今年で17回目となるエージェンシー・レポートカードの調査対象となったのは、電通、dentsu X、博報堂、ADKの国内4社を含む43社。以下が国内エージェンシーに対する評価だ。
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昨年は、各エージェンシーのクライアントにとって極めて難しい年だった(今年はそれ以上の脅威に直面しているが……)。エージェンシーは新たな事業からの収益を上げにくく、経営陣はテクノロジーの効率性やクリエイティブの質といった面に注力した。
結果として、ARCで昨年よりも高い総合評価を得たエージェンシーは9社。評価を下げたのは10社で、変わらなかったのは23社だった(計42社、今年から新たにワンダーマントンプソンを評価対象として追加)。
評価は以下のように格付けをした。
A 比類がないほど素晴しい
A− 傑出している
B+ 優れている
B 非常に良い
B− 良い
C+ 平均的
C まあまあ
C− 最低限の基準はクリア
D+ さらなる努力が求められる
D 不満足
D− 苦戦
F 落第
また、評価にあたっては以下の5つのカテゴリーを主な判断基準とした。
1. マネジメント:経営陣がどのような指導力を発揮し、実行したか。また、経営の安定性や業界への貢献度も考慮。
2. クリエイティビティー:作品・キャンペーンの質と効果を査定。アジア太平洋や世界的レベルの広告祭での受賞実績、クライアントにもたらしたメリットなども考慮。
3. イノベーション:自社、従業員、クライアント、業界にもたらした利益を鑑み、地域におけるイニシアティブとイノベーションを質的な面から査定。
4. ビジネス成長:クライアントのビジネスにどのような価値をもたらしたか。Campaign Asia-PacificがR3と協働して発行する「ニュービジネスリーグ(New Business League)」と、自社の査定を基準とした。クライアントの新しいプロジェクトの認知度、オーガニック成長なども考慮。
5. 人材とダイバーシティ:人材の多様性(ダイバーシティ)や従業員の健康・福祉への配慮。また、従業員が最大限の力量を発揮できるよう、どのような取り組みを行っているか。
これらの基準は昨年から新たに導入した。2018年度と2019年度を比較すると、「マネジメント」の評価が変わらなかった企業が多い反面、「クリエイティビティー」の評価は変動。また、「ビジネス成長」が落ちた企業は増えたが、「人材とダイバーシティ」が全体的にやや向上したのは良い兆候だろう。
エコシステムの評価は、毎年難しい課題となりつつある。クライアントが統合的サービスを求めるようになった昨今、デジタルエージェンシーやメディアエージェンシー、クリエイティブエージェンシーなどによるバラバラの対応はもはや時代遅れの感がある。主流となりつつあるのは、クライアントのために複数のエージェンシーからスタッフを選抜し、チームを編成して持株会社レベルで対応するやり方だ。
また、eコマースやCRM(顧客関係管理)、コンサルティング、ビジネス変革、データ分析、パフォーマンスマーケティング、検索など多くの専門分野を各エージェンシーが担うようになってきたことも変化に挙げられる。マーケティングエージェンシーの定義が大きく変わりつつあるなかで、我々もそれに柔軟に対処し、エージェンシーとともに進化していく所存だ。
この調査にご協力いただいたすべてのエージェンシーに、改めて深い謝意を表します。
(文:Campaign Asia-Pacific編集部 翻訳・編集:水野龍哉)