ジェイ・ウォルター・トンプソン(JWT)に13年近く勤めた森田氏は最近、エデルマン・ジャパンのディレクター・オブ・ブランドに就任した。転職前はJWTでグローバル・コーポレート・マーケティング・ディレクターとして、日本企業の海外進出のサポートに携わっていた。
森田氏はエデルマン・ジャパンの代表取締役社長ロス・ローブリー氏を訪れ、新しい職場での役割について詳細を詰めている。とはいえ、単なるPR会社以上の存在に姿を変えようとサービスの多様化を進めるエデルマンにおいて、同氏の役割は、より高いレベルで顧客ブランドの形成を考えることと、ブランディング統制を強めることであろう。社内のブランドグループ(かつてのコンシューマーグループ)を率い、必要に応じて社内外と連携していくことになる。
広告からPRへの転身はまだ比較的まれではあるだが、エデルマンは最近、BBDOなどいくつかの広告会社から人材を採用している。森田氏は今回の転職の理由には、自身が「ボーダーレス」の仕事がしたかったことと、ブランディングをよりPRの視点から見たかったことがあると説明する。広告界は依然として、ブランドから消費者への一方通行的なコミュニケーションから抜け出せずに苦慮しているというのだ。
また森田氏は転職前から、エデルマンをPRエージェンシーというよりもむしろ、主張を持って牽引していく「ソートリーダーシップ・エージェンシー」と位置付けていた。エデルマンが毎年発表する信頼度調査「トラストバロメーター」などのレポートは、JWT時代に戦略を考える上で役立てていたという。エデルマンはCampaignが主催する「PRアワード・アジア2017」で、「日本/韓国PRコンサルタンシー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれている。
社会情報大学大学院(新宿区)の理事長、東英弥氏は昨年のインタビューで、日本のPRはブランディングやその他のマーケティング活動とかけ離れているケースがあまりにも多いと指摘。森田氏は、PRとマーケティングのすべての活動はブランドを中心に据え、予算も同じ財布から出されるべきだと話す。「PRを通じてメディアに伝えられるものは、それが消費者に届いた時点で、すべてブランドからのメッセージなのです。そのメッセージがどこから発せられたのかは関係ありません。だからPRに従事する人たちは、もっとブランド中心主義でなければならないのです」
森田氏が特に関心を寄せるのは、スタートアップ企業だ。JWT時代にスタートアップのためのワークショップを行い、スタッフをブランドのアドボケイト(熱烈な支援者)に変えた。「ブランドに寄与してくれる人は、すべて大切なのです」
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:田崎亮子)