オムニコム・グループが突如、10年前に買収した英リサーチ・コンサルティング会社フラミンゴ(Flamingo)を閉鎖した。世界各地にオフィスを構え、質の高い仕事振りで高い評価を得ていたフラミンゴだが、今回の決定は巨大企業の傘下にある中堅エージェンシーの立場を改めて考えさせるものとなった。しかし東京では、フラミンゴに所属していた2人のディレクターが新会社を発足、同社の理念をベースに再出発を図ろうとしている。
今週、独立系コンサルティング会社「ソルト(Salt)」をスタートさせるのは、神田綾子氏と根岸千晴氏。基本路線として、日本におけるフラミンゴのこれまでの事業を継続していく。神田氏曰く、フラミンゴ東京の突然の閉鎖に多くのクライアントが「ショックを受け」、同社スタッフと「引き続き消費者インサイトや戦略面で協働していきたい」と望んだという。同社の東京事務所には、ディアナ・エルストロム氏をヘッドに約30名のスタッフがいた。
神田氏はソルトのクライアント名を具体的に明かさないが、日用消費財(FMCG)や美容、ヘルスケア、テクノロジーなどの分野の企業だという。フラミンゴ東京のクライアントの大部分は外資系だったが、新会社では国際的成長の必要性に迫られている日本企業との協働にも目を向けている。
ソルトはこの2人の共同CEOのほか、コンサルタントの金子英莉子氏、朴ヨンテ氏の4名で始動する。スタッフはマルチリンガルで、英米をはじめオランダ、韓国、そして日本での在留・勤務経験を持つ。フリーランスの人々とも積極的に仕事をしていくという。
同社はフラミンゴの路線の拡張も見据え、インサイトの理解のみにとどまらず、「エンドツーエンド」のサービス確立も目指していく。「時宜にかなっていれば、他のエージェンシーともサービスやキャンペーン、商品づくりなどで提携していきたい」と神田氏。
ソルトは、フラミンゴのグローバルネットワークから生まれた最初の組織だ。現在、フラミンゴのオフィスはロンドンにしかなく、東京をはじめニューヨーク、上海、シンガポール、ジャカルタ、ムンバイ、サンパウロも閉鎖された。「今後もフラミンゴにいたスタッフたちが世界各地で新しい事業を立ち上げていくでしょうし、それらの人々と戦略的に連携していきたいと考えています」と同氏。
ソルトという社名の由来については、「食べ物を何でもおいしくするのが塩で、どんな料理でもおいしさの決め手は塩加減ですから」。
フラミンゴは1997年に創設、オムニコムによる買収後、アジアで事業を拡大した。今回の閉鎖はオムニコムが設定した業績目標を達成できなかったことが要因と見られている。通告は突然で、日本の関係者によるとスタッフとクライアント双方が非常に驚いたという。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:高野みどり 編集:水野龍哉)