Ryoko Tasaki
2 日前

世界マーケティング短信:懸念強まる米中の貿易摩擦

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:懸念強まる米中の貿易摩擦

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

中国、米大手2社を「信頼できない事業体」リストに追加

米国が中国からの輸入品に10%の追加関税を課し、中国側も報復措置として米国の液化天然ガスなどに最大15%の追加関税を課すなど、貿易摩擦が激化している。そのような中、中国商務省はPHVコープ(PHV Corp)とイルミナ(Illumina)を「信頼できない事業体リスト」に加えた。

「信頼できない事業体リスト」は2020年、米国がファーウェイ(華為技術)やZTE(中興通訊)などの機器の販売を制限したことへの対抗措置として作られた。リストに載った事業体には投資・貿易の禁止や罰金などの措置がとられる可能性がある。

PVHコープは、カルバン・クライン(Calvin Klein)やトミー ヒルフィガー(Tommy Hilfiger)を擁する米アパレル大手。商務省は、PVHコープが新疆ウイグル自治区で生産された綿をボイコットしている疑いがあるとして同社の調査を昨年9月に開始し、今年1月には「不適切な行為」があったとしていた。

イルミナは遺伝子解析機器を手掛ける企業で、中国のBGI(華大基因)と長年競り合ってきた。BGIなど中国のバイオテクノロジー企業は、米国の国家安全保障に脅威を与えるとして名指しされていた。

また中国の国家市場監督管理総局も、グーグル(Google)を独占禁止法違反の疑いで調査を開始した。

X、広告ボイコット訴訟にネスレやレゴなどを追加

X(旧ツイッター)は昨年8月に広告主団体や複数企業を訴えていたが、今月1日にネスレ(Nestle)、レゴ(Lego)、ピンタレスト(Pinterest)、シェル(Shell)などにも訴訟を拡大した。Xは先月、訴訟相手を増やす意向を示していた。

この訴訟は、広告主企業が示し合わせてXへの広告出稿を取りやめたことで、数十億米ドルの損害が発生したと主張するもの。当初はユニリーバ(Unilever)も含まれていたが、和解に達したとして10月に訴訟から除外した。また世界広告主連盟(WFA)が運営する「責任あるメディアのための世界同盟(GARM)」は、Xによる提訴から数日後に活動を中止している。

ユーチューブ、米大統領選で広告収入が増加

アルファベット社が発表した2024年第4四半期の決算によると、ユーチューブ(YouTube)の世界での広告収入が初めて100億米ドルを超え、前年比+13.8%となった。主力の検索連動型広告は540億米ドル(前年比+12.5%)、これらを含むサービス全体では841億米ドル(同+10.1%)で、収益全体の87%を占める。

ストリーミングプラットフォームの広告収入増は米大統領選挙によるものだと、最高事業責任者であるフィリップ・シンドラー氏は語る。民主党と共和党の両陣営とも、2020年の選挙と比べて広告費をほぼ倍増させたという。また選挙当日には米国で4500万人以上が、同社のプラットフォームで選挙コンテンツを視聴したとのことだ。

収益性を地域別にみると、米国は前年比+13%、米国を除く米州は+22%、アジア太平洋地域は+9%、欧州・中東・アフリカは+11%だった。

オムニコムとピュブリシス、2024年の業績が好調

オムニコム(Omnicom)とピュブリシス(Publicis)が第4四半期の決算を発表した。

昨年12月にインターパブリック・グループ(Interpublic Group、以下「IPG」)を買収すると発表したオムニコムは、2024年通期の売上高が157億米ドル、オーガニック成長率が+5.2%。売上高の5割強を占めるメディア&広告事業は85億米ドル(前年比+7.8%)だった。

また、買収関連の費用として第4四半期に1460万米ドルを計上。ジョン・レンCEOは、IPG買収による事業や文化の統合について「非常によく備えができており、わくわくしている」とコメントしている。

ピュブリシスも通年での売上高が160億ユーロ、オーガニック成長率が+5.8%と好調だった。純収益は140億ユーロ(同+6.6%)で、4年連続で過去最高を記録した。

同社の純収益が、まだ決算を発表していないWPPや、通常は純収益を公開しないオムニコムを上回ったとして、アーサー・サドゥーンCEOはCampaignに「今年は歴史的な年です」とコメント。3~4年で3位から首位に躍り出るには、事業再編に何年もの努力が必要だったが「これは私たちにとって重要な瞬間です」と語った。

サントリー、愛知の新アリーナとパートナーシップ契約

サントリーが、IGアリーナとファウンディングパートナーシップ契約を締結した。今年の夏に愛知県に開業するIGアリーナは、5階建てで最大収容人数17,000人と国内最大級のハイブリッドオーバル型アリーナ。アリーナの命名権は、2035年まで英金融のIGグループ(IG Group)が取得している。

サントリーはアリーナ内の全エリアでアルコールならびにノンアルコールの飲料販売や、ゲートやプレミアムラウンジ内のバーのネーミングを行う。

【お知らせ】

Campaignが主催する「グローバル・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」のエントリー最終締切が2月18日に迫りました。詳しくはこちら(英語)をご覧ください。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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