Eileen Kiernan
2020年10月30日

エージェンシーモデルの未来のために検討すべき7つの質問

UMのグローバルCEOは、エージェンシーモデルを維持するには、今と次の状況を偏見なく受け入れ、同時にレガシーな慣行に疑念を持ち、変化に即応する方法を理解することが重要だと言う。

エージェンシーモデルの未来のために検討すべき7つの質問

この1年間に消費者行動が様変わりしたことで、事業の運営に破壊的変化が生じ、マーケターは対応と革新を促されている。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、eコマースはほんの数カ月で10年分の変化を経験した。スモールビジネスの半数近くが廃業し、ブランドは将来に向けて戦略の再考を強いられた。2020年夏に全米で人種差別への問題意識が高まったことで、ブランドは利益と目的のバランスを改善し、社会問題への姿勢を示すよう促された。

こうした急激な変化が新たな常態になった今、無限の――ただしおそらくは方向の定まらない――可能性を秘めた状況において、ビジネスリーダーは何を選択すべきかをどう決めればよいのだろう?

まず、過去のモデルはこの新しい現実に通用しないということを認識する必要がある。この先の進路には、未知のハードルが前例のない頻度で立ちはだかるだろう。エージェンシーモデルを維持するには、今とその先の状況を偏見なく受け入れ、同時にレガシーな慣行に疑念を持ち、変化に即応する方法を理解することが重要だ。

エージェンシーモデルの未来に取り組む際に、エージェンシーとクライアントは以下の7項目を検討すべきだ。

1.     複雑性に満ちた状況下で、何が最も重要で唯一の目標になるか?

明確な揺るぎない目標を見極め、共有し、それを中心に組織を編成することは、将来も通用するビジネスモデルの基本だ。

犬が笛の音を追うように、事業進捗に役立たないKPIを追い求めるなら、ほぼ確実に時間、エネルギー、リソースを浪費してしまう。何を追跡するか、その理由を明確化して、運用と成果を測定する適切なフレームワークを設計することで障害を見極め、取り除くことが、かつてないほど必要不可欠になっている。

2.     最も重要な「次」は何か?

未来学者レイ・カーツワイル(Ray Kurzweil)氏の「収穫加速の法則」によれば、私たちは21世紀だけで2万年分の変化を経験するという。変化の間隔はどんどん短くなり、今日と明日の境界はあいまいになる。

つまり、エージェンシーは慎重にテストしている場合ではなく、すぐ先にあるチャンスに乗り出す必要があるということだ。

選んだ方向が適切なら、迅速な転身が可能になり、イノベーションの成果を享受できる。方向が間違っていても――懸命に努力してもそれは起こり得るが――、進む速度と、影響が徐々に広がる性質により、重大なリスクは回避できる。

3.     どのように持続的な成長を実現するのか?

マーケティングはデータとテクノロジーを活用することで、コストセンターから成長の原動力に変わった。ただし、代償もある。業界における「聖杯」(目的・目標)が短期的なROIに変わったのだ。

こうした狭義の成功は、マーケティング科学の基礎を無視している。しかも、顧客体験と顧客ジャーニーのニュアンスを区別できない。このトレンドに逆らい、時間をかけて証明されたことを考慮に入れたうえで、成功を促すイノベーションを採用すべきだ。

4.     企業の核となる部分の健康度は?

マーケティングファネルが顧客ジャーニーを理解するための中核フレームワークであることには変わりはない。メディアと広告主は数十年にわたり、ブランド認知度を高めるため、主にファネルの上部に注力していた。その後、データに巨額の資金が投じられるようになり、私たちはパフォーマンスを高めるためファネル下部の能力を強化し始めた。

その結果、結合組織にあたるファネル中部が痛々しいほど無視されている。

徴候を示すデータと各種の分析があれば、法医学のような精度で、ファネル全体を成長のために最適化する方法を把握できる。これは消費者全員に個別に会うことのように単純で、かつ困難だ。しかし、そうしなければ十分な価値を得ることはできない。

5.     進路が明確になったとき、進む準備はできているか?

世界が複雑になると、組織の透明性と単純化が極めて重要になる。

エージェンシーで情報部門が拡大する一方、構造、意思決定、プロセス、ワークフローといった業務遂行の仕組みの適応が遅れている。この点についてはスタートアップの方が有利だ。顧客のニーズに応じて組織化する傾向があり、レガシーな成功の尺度に縛られていないためだ。

情報の迅速かつスムーズな供給プロセスは情報そのものと同じくらい重要だ。ピーター・ドラッカー(Peter Drucker)も「新しいことがしたければ、古いことをやめなければならない」と述べている。

6.     利害関係者の合意形成はできたか?

経営を変えることは容易ではない。その変化が破壊的であるほど、課題は複雑になる。しかし、組織がビジョンに賛同し、方向性を理解し、前進のために協力すると約束しなければ、変化は決して起こらない。

ビジョンや戦略を描くこと自体は簡単だが、それを実現させることは簡単なことではない。

7.     稼ぐためではなく、あるべき姿のために投資しているか?

あなたは投資したものに応じた収益を手に入れることになる。

適切な行動と結果がインセンティブとなるようなビジネスモデルの設計が重要だ。組織の動機と企業価値が一致していなければ、単に稼ぐためだけの投資となるだろう。

公平性、論理性、透明性、価値観を重視し、将来も通用するビジネスモデルにフルコミットすることが、エージェンシークライアントモデルを前進させる最も確実な方法だ。

アイリーン・キアナン(Eileen Kiernan)氏はUMのグローバルCEO。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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