アンルーリーの調査「フューチャー・ビデオ・サーベイ(Future Video Survey)」では、日本で調査対象となった消費者の94%が広告ブロックソフトの導入を検討していると回答した。同様の回答をしたのは全世界では93%、東南アジアでは88%であった。
また、動画の前にプレロール広告を強制的に視聴させられることを「不快に感じる」と、日本の回答者の3分の2が回答しているが、東南アジアで同様に答えたのは45%だった。一方で、ターゲティング広告を「有益だ」と回答したのが、日本では3分の1と、他のどの国よりも多かったことは救いといえるだろう。
この調査は2015年8月に行われ、回答者数は全世界で3,200人。そのうちアジア太平洋地域が1,200人(日本:400人、オーストラリア:400人、東南アジア:400人)であった。
アンルーリーの日本法人代表である香川晴代氏は、この調査によって「広告業界が直面している大きな課題」が浮き彫りになったと述べた。さらに香川氏のコメントでは、広告ブロックが世界で414億米ドルもの損失をもたらすと予測したアドビとページフェアによる調査にも触れている。
テレビ時代からの呪縛
大半の企業は未だに「テレビ時代からの呪縛」にとらわれており、強制的でない広告アプローチを導入できていないと香川氏は指摘する。だとすると、多くの人が望まない広告をブロックする傾向も必然的といえるだろう。
「解決方法はいたってシンプルで、何より大切なのは、より良い広告、つまり見る価値のあるコンテンツであること。そして、広告やページローディング、広告フォーマットにおける礼儀正しさも重要です」(香川氏)
もちろん、消費者の注意持続時間がますます短くなっている中で、消費者に本当に見たいと思ってもらえるコンテンツを作ることは困難だ。このような現状を踏まえて、アンルーリーは日本の広告主の指針となるべく、「動画広告の将来に関するマニフェスト」を発表した。このマニフェストは、以下の7つの内容で構成されている:「制作前に明確なゴールを設定する」「ブランド本来の姿で表現し、誰かを中傷しない」「消費者とエモーショナルなつながりを作る」「自分に関係あると思ってもらえるパーソナルなコンテンツ」「シェアしたくなる根拠を明らかに」「ユーザ体験を尊重する」「試行錯誤しながら柔軟に学ぶ」。
納得のいくものばかりだが、テレビ時代の呪縛から抜け出せていない企業は一体どこから着手すればよいのか。そのような企業はまず、広告の目的が製品・サービスの告知から、消費者との関係構築へと変わったのを理解することから始めなくてはならない、と香川氏は話す。
多くの企業が未だに製品中心の広告を打ち、ソーシャルメディアでの交流をようやっと行っている日本では、考え方の大きな転換が必要だろう。「コンテンツの監査」を行い、広告活動がどれだけ目的に合致しているかを項目ごとに点検することを香川氏は提案する。
率直に訴えよう
香川氏によると、広告を「邪魔にならない」ようにすることは、必ずしもブランディングや広告を減らすことではない。端的なブランディングは、コンテンツのシェアや、エモーショナルなつながりを弱めるものではないことが、アンルーリーの調査で明らかにされている。特にミレニアル世代は、自分とつながりや関わりがあると思うものは、企業のコンテンツでもシェアする傾向にある。
「ブランドが誠実でないことの方が、はるかに消費者を不快にします。企業からの率直な売り込みは消費者に望まれており、特に日本の消費者は、自分に関係があると感じる製品やサービスであれば、オンライン広告を見たいとも思っているのです」と香川氏は話す。
各企業が広告ブロックへの対策に真剣に取り組みたいのであれば、消費者の気持ちになって考えることは難しくないはずだ。まずは消費者が動画広告をコントロールできるようにすることが必然だろう。日本の消費者の50%、そして世界では62%が、動画広告を自分でコントロールできるようになることは喜ばしいと回答している。
「広告がユーザ体験に与える影響の大きさを、各企業は考えなければなりません」と香川氏は語る。「オプトイン型の邪魔にならない広告フォーマットを用いることで、再び消費者をコントロールできるようになるでしょう。これは、ユーザ体験が一層重要なモバイル広告では、特に考えなければならない要素です」
(編集:田崎亮子)