東京 – マーケティング統合管理ソフトウェアのHubSpotは2016年9月までに、シドニーとシンガポールに続いて日本での事業開始を予定している。
ソフトウェア開発を手掛ける同社は、コンテンツ管理やオンライン分析、ソーシャルメディアマーケティング、検索エンジン最適化(SEO)などの分野で企業向けツールを提供する。
「当社はアジアでの事業に、本腰を入れて取り組む考えだ」と話すのはHubSpotのグローバルCMOであるキップ・ボドナー氏だ。「この地域が細分化されていることは理解しているが、当社はアジアの成長をとても楽観視している」
HubSpotが日本でブログを開始して1年が経とうとする今、ボドナー氏は日本をアジアの中でもコミュニケーションのトレンドを世界に発信する国のひとつとして見ており、この市場の文化を理解する必要性がますます大きくなっていると話す。日本市場への参入理由について、ボドナー氏のさらなる言及は無かった。
HubSpotは日本における採用人数や、地域別の収益成長率の内訳も公表していない。しかし、日本オフィスの人員採用は困難が予想される。同社は「カルト」のような文化の企業だと元従業員に書きたてられるなど、他の市場では悪い評判もちらほら目に付いた。
しかし、HubSpotはこれまで2年間にアジア太平洋地域でかなりの投資をしており、地域本部を今後3年間で150人体制にまで拡大する予定だ。この地域での主な取引先にはTradeGecko、Happymarketer、Oxygen 2.0などがある。
ボドナー氏によると、同社は現在インバウンドマーケティングのメリットの啓発に重点を置いている。いわゆる「プッシュ型」ではなく「プル型」がコアビジネスの同社にとって最大の課題は、新しいことへの挑戦にマーケターたちが及び腰なことだ。「マーケティング技術の浸透がまだ不十分なのは、そこには大きな変化が伴うからだ。過去にメールマーケティングが定着するまでにどれだけの時間を要したか、思い出してみてほしい。変化に対する意識の変革こそ、今私たちが取り組んでいることだ」
リードジェネレーション(見込み顧客の獲得)に寄与し、マーケターの取り組みの価値を認めるHubSpotのようなツールは、日本では快く受け入れられると見られる。しかし、HubSpotのアジア初のパートナーだったマーケティングエンジンの元代表で、東京を拠点に活躍するマーケティングコンサルタントの高広伯彦氏は、HubSpotが抱えるいくつかの課題を指摘する。「『インバウンドマーケティング』がまだ新鮮な業界用語だった2012~2013年当時は、HubSpotの日本での知名度は高かった。しかし『インバウンドマーケティング』は次第に、中国人観光客をターゲットにした言葉として認識されるようになってしまった」
その間にMarketoやPardotなどのマーケティングオートメーションサービスに多くのユーザーを獲得されてしまったため、HubSpotの製品に再度関心を集めるのは難しいのではと高広氏は懸念する。
「マーケティングオートメーションに関して言えば、日本は既に競争の激しい市場であり、こうしたソフトウェアを求める顧客は既にそれを利用している」と高広氏。また「マーケティング担当者が自発的であれば、HubSpotは最良のツール」だが、日本のマーケティング担当者は概して自発性が高くない点を指摘する。
2015年11月、HubSpotは初めてアジアに焦点を当てた「State of Inbound Report(インバウンド動向レポート)」を、インバウンドマーケティングのプロモーションの一環として発表。この調査によると、マーケティングの支出が年間10万米ドルに満たない組織では、アウトバウンドよりもインバウンドマーケティングを採用する確率が4倍も高いことが明らかになった。また、アウトバウンドよりもインバウンドマーケティングキャンペーンの方がROIが高い企業が3倍近いことも判明している。
(文:デイビッド・ブレッケン、バイラビー・イヤー 翻訳:CLS 編集:田崎亮子)