Aleda Stam
2022年1月27日

「エージェンシーは化石燃料企業との関係を断て」 科学者からの警鐘

広告業界などの有志が展開するキャンペーン「クリーン・クリエイティブス」と米国の「憂慮する科学者同盟(UCS)」が共同で公開書簡を発表した。「気候の非常事態を示すデータやリスクをごまかし、軽視する」化石燃料企業のキャンペーンを直ちにやめるよう、エージェンシーに求めている。

「エージェンシーは化石燃料企業との関係を断て」 科学者からの警鐘

クリーン・クリエイティブスとUCSが公開書簡を発表したのは19日。広告・PR・クリエイティブエージェンシーに対し、化石燃料企業のクライアントとは取引を行わないよう求めた。

この書簡には450人以上の科学者が署名。化石燃料企業の広告やPRは「気候の非常事態を示すデータやリスクをごまかし、軽視している。こうしたキャンペーンを凌駕する有意義な行動の実践が重要課題」と指摘する。

さらに、「現在進行中の気候非常事態を改善し、あらゆる災害を防ぐ取り組みが各国政府に求められていることは科学が立証している。化石燃料企業のキャンペーンはこうした取り組みの最大の障害の1つ」とし、「どのようなクライアントと取引をしたらよいか思案する広告・PRエージェンシーにとって、科学的に正しいアプローチは1つしかない。それは、石油やガスの生産拡大を図る企業との関係を一切断ち切ることだ」と結論づける。

環境NPO「フォッシル・フリー・メディア(FFM)」が主導するキャンペーン、クリーン・クリエイティブスはこの書簡をエデルマンやWPP、インターパブリック・グループ、さらにはこれらエージェンシーの有力なクライアントであり、持続可能性に注力するユニリーバ、アマゾン、マイクロソフト、ザ・ノース・フェイスといった企業に送付したと言及。

同キャンペーンは世界最大のPR会社であるエデルマンに対し、化石燃料企業との取引をやめるよう再三求めてきた。

FFMディレクターのジェイミー・ヘン氏は、「メディアの汚染は我々が生きる環境の汚染に直結する」とコメント。「これらを浄化する唯一の解決策は、プロパガンダを根源から断ち切ること。化石燃料企業を利する活動を続ける広告・PRエージェンシーは、取引をやめることです。クリエイティブは今、自らがクリーンにならなければならない」

クリーン・クリエイティブにとっての次の一手は、気候危機への意識が高い企業との連携だ。ヘン氏によると、書簡の中で挙げたエージェンシーとの取引停止を明言した企業はまだないが、ユニリーバやイケアは検討中だという。

「我々の最終目標はこうしたエージェンシーを罰するのではなく、変えていくこと。エデルマンがユニリーバと画期的な協定を結ぶ。あるいは化石燃料企業との関係を断ち切り、持続可能性を追求する企業とのみ取引をする。こうした実績を上げていきたい」

今回の書簡発表に先立ち、昨年12月には学術誌「クライマティック・チェンジ」が「広告・PR・マーケティング企業が展開する何百ものキャンペーンが、気候変動対策の妨げになっている」とする査読付き論文を発表した。

エデルマンは昨年、米石油大手エクソンモービルと長年取引をしてきたとして強い批判を浴びた。今月、エデルマンは全クライアントのレビュー(再評価)を行い、気候変動対策を判断基準として取引先を選別する指針を発表。化石燃料企業との取引は今も続くが、同社のリチャード・エデルマンCEOは「この指針を満たさないクライアントとは決別する」と明言した。

「クライアントとはこの指針や、全ての企業に当てはまるベストプラクティスについて活発な議論をしていきます。合意に達することができなければ、その企業とは決別することになるでしょう」(同氏)

エクソンモービルは18日、世界で展開する事業からの炭素排出量を2050年までに実質ゼロにすると発表した。だが、これには顧客がエクソンの製品を使って排出する炭素は含まれていない。エデルマンはこの件に関し、コメントを拒否した。

(文:アリダ・スタム 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
PRWeek

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