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若者にワクチン接種を促すには?
ユニデイズ(Unidays)が世界の学生8,000名を対象に実施した調査によると、新型コロナウイルスのワクチン接種の判断において、ブランドが発信する広告の影響を受けていないと述べた回答者は88%に上った。
過去には米国でクリスピー・クリーム・ドーナツやユニリーバが、ワクチン接種者に商品を無料で提供し、インセンティブを与えている。だが彼らに強い影響を与えるのは、こうした企業の広告よりも家族や友人であり、回答者の44%が「ワクチン接種を促す広告を見たことがある」ものの、それによって考え方が変わったと答えたのはわずか12%で、88%は広告を見た後でも考え方が変わらなかったという。ワクチン接種自体については、半数以上が「積極的に接種したい」、22%は「消極的」で、「絶対に接種しない」と回答したのは15%であった。
このことから、ブランドがワクチン関連の情報を発信する際には説教臭くならないよう注意する必要があると、ユニデイズの最高戦略責任者であるアレックス・ギャラハー氏は語る。「若者は、よくイメージされるような無謀で無責任なスーパースプレッダーではありません。キャンパスが閉鎖され、自宅にこもりオンライン講義を受講する日々に、戻りたいと考えてはいないのです。ワクチン接種について真剣に受け止めており、彼らの価値観を具現化することをブランドにも望んでいます。ワクチンについて訴求するブランドを、彼らは好意的に見るでしょう」
米政府はワクチンをめぐる誤情報に対処するため、インフルエンサーを積極的に活用している。だが「彼らが医学的なアドバイスを聞き入れるのは、ティックトッカーや好きな炭酸飲料ブランドからだけだと、決めつけてはならない」と同氏は注意を呼び掛ける。「Z世代に大切なのは、誰がメッセージを伝えているかだけではなく、どのように伝えられたか。マーケティングの4P(product, place, price, promotion)は広く知られていますが、彼らには5つめのPであるparticipation(参加すること)が最も効果的であるとみています。若者たちは何かを言われたいのではない。耳を傾けてほしい、参加したいと考えているのです」
コロナ禍の五輪、アートで表現
新型コロナウイルスの感染拡大が収束しないまま、開催となった東京五輪。無観客の競技会場、関係者に課せられた行動制限、陽性が判明した選手の相次ぐ棄権と、異例づくしの大会となった。そんなコロナ禍での大会を表現した作品を、さまざまなアーティストが発表している。その一つとしてご紹介するのが、田中達也氏(ミニチュア写真家・見立て作家)の作品。マスクをモチーフに、競泳や陸上などの競技をシンプルに表現している。
感染対策して観戦
— Tatsuya Tanaka 田中達也 (@tanaka_tatsuya) July 22, 2021
#Tokyo2020 pic.twitter.com/gp4JyoiVHz
S・ヨハンソンのディズニー提訴が示唆する、広告ビジネスの未来
スカーレット・ヨハンソンが、主演する映画『ブラック・ウィドウ』の公開方法をめぐり、マーベルの親会社であるディズニーを訴えた。劇場限定公開という前提での契約だったが、ディズニープラス(定額制の動画配信サービス)でストリーミング配信を同時展開されたことで多額の損失が発生したというのが、同氏の主張だ。これに対しディズニー側は「COVID-19が世界に与えた長期にわたる恐ろしい影響を無慈悲にも無視した、非常に悲しく痛ましい訴訟だ」と反論する。
だがグループエム(GroupM)のビジネスインテリジェンス担当グローバルプレジデント、ブライアン・ウィーザー氏によるとこの問題はコロナ禍に端を発したものではなく、パンデミック前から既に兆しがあった。多額の予算を投じて映画を製作し、それを興行収入によって回収してきた映画産業だったが、近年はペイ・パー・ビュー方式やセルスルー(電子コンテンツのデータ購入)、DVD販売などに加え、親会社であるメディア大手が注力するストリーミングサービスでも配信されるとなると、収益の定量化がますます困難に。さらに、投資家にとって「ストリーミング配信による収益は経常的で予測しやすい」ため、「臨時的で予測不可能な」従来型の事業よりも高く評価されやすいという。
ストリーミング事業が強くなるということは、メディア会社もそれに合わせたコンテンツに注力し、従来型テレビの視聴時間がますます減っていくことにもつながる。テレビに依存してきた広告主に与える影響も大きく、「独自コンテンツの制作や、ユーザーを特定できるアドレサブルな広告在庫の活用など、マーケターはテレビに依存しない新しい方法を探す必要性が今後ますます高まっていく」とウィーザー氏。音楽やスポーツ、イベントなどさまざまな文化関連への投資をサイロ化せず、組み合わせることも考えられるという。
ハイブストックの日本法人社長に神内一郎氏が就任
デジタルOOHを手掛ける世界的なアドテク企業「ハイブスタック(Hivestack)」の、日本法人の社長に神内一郎氏が就任した。神内氏は、インプレッションベースによるDOOHを日本で初めて実現した、NTTドコモと電通の合弁会社「ライブボード(Live Board)」の元CEO。日本、中国、シンガポールで電通のさまざまな上級職を歴任してきた。ハイブストックでは日本におけるプラットフォームの地域戦略、ディレクション、展開を主導していく。
故郷を目指すオートバイの旅
英オートバイメーカー「ロイヤルエンフィールド」が、故郷への旅路を落ち着いたトーンでとらえた動画を公開した。「距離を移動するということは、どれだけ遠くに行くかではない。どれだけ離れたところから、戻っても構わないと思えるかだ」というフレーズの後で登場するのは、ヒマラヤ山脈の西端ラダックを一人で走る女性ライダー。外の世界で人は変わるかもしれない、それでも故郷はいつも受け入れてくれる――。制作はココナッツ・フィルム。
●来週は「世界マーケティング短信」の配信をお休みさせていただきます。
(文:田崎亮子)