TikTokは9月27日、米国に上陸してからわずか3年で、月間アクティブユーザー数が10億人を突破したことを明らかにした。
フェイスブックが、ワッツアップとインスタグラムを買収し、3つのエコシステムを合わせて、月間30億人のアクティブユーザー数に達するまで、14年近くもかかったことを考えれば、それがいかに驚異的な数字かわかるだろう。
ソーシャルメディアのトレンドに詳しい人(または年頃の子供がいる人)なら、TikTokがあらゆる人たちの意識に急速に入り込んでいるのにお気づきだろう。TikTokは、10億人という節目のユーザー数を突破しただけでなく、クリエイターのエコシステムを構築し、マーケティングのパラダイムを覆そうとしている。
TikTokの華々しい成長を目の当たりにし、このプラットフォームは、マーケターと消費者の関わり方に関するルールを恒久的に変化させるのではないかと考えている。その理由は次の3つだ。
1つ目の理由は、TikTokが「バズる」の定義を大きく変えたことだ。TikTokの投稿は、他のどのソーシャルプラットフォームよりも速いペースで世界中を駆け巡り、一瞬で何十億ものビューを集めることができる。
このバイラルの新しい基準が、TikTokチャレンジという新たなマーケティングのカテゴリーを生み出した。このインタラクティブなマーケティング手法においては、コミュニティが中心的な役割を果たしている。ブランド各社はいち早くこのトレンドに乗り、さまざまなチャレンジを企画した。その中には、ダンスや歌などのわかりやすいチャレンジもあれば、身長が2メートル超えるNBAプレーヤーとクラッカー「Goldfish(ゴールドフィッシュ)」のつかみ取り競争をするといった、ややわかりにくい企画もあった。
このトレンドが、2つ目の理由につながる。それは、TikTokが消費者とマーケターの関わり方を本当の意味で双方向にしたということだ。
TikTokはコミュニティによるコミュニティのための場所だ。ここでは誰もがクリエイターであり、投稿をバズらせて、有名人になる機会が平等に与えられている。ブランドがTikTokで成功したいと願うなら、ユーザーを対話に招き入れ、彼らがストーリーを作ることをある程度許容しなければならない。
ツイッターやフェイスブックは、ブランドが消費者に直接語りかけることを可能にしたと言えるが、TikTokは、それをさらに新たな高みへと引き上げた。メガホンで情報を一方的に伝えるようなやり方は、もう時代遅れなのだ。
深呼吸して考えてみよう。新しい時代のマーケターは、ブランドに対するコントロールをある程度手放す必要がある。たしかに、誤情報やブランドセーフティといった問題が溢れるなかでは簡単な話ではない。だが、ユーザーを巻き込まないキャンペーンや、すでに始まっているトレンドを利用したキャンペーンを展開しても、あまりうまくいかないだろう。
最後の理由は、TikTokがインフルエンサーマーケティングを新たな高みに引き上げ、「クリエイターエコノミー」へと進化させたことだ。ファッションイベントの「METガラ」を見れば、ソーシャルメディアの有名人が、ハリウッドへの階段を駆け上がっていく様子を目にすることができるだろう。
しかも、こうした「クリエイター」には強みがある。それは、映画のスクリーンや雑誌の表紙を飾る完璧なルックスのセレブよりも、こうしたクリエイターに、人々はより親近感を覚え共感するということだ。考えてみてほしい。雲の上の存在のようなセレブが勧める商品より、親友が勧める商品の方が買いたくならないだろうか。
もっとも、セレブとのパートナーシップがなくなることはない。たとえばナイキ(Nike)は、これからもアスリートを広告に起用し続けるだろう。ただし今後は、そうしたコストのかかる単発のキャンペーンを、ニッチなターゲットと深くつながるインフルエンサーキャンペーンが補完することになるだろう。
ブランドがマイクロインフルエンサーの採用に乗り出しているのは、こうした影響力のシフトを意識しているためだ。彼らは、少数の限られた有名人から多数の一般人へと、影響力が移行していることに気づいている。
私たちは10年以上前から、ソーシャルメディアが大きな影響力を持つ世界で暮らしてきた。だが、TikTokのような、マーケターのゲームを一変させるプラットフォームが現れることはめったにない。
あなたはもうチャレンジする準備ができているだろうか。
アリソン・ワイズブロート氏はCampaign USの編集者。