同社がオープンを予定しているのは、国内最大規模の総合免税店ネットワーク「ラオックス」の東京・新宿店内。同店は中国人観光客にとって最も人気の高い買い物先の1つ。ここ数年、同社の香港での売上げは着実に減少している。昨年は香港への観光客が4.5%減少したこともあり、4〜9月までの半年間で26%も落ち込んだ。これは、2003年にSARS(サーズ)が蔓延した時以来の下げ幅だ。
同社は香港と中国本土以外で19の店舗を保有している。金製品が中心の品揃えはやや仰々しいデザインが特徴で、日本人好みとは言い難い。ブランドの知名度も高くはなく、認知しているのはほとんどが中国人だ。それでも日本での出店は、訪日客の増加と彼らの購買力を考えれば妥当な戦略だろう。
昨年、海外からの訪日客は2400万人を超え、日本政府は2020年までに4千万人に増やす目標を掲げている。訪日客で最も多いのは中国人で、消費額も多い。昨年は630万人が訪れ、調査によると1人当たりの消費額は約22万8千円で、平均の2倍超だったという。
香港のメディアエージェンシー「PHD」のCEOレイ・ウォン氏は、「中国人観光客は香港より日本ではるかに多く消費をするので、チョウ・タイ・フックの日本進出は理に適っています。それに香港は、店舗にかかるコストがアジアで最も高い。東京の方がより高収益が期待できるのです」と語る。
「中国本土からの買い物客は価格に目ざとく、特に金製品には敏感です。金の価格は基本的にどこでも同じなので、チョウ・タイ・フックは日本や香港でしか買えないデザインの製品を打ち出し、商品を差別化する必要があるでしょう。そうすれば自社の市場を自社で食い潰すことなく、売上高を維持できるはずです」
(文:デイビッド・ブレッケン、ジェニー・チャン 翻訳:岡田藤郎 編集:水野龍哉)