日本では「食」に対する関心が極めて高い ― この点に着目したブッキング・ドットコムは、ワイデン・アンド・ケネディと共同で新しいテレビCMを制作した。その内容は、おいしいものに目がない九州出身の2人組の男性が、行く先々で食文化を満喫するというもの。この2人のグルメにとっては、「食べることが観光」。CMは30秒と15秒のヴァージョン(下記リンク参照)があり、同社のサイトを通じた国内外の宿泊予約数を増やしていこうという狙いがある。
では、グルメ旅行のコンセプトと宿はどう結びつくのか。CMでは、2人がホテルや旅館、民泊施設などで食事を楽しむ姿が次々と映し出される。つまり、ブッキング・ドットコムで予約できる美食を味わえる宿を、幅広く紹介しているのだ。
このCMに関してワイデン・アンド・ケネディは、「旅先でやりたいことが何であれ、ブッキング・ドットコムならそれが実現できる理想の宿が見つかる」というメッセージが込められているという。
ブッキング・ドットコムでは先ごろ、旅行者の関心に応じて宿を検索できる機能を導入した。利用者は釣りやナイトライフ、健康食など幅広いテーマから目的を選び、行き先を特定することができる。
ブッキング・ドットコムもAirbnbのような競合サイト同様、ありきたりのガイドブックやパッケージツアーでは手に入らない刺激を求める、独立心旺盛な旅行者へのサービス提供を目指す。
往々にして日本人旅行者は用心深く、パッケージツアーに参加する傾向が強いと思われがちだが、ワイデン・アンド・ケネディのコピーライターであるチャーリー・グシュヴェント氏は、「調査の結果、日本人の旅行の楽しみ方が急激に変わっていることがわかった」という。
「新幹線の延伸やLCC(格安航空会社)の拡がりで、旅はかつてないほど手軽なものになりました。旅が身近になり、人々の目も肥えてきた。画一的なパッケージツアーではもう満足しないし、旅行代理店が立てるプランにも頼らないのです。旅行者は独自の『冒険』を計画し、宿も自分で予約するようになりました。自分の情熱や興味を満たしてくれるか否かという基準で、宿を選ぶのです」
新しいキャンペーンは今夏を通して展開される予定で、前述の「食」以外にもう2つ、「スポーツ」と「温泉」をテーマとしたテレビCMがオンエアされ、国内外18のスポットが紹介される。
さらには、様々なオンラインムービー・シリーズも展開される。「あなたなら、旅に何もってく?」では、それぞれの旅行者の旅への思い入れと、持参するアイテムをパッキングしている様子を描く。「あなたの冒険を『自像り(じぞり)』でシェアしよう」は、旅行者が冒険家の銅像のようなポーズで撮影した自撮りムービーで、旅のヒントを提案。「One Minute Weekends」では、ヒップホップアーティストたちが自分たちの情熱をラップで表現しながら、様々な宿を楽しむ様子を紹介する。
ブッキング・ドットコムと競合する日本の宿泊予約サイトには、民泊を体験して日本各地で「本物の発見」をしようと訴えかけるSTAY JAPAN(ステイジャパン)などがある。
Campaignからのコメント
旅行予約サイトは、それぞれの特徴と差別化したサービスを確立する必要がある。さもなければ似たようなサービスに埋もれてしまい、より面白く、使いやすいものが登場した時点でユーザーは瞬間的に離れていってしまう。そうした観点からすると、ブッキング・ドットコムは賢明なポジショニングをしたと言えよう。もちろん多くの旅行者は、どこに宿泊しようと旅先でグルメを楽しむ。だが、画一化された味気ない旅のあり方を変えようという同社の試みは大いに評価できる。加えて、旅行者の関心に沿った最高の体験をしてもらおうという姿勢も実に良い。今後、「自像りの銅像」たちがどのような旅先の話題を提供してくれるのか楽しみだ。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:水野龍哉)
(英語記事)