新型コロナウイルスの感染拡大が止まぬなか、世界の人々はこの状況をどのように受け止めているのか −− マッキャンは3月中旬、日本を含む英・米・独・仏・伊・加・西など世界14か国・計約14,000人(各国約1,000人)を対象に調査を行った。
その結果、自国政府の対応体制が「整っている」「とても整っている」と回答した人は世界全体の3割(31%)。最も多かったのはインドの55%で、次いでトルコの51%だった(日本は18%)。「とても整っている」と答えた人は全体の14%で、日本は最も低く5%。英国6%、米国11%がこれに続いた。
個々の感染防止策としては、「こまめな手洗いと手指消毒」(76%)、「公共の場を避ける」(59%)、「免疫力を高める努力」(32%)などが上位に。また「政府機関が我々を守るべき」と答えた人が4割(39%)だったのに対し、残りの6割(61%)は「自分の安全は自分の責任」と答えた(日本は70%)。これは世界各国で行政への信頼が失墜し、個人の意識や行動力が高まっていることを示す。
パンデミック(世界的大流行)によって生じる不安で最も多かったのは「経済への打撃」(48%)。以下、「多くの死者が出る」(43%)、「社会的弱者が孤立する」(32%)、「失業、またはお金に困る(21%)、「生活必需品が入手困難になる」(28%)、「人種差別が悪化する」(14%)と続いた。
経済的打撃を最も大きな不安材料として挙げたのは米国で、56%。次いでカナダと日本が54%。死者の増加はアルゼンチン(53%)と英国(52%)、失業への不安は日本(35%)とカナダ(29%)で数値が高かった。また、日本人の47%は生活必需品の入手が困難になることを不安視。さらに、「現在の勤務先は従業員の安全を最優先に考えている」と答えた人は全体の18%に過ぎなかった。
失業や人種差別への不安を抱くのは、中高年層よりも若年層の方が多い。例えば、米国で人種差別を挙げた人は18~24歳で22%だったが、45~54歳では10%。スペインでは18~24歳が17%で、45~54歳では9%だった。
世界で3人に1人(36%)は「コロナウイルスに感染しても自分は大丈夫」と答えたが、日本やイタリアなど感染拡大が長期化している国ではその割合が少なかった(それぞれ13%、19%)。一方、米国とカナダでは過半数が「自分は大丈夫」と答え(それぞれ58%、54%)、英国もほぼ半数(47%)だった。ただし、米国の感染者数はこの調査直後から爆発的に増加。3月31日の時点で約16万5,000人となり、一気に世界最大の感染国となった。この点に関する国民の意識は大きく変わりつつあろう。
また、「メディアが不要にパニックを煽っている」と答えた人が多かったのは日本(56%)と英国(53%)。逆に、そう感じている人が少なかったのはスペインとイタリア(ともに29%)だった。
興味深いのは、不安や恐怖が蔓延するなかでも人々が前向きな姿勢を忘れていないことだ。「プラスの影響もある」と答えた人は、世界でなんと90%以上。54%は「人生で本当に大切なものを考える機会になっている」と答え、39%は「家族と過ごす時間が増やせる」と答えた。さらに37%は「二酸化炭素排出量が減る」ことを肯定的に捉え、17%は「この機会に生まれた新たな文化・習慣を楽しんでいる」。また、「信仰に拠りどころを求める」人は14%(米国では3人に1人)で、仕事が休みとなり「オフを享受している」人は12%だった。
(文:水野龍哉)