあわせると、「ブランドは大きな利益をもたらすシニア層の消費者を見落としている」(クリエイティブX)
クリエイティブXはこの調査に先駆け、2021〜22年に公開された広告約1万本の調査も行った。それによると、60歳以上の女性を取り上げた広告は全体のわずか2%。そのうち、職場などで活躍する姿を描いたものは1%以下だった。また、26歳から50歳の女性を取り上げた広告でも、同様の描写は10%だった。
クリエイティブXの創業者でCEOのアナスタシア・レング氏は、「こうした結果は多くの人々にとって驚きではないかもしれません。テクノロジーの進歩によって、我々はこのようなデータをほぼリアルタイムで獲得できるようになった。こうした調査結果がクリエイティブのインクルーシビティ(包摂性)を高め、より正確に多様な現実を反映していくでしょう」と話す。
WPP、独自のブランド測定ツールを日本で提供
WPPがブランド分析プラットフォーム「BAV(ブランド・アセット・バリュエーター)」の提供を日本で開始した。
1993年にスタートしたBAVは世界で6万3000を超えるブランドをカバー。世界52市場、200万人に及ぶ消費者の調査から、160億ものデータポイントを提供する。
日本のデータセットでは868のブランド、129の製品・サービスカテゴリーをカバー。1万人の回答者サンプルを有する。
今回、同社はこれらのデータセットから日本のブランドと消費者に関する3つの分析結果を発表した。
まず、「影響力のあるブランドは、消費者から強い感情的エンゲージメントを獲得している」。ブランドが消費者の生活・行動に強い影響を与える特徴は以下の9つであるとし、それぞれ具体例を挙げた −− 「イノベーション」(日本のブランド例・任天堂)、「真正性」(同・スタジオジブリ)、「ステータス」(同・帝国ホテル)、「信頼性」(同・ヤマト運輸)、「利便性」(同・コメリ)、「コンテンポラリー」(同・Ameba)、「パフォーマンス」(同・ソニー)、「楽しさ」(同・ガリガリ君)、「パーパス」(同・トヨタ)
次に、「市場を制するために特に重要な要素はイノベーション、パフォーマンス、パーパス」。イノベーションに強いブランドは常に時代を先取りしていると認識され、「推奨率」は他ブランドより69%増。パフォーマンスに強いブランドは製品・サービスの品質の良さで知られ、「より高い対価を支払う価値がある」という視点で2.8倍のスコアを獲得。また、パーパスのトップブランドは経済的成功にとどまらず、社会的責任も果たしていると認識され、「優先度」は2倍に達している。
さらに、「影響力のあるブランドは、より強力にビジネス成長を推進する」。影響力の強い日本のブランド上位10%は高い株主価値を提供しており、消費者と強いエンゲージメントを構築することでビジネスチャンスにつなげているという。
(文:水野龍哉)