日本で職場に対する考え方が急速に変わりつつある。それも、企業の管理職たちが考えるよりずっと速いスピードで。2018年は広告界がこの変化に適応できるか、あるいは(更に)遅れをとってしまうかの節目の年になろう。
公益財団法人日本生産性本部が行った最近の調査で、新入社員の仕事に対する考え方にいくつかの重要な変化が起きたことが分かった。
- 新入社員の30.8%が「上司や後輩、あるいは同僚たちと職場以外での付き合いを望まない」と回答。この比率は2016年から10%以上増加した。
- 48.7%が「たとえ上司や同僚が残業していても、自分の仕事が終わったら帰る」と回答。同じく9%以上増加。
この傾向が続けば、今年の新入社員はほぼ半数がドライな考え方を持っていることになる。2018年が節目の年となる所以の1つだ。
彼らの勤労意欲に関しては前年から大きな変化はなかったが、だからといってその結果が興味をひかないわけではない。
- 42.6%が「楽しい人生を送りたい」と回答。前年比で約1%増加。
- 10.9%が「職場は自分の能力を試す所であってほしい」と回答。同じく1.5%減少。
生活の中の職場の位置付けや企業文化の意味合いは、ベテランと若手社員の間で大きく異なる。今年の社内改革プランを練るのなら、是非このことを認識するべきだ。
2016年から2017年にかけて若者たちの勤労意欲に変化が生じた理由の1つは、電通の新入社員の過労自殺が注目を浴びたことにある。この悲劇は彼らの仕事に対する姿勢に大きな影響を及ぼした。
調査結果から得られたデータは単純ではないが、前述のいくつかの要素から、若手社員にとって企業文化やチームの団結心は最優先事項ではないことが見てとれる。反対に、個人のライフスタイルやモチベーションの重要性は高まっているのだ。
こうした傾向を鑑みると、経営陣や幹部、更に若手社員も含めた業務運営でいくつかの問題が浮かび上がる。例えば、社員のもたらす成果をどう測ればよいのか。また、業績や会社への忠誠心をどのように評価し、正当な対価を与えればよいのか。長年良しとされてきた人材確保や人事改革のためのアイデアは、幹部たちが現場から離れたところで「理論上」編み出したものであり、真剣に検討し直さねばならないだろう。在宅勤務やフレックスタイム制の問題もそれに含まれてくる。
広告代理店の管理職や人事担当者は、人材確保の上でよりクリエイティブにならねばならない。これは決して今に始まった話ではないのだが……。留意すべきは、社員が評価のされ方や対価で選択肢を求めてくる可能性があることだ。経営陣は今後、異なる勤務形態や仕事上のプライオリティーの面でこれまでにない対応を迫られるだろう。
うかうかしていると、有能な人材は会社のシステムが気に入らないと言ってすぐに他の会社に移ってしまうのだ。社内改革に関して代理店の経営陣が肝に命じなければならないことがある。それは、新たなシステムを1つ作り上げるのではなく、複数のシステムを構築するべきということだ。
このようなトレンドを批評するのは意味がない。経営陣は企業の競争力を高めるため、適切な対応をとらねばならないのだ。もっとも、若手社員はそのことをあまり意に介さないだろうが。迅速な行動を怠れば、広告代理店の経営陣は、公園で意味のない奇妙なことを鳥に向かって怒鳴っている変人のように見られても仕方ないだろう。
(文:バリー・ラスティグ 編集:水野龍哉)
バリー・ラスティグは、東京を拠点とするビジネス・クリエイティブ戦略コンサルティング会社「コーモラント・グループ」のマネージング・パートナーです。