広告主向けに、高品質のアウトストリーム型オンライン動画インベントリの提供に力を入れるTeads。先月、同社初の地域担当上級副社長としてクリスチャン・ギノー氏が、日本担当マネージングディレクターとして今村幸彦氏が就任した。ギノー氏はMEC China、今村氏はKenshoo(ケンシュー)からの転職。同社は借入による資金調達で4,700万米ドルを確保しており、これをアジア市場拡大のために投資する計画だ。
同社のエグゼクティブ・チェアマンであるピエール・シャパス氏は、「より洗練されたサービスを提供するため、アジアでの企業買収に向けた調査を行っています」。日本では全ての機能を「さらに上のレベルに引き上げたい」。Teadsは2年前、日本を皮切りにアジア市場に参入し、コムスコアによればユーチューブに匹敵するレベルのリーチを達成しているという。同氏はさらに、「近い将来、グーグルが持つプラットフォームに追いつくことが目標」とも。現在、日本国外での喫緊の課題は東南アジア市場戦略で、来年には中国への進出も予定している。
今村氏は、「日本でのブランディングに対する直接的な反応を見て、オンライン動画のバランスシフトを見極めます」と言う。さらに、日本のマーケターは米国や欧州と比べると動画への投資に「とても用心深い」とも。こうした消極的な姿勢は、プレイスメントの状況と質の高いインベントリの不足が主な理由だという。
Teadsは、動画がどこに表示されるかを広告主に明確にすることで、ユーチューブやニコニコ動画などのプラットフォームとの差別化を図っている。さらに、日本の主要なパブリッシャー140社と協働し、縦長動画も含めた幅広い動画フォーマットをオンラインコンテンツ内で提供する。プレロール広告のような煩わしさを感じさせない動画の提供がモットーで、モバイルで15秒以上、デスクトップで30秒以上の視聴ではじめて広告主に料金が派生する。国内の広告主には、ソニー、レクサス、全日空、日本航空などのほか、数多くのグローバルブランドが名を連ねる。
スキップできるプレロール広告の平均視聴時間は、約2秒間。シャパス氏は、広告ブロックが増えていることは、望まないプロモーション・コンテンツを無理やり見せられる人々にとって「当然の反応」だと言う。「『私たちの時間をムダにしないで。そうでなければ、私たちは自分たちで自分たちを守ります』という、ユーザーが広告業界に発信する強烈なメッセージです。広告主たちは、このメッセージに耳を傾けるべきでしょう」
同氏はTeadsの動画を15秒、あるいは30秒以上見る人々の平均数を挙げることができなかったが、「システムを運営する上で十分な数」と述べる。
また、ほとんどのブランドはオリジナルの動画コンテンツを制作するより、既存のテレビCMを動画フォーマットに変えて利用する傾向が強いという。Teadsのインベントリの60%を占めるモバイルが増加することで、こうした風潮も変わっていくことを同氏は期待している。
「まだ、全てが始まったばかりです。視聴者がスマートフォンを使用して、テレビのように操作を続けられないことをマーケターは知っています。それでも市場の変化に対応するには、もう少々時間がかかるでしょう」
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:PTGSI 編集:水野龍哉)