4年に一度の冬の祭典、冬季オリンピック。だが、2年後に控えた東京五輪を視野に入れて夏の種目も盛り込んだCMが多く、冬の種目のみをモチーフにしたCMは意外なほど少なかった。
また、スポーツの緊張感や楽しさを伝えるCMの他に、ダイバーシティー(多様性)とインクルーシブネス(包括性)を意識した作品も国内外で見られるようになってきた。
●コカ・コーラ 「祝!メダル」シリーズ
日本選手がメダルを獲得した直後に、綾瀬はるかが「メダル、おめでとうございます!」と拍手しながら活躍を賞賛。お祝いのコメントでメダルの色には触れないものの、それぞれの競技の特徴が盛り込まれており、生放送のCMなのかと思ってしまうほど。これを、一番盛り上がっている試合直後に放送しており、タイミングが絶妙なCMだった。
●JAL 「只今JALで移動中」カーリング日本代表男子編
男女ともに快進撃を見せたカーリングは、今大会で人気が急上昇した種目といえるだろう。緊張感漂う試合のみならず、おやつを食べながら作戦会議を行う様子や、女子チームが話す北海道弁も注目を集めている。そんな両チームの和気藹々とした様子をうまく表現しているのが、JALの企業CMだ。男子編では選手たちが笑いながらランニングしたり、駅のホームでストーンを投げる動きを再現するなど、まるで中高生の合宿のようなノリの良さだ。女子編では、選手全員が生まれ育った町の様子や、そこで幼いころからプレーしてきたことが描かれている。
●ENEOS 「ENEOSエネルギーソング フィギュアスケート」編
スケートリンクを華麗に舞う荒川静香(プロフィギュアスケーター)の後ろからENEOSのキャラクター「エネゴリくん」が登場、両者は見事なレイバック・イナバウアーを決める。また「スピードスケート」編では、先頭を滑走していたエネゴリくんが転倒、しかしそのまま一位でゴールする様子が笑いを誘う。現役選手の苦悩や努力を伝えるCMや番組が多く見られる中で、スポーツをユーモラスに表現しており印象に残る。着ぐるみの中に入っているのは誰なのかを、滑り方や衣装から推測することも楽しい。
●P&G 「ママの公式スポンサー Thank you, Mom(ゆるぎない母の愛)」
2012ロンドン五輪以降、P&Gは「ママの公式スポンサー」キャンペーンをグローバルに展開。今大会では、さまざまな不平等や先入観などに直面するアスリートたちを支え続ける、母親の姿にフォーカスしたCMを公開した。また、この動画を制作するにあたって参考にしたというアスリートたちが具体的にどのような困難を克服してきたのか、特設サイトで紹介している。
●ブリヂストン 「どこまでも行こう 冬 篇」
アスリートが主役のオリンピック関連CMはメッセージや表現が似てしまいがちで、「感動したものの、結局どのブランドのCMなのか分からなかった」という作品も少なくない。だがこのCMでは、生活者になじみのあるタイヤ交換や、ビルを支える免震ゴムの事業に携わる社員も出演しており、ブリヂストンらしさも表現されている。特設サイトのスペシャルムービーでは同社の歴史や、創業者の思いを受け継いだスポンサーシップなどを幅広く網羅。盛りだくさんの内容ではあるが、名の知れたブランドの知られざる一面を4分35秒で知ることができ、ブランドを応援するサポーターの獲得に役立つと期待される。
(文:田崎亮子)