パンデミックとロックダウン(都市封鎖)という難局のなか、多くのブランドが視聴者の琴線に触れるメッセージを発信した。動画アドテク企業アンルーリーはこうした52本の広告の訴求力を分析。対象は世界1万8500人、測定には「EMOインデックス」(広告がどれだけ視聴者の心を動かしたかを測るツール。地域の平均値と比較)を使用した。
その結果、トップ3を占めたのはアジア太平洋地域の作品。10位までに6作品が入った。
+214%という圧倒的なポイントで1位になったのは、グーグルジャパンの「医療従事者のみなさん、ありがとう」。これは日本の平均的広告の3倍以上に相当する。さらに、ブランドへの好感度と購買意欲でも最高ポイントを獲得。この広告を見た後に「グーグルは勇気を与えてくれるブランド」と答えた人は83%に上り、日本の平均値を34ポイント上回った。
グーグルジャパンのCF
アンルーリー・シンガポールでインサイトとソリューションの責任者を務めるサム・ホー氏は、「この作品の成功の理由の一つは、感動的な場面でもストーリーを妨げることなくブランディングがなされている点」と話す。「画面に検索バーを重ね合わせることで、危機の際のグーグルのサービスの有用性を押し付けがましくなく表現しています」。
「日本の消費者の広告に対する感情的反応は通常、世界平均より50%ほど低い。ですからこの作品がほかと比べて傑出した数字を出したのは驚きです。それでも、作品を見ればその理由がよくわかる。携帯電話やビデオ通話の映像で構成された画面は強い説得力を持ち、それらの内容や構図が視聴者に力を与える効果を生んでいます」。
2位になったのはシンガポール政府が制作した「Together We Can」(+124%)で、オーストラリア政府観光局の「With Love from Aus」(+122%)が僅差で3位に。シンガポールは感情に訴えるキャンペーンを作るコツを心得ているようで、エアアジアの「Keep Fighting, China」が6位、プルデンシャルの「Together, let’s #DOGOOD」が8位、コルゲートの「Our Smiles Keep us Together」が10位とトップ10には4作品が入った。
「シンガポール人はステークホルダーへのサポートを示す広告を望んでいることがわかりました。シンガポール政府のキャンペーンは、あらゆるレベルの人々が助け合う姿を描いている。それが視聴者の心を癒した」(ホー氏)
シンガポール政府のキャンペーン
豪州政府観光局のキャンペーンは、幸福感を伝える美しいイメージが印象的だ。
「セールス優先の押し付けがましいメッセージは一切なく、旅人が美しい景色や自然を改めて楽しめることを表現している。ブランドへの好感度も上げ、旅へのモチベーションも高めています。こうした時期に消費者の気持ちに寄り添うことは非常に大切。移動制限が解除されれば、(豪政府観光局は)『サバイバル』から『リバイバル』へと即座にスイッチを切り替えられるでしょう」。
豪政府観光局のCF
(文:Campaign Asia-pacific編集部 翻訳・編集:水野龍哉)