2カ月近くに及ぶロシアの非道なウクライナ侵攻の中、ひと筋の光明はウクライナ国民の驚嘆すべき勇気だろう。
いくつかの国々は原油などの天然資源を主な輸出品としているが、ウクライナ政府と大統領府が注力したのは文化 −− 「勇気」 −− の輸出だった。
ウクライナと勇気を結び付けたビルボード(屋外広告)用キャンペーンの制作を担ったのは、キーウの広告エージェンシー「バンダ(Banda)」とデジタル変革省。ロシアによる侵攻で生まれた国民の士気を維持しようと、近く国内で公開する(動画、下)。
さらには、世界に向けても発信する。カナダ、ポーランド、イタリア、オーストリア、オランダ、英国、スペイン、米国など15カ国以上で公開予定だ。
「勇敢な人々の国」のイメージを視覚化した映像は力強く、ディレクションもイノベーティブ。市井のウクライナ人の写真を用い、彼らの勇気を讃えるバイデン米大統領などの言葉を引用する。
「世界が、ウクライナは勇気ある人々の国だと認めました」と話すのは、ウクライナ副首相兼デジタル変革相のミハイロ・フェドロフ氏。
「我々はロシアの侵略者に対してデモを行い、武器を持たずに戦車を止めた。医師、救助隊員、現場の作業員、行商人、運転手、薬剤師……我らが英雄たちは爆撃や火事の危険性も恐れず、今日も仕事場へと向かいます。ITの専門家たちは、シェルターの中からノートパソコンを使って国のデジタルインフラストラクチャーを支えてくれる。こうした行為は心から尊敬に値します。我々が勝利した後は、『世界中からのチャンスの窓』がウクライナに向けて開くでしょう。その機会を正しく生かすのが我々の責務です」
「今、そして将来も最大限の効果を発揮するメッセージを生み出すことが重要だった」と話すのはバンダの共同創設者、パベル・ブルシェシッチ氏。
「最も共感を得られ、我々に力を与え、士気を高めてくれるものは何か −− それは疑いもなく、ウクライナ人の勇気です。勇気がなければ我々の自由が剥奪され、この国さえも消滅してしまう。ウクライナの人々は今、かつてない勇気を奮っています」
「兵士たちの勇気、市民一人ひとりの勇気、そして各都市で繰り広げられる勇猛な戦い……ロシア相手に戦おうという国はどこにもないですが、ウクライナは現にそれを行い、勝利に向かいつつある。全世界がウクライナの勇気を讃える今、このイメージをさらに強固にし、我が祖国を永遠に象徴する言葉にしなければならない。勇気こそ我々のDNAであり、国家資源です。そして、ウクライナ人の証であることを世界中に示しているのです」
(文:イモージェン・ワトソン、翻訳・編集:水野龍哉)