主力事業の成長鈍化に伴い、2四半期連続で純損失に転じるなか、アマゾンは、好調なクラウドサービス事業Amazon Web Services(AWS)への依存を高め、広告商品のラインアップも整えつつある。世界規模の不況が迫り、サプライチェーンのひっ迫が依然として尾を引くなかで、アマゾンの四半期売上は、7.2%増の1212億ドル(約16兆4000億円)となったものの、最終損益は20億ドル(約2700億円)の純損失となった。前年同期は78億ドル(約1兆550億円)の純利益を計上していた。
メタやアルファベットなどの競合には逆風が吹いたが、アマゾンの広告事業は、依然として好調を維持しており、今四半期の広告部門の売上は前年同期比21%増となった。だが、88%増だった昨年の大躍進と比べればやや見劣りがする。「現在、我々の広告事業は力強く成長している」と、アマゾンの最高財務責任者、ブライアン・オルサフスキー氏は、その収支報告の中でアナリストに語った。「我々はまた、(中略)消費者向けウェブサイトの広告枠からTwitchその他の動画広告まで、さまざまな広告商品のラインアップを拡充しているところだ」
IR担当ディレクターのデイブ・フィルズ氏は、広告事業拡大の背景をさらに詳しく説明した。同氏によれば、アマゾンは昨年、動画ストリーミングサービスのFreeveeなどで展開するストリーミング動画コンテンツ用に、インタラクティブ広告を導入したほか、Amazon Musicに広告付きプランや音声広告も導入している。
アマゾンには、パンデミックによってビジネスが肥大化したことの反動が表われはじめている。従業員数や倉庫数が過剰となり、これが主にEコマース事業を圧迫しているのだ。こうした低迷とは対照的に、AWS事業は順調に成長しており、同部門の売上は33%増の197億ドル(約2兆6650億円)を記録した。アマゾンの発表によれば、今四半期、AWSは200もの製品をリリースし、デルタ航空やスウェーデンの機械メーカーSKFなどの顧客を獲得したという。
アマゾンのCEO、アンディ・ジャシー氏は、同社は流動的な状況にうまく対処しているとして、プレスリリースで次のように述べている。「インフレ圧力が依然として燃料、エネルギー、輸送コストを押し上げているものの、前四半期に言及したコスト管理については進捗しており、とりわけフルフィルメントネットワークの生産性が向上している」
パンデミックの脅威が和らぎ、顧客が実店舗や対面イベントに回帰したことで、アマゾンの巨大なEコマース事業は減速局面に入った。しかし、オンラインストア部門の売上は4%減少したが、実店舗は引き続き成長し、今四半期の売上は12%増となった。
地域別の状況について、アマゾンは詳細な内訳を公表していないが、少なくとも海外(北米以外)事業は。売上が12%減少し、営業利益も、前年同期の3億6200万ドル(約489億6500万円)から、17億ドル(約2300億円)の営業損失に転落している。北米事業は、売上が10%増となったものの、こちらも6億2700万ドル(約848億円)の営業損失を計上している。
アマゾンの予測によれば、同社の第3四半期売上は1250~1300億ドル(約16兆9080億~約17兆5840億円)の範囲となり、成長率は13~17%増となる見込みだ。