現在、スマートウォッチとリストバンド型活動量計のキャッチコピーには、「スタイル」やその同義語が頻繁に登場している。機器のフィットネストラッキング機能やナビゲーションの精度、スマートフォンとの連携、電池寿命の長さなどといった性能と同等に重視されることも多い。
フィットビットの最新モデルAltaは、ディスプレイ上にフィットネスとファッションを表現したという。Apple Watchはエルメスと提携し、「巧みで洗練されたシンプルさを体現した」製品を発売。Huawei Watchは、高級感のあるクラシックなデザインを訴求している。
アジアの消費者が求めているのは、洗練度やステータス感の高さだ。ユーロモニター・インターナショナルの生活家電調査のヘッド、ルー・ウィー・テック氏によると、アジア地域の消費者が優先するのは、人よりも目立つこと、そして豊かに見られることの二点だと話す。これは世界的な傾向とも一致している。
アジア太平洋地域でのウェアラブル端末の売れ行きに勢いがある理由も、これで説明がつくだろう。ユーロモニターの報告によると、昨年度の売上高の半分は同地域で生み出されており、中国での販売数だけをとってみても、アメリカの3倍である。
ウェアラブル端末が人々の心をつかんでいるのは、消費者の支払う金額に見合った価値を提供しているからだとルー氏は説明する。Apple Watchの価格は、セイコーの腕時計と大差ないかもしれないが、製品としてはより魅力的に映るのだ。
多くの消費者は、あまりお金をかけたくないと考えている。ユーロモニターの調査によると、20米ドル以下のMi Bandを販売するシャオミは、同地域における2015年の市場シェアの36.8%を占めている。サムスンとファーウェイは、それぞれ 6 %、5.1%と後れを取り、Apple Watchは4.6 %、フィットビットは4 %である。
Mi Bandは、競合他社の製品ほど洗練されたデザインではないかもしれない。だがその成功は、手ごろな価格と30日間という長い電池寿命(競合商品は平均8日間)が、スタイルに勝ることを示している。
インターナショナル・データコーポレーション・アジアパシフィックのシニア・リサーチ・マネジャー、ケネス・リュー氏は、シャオミが当面は市場をリードすると予測している。だが、本地域ではウェアラブル端末は「試しに使ってみる」段階から次の段階へと進んでおり、人々の関心は手ごろな価格から、スタイルや機能性へとシフトしていくだろうと考えている。
その例として同氏は、ガーミンのfenix 3HRを挙げる。機能性の向上と堅牢なデザインにより、多くの人に普段使いの腕時計として、あるいはフィットネストレーニングや屋外ナビゲーション用機器として選ばれている。「これは2016年第1四半期において、同社で最も売れ行きのよい腕時計の一つです」(リュー氏)
大手ファッションブランドは今、シェア獲得に必死だ。フォッシル・グループは、ディーゼル、マイケル・コース、ケイト・スペード・ニューヨークなど8ブランドから、ファッショナブルなウェアラブル端末を100点発表する予定である。
同社のシニア・バイスプレジデント、ディアーミッド・ブランド氏は、これらウェアラブル端末のアジア太平洋地域での成功を期待している。その根拠には、香港とマカオで昨年発表したFossil Q Founderへの反響の大きさがある。
ファッション小売業はトレンドのめまぐるしい変遷と共に歩んできている点で、テクノロジーブランドよりも有利だと同社は考える。ファッションブランドはまだウェアラブル市場に、主要プレイヤーとしては登場していない。しかし「この市場は新規カテゴリーなので、まだ何もないまっさらな状態」とルー氏。「だからこそ新規プレイヤーにも、市場参入の機会が多くあるのです」
アジア太平洋地域におけるウェアラブル端末の市場シェア(出典:ユーロモニター)
シャオミ36.8%
サムソン6%
ファーウェイ5.1%
アップル4.6%
フィットビット4%
(文:リーメイ・ファン 翻訳:高野みどり 編集:田崎亮子)