David Blecken
2019年4月22日

「印鑑」で殺される象を救え

アースデイ(地球の日)に向け、精巧なアニメーション動画が公開された。象の殺戮を止めるため、象牙ではなく木製の印鑑を広めようと訴えかける。

「印鑑」で殺される象を救え

野生生物絶滅の危機を語るとき、しばしば引き合いに出されるのは中国だ。野生生物製品の消費量の多さがその理由だが、非難されるべきは決して中国だけではない。中国が禁止した象牙取引はいまだに日本で続けられており、その販売量は世界一という。

この事実を改めて日本人に認識させようと、新たな動画が制作された。それによると、国内市場で取引される象牙の8割は印鑑用だという。作品を手がけたグレイ東京のクリエイティブディレクター、多賀谷昌徳氏は「日本が象牙消費大国であること、そしてアフリカ象が絶滅の危機にあることを多くの日本人が知らない」とプレスリリースの中で語る。

「ハンコグラフ」と題されたこの作品は、「ワイルドエイド(WildAid)・ジャパン」「アフリカ象の涙(Tears of the African Elephant)」という二つの非営利団体が4月22日のアースデイに向けてプロデュースした。制作を担当したのは世界的に知られるアニメーション作家、山村浩二氏。一枚一枚の画像は印鑑で作られ、密猟者によって殺された象が牙を切り取られ、アフリカから日本に運ばれて印鑑になるまでの「消費サイクル」を描く。



作品に込められたメッセージは、印鑑は「持続可能な素材で簡単に作ることができる」ということ。そして最後に、象牙ではなく木材を使用した500個の印鑑でこの映像を実現したことを明かす。

ハンコグラフは新聞紙上や都内の主要地域に設置されたビルボードでも展開される。ワイルドエイドのチーフエグゼクティブであるピーター・ナイツ氏は、「象牙の合法的取引を終わらせようと活動するグローバルコミュニティーに、日本もいち早く参加してほしい」と語る。

Campaignの視点:
動画のメッセージはシンプルで力強く、制作技法は実に素晴らしい。日本人以外の視聴者は、なぜ印鑑を使う必要があるのか −− たとえ木製であっても −− 不思議に思うだろうが、それはまた別の話だ。この作品が十分に露出されれば、象の殺戮という極めて深刻な問題に対する認知度は高まろう。他のチャリティーの宣伝同様、(広告代理店に広告賞を取らせるための作品とは対照的な)こうした大義ある作品がどれだけ影響力を発揮できるか注目したい。

事態を改善するため、大衆を啓蒙することは一つの手段だ。だが抜本的な改善のためには、象牙取引を完全に禁止するよう政府に圧力をかけねばならない。中国では取引が禁止された後、象牙製品に対する関心は著しく下がっている。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

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