韓国の仁川(インチョン)にある、アートとエンターテインメントを融合させたリゾートホテル、パラダイスシティが、日本市場と韓国市場に向け、新たな広告キャンペーンを開始した。電通が手がけたこのキャンペーンは、他のリゾートと一線を画すパラダイスシティのユニークな体験を訴求するものだ。テレビCMに韓国の人気俳優パク・ソジュンを起用し、かくれんぼの要素を取り入れた楽しい演出で豪華な施設を紹介している。その狙いは、韓国ではこれまで見られなかったような、ユニークでスケールの大きいホスピタリティ体験を紹介することだ。
パラダイスシティのCMO、ヨ・ウンジュ氏がCampaign Asia-Pacificに語ったところによると、このキャンペーンは日本市場と韓国市場を同時にターゲットにした初めてのプロジェクトだった。この2つの市場のそれぞれの地域的特性を、戦略とクリエイティブの両面でバランスよく表現することが、特に重要な課題であり、挑戦だったという。
ヨ氏は、「韓国と日本は言語も文化も異なっている。したがって、ターゲットの好みや考え方、それに行動様式も正しく理解した上で、彼らの心に響くようにメッセージやクリエイティブを制作する必要があった」と述べ、さらに次のように続けた。
「我々にとっては、2つの市場におけるブランド認知度の違いをしっかり確認することも重要なテーマのひとつだった」
韓国では、パラダイスシティはホテルとしてはすでに広く知られていたが、統合型リゾートとして認知されているとは言い難い状況だった。そのため、統合型リゾートとしてのポジションを確立することがキャンペーンの目標となった。これに対し、日本では新しい旅行先として、一から認知度を高める必要があった。こうした違いに対応するため、チームはそれぞれの市場に合わせた別々のスローガンを設定し、固有のニーズや嗜好に訴えかけることにしたという。
「Check-in to Paradise(パラダイスにチェックイン)」は韓国向けのスローガンで、休日を過ごす場所としての統合型リゾート体験を強調したものだ。一方、日本市場では「あなたの知らない、もうひとつの韓国」というスローガンを掲げ、ユニークで目新しい旅行先としてパラダイスシティを紹介している。ヨ氏にとっては、リサーチ過程で日本独自の広告の文法について学べたことが、貴重な体験だったようだ。
「日本向けのスローガンが決まるまでに、ちょっとしたエピソードがあった。私たちの目には、このスローガンは広告コピーというよりエッセイのように映ったのだが、日本のさまざまな広告をリサーチし、分析した結果、日本には独自の広告の文法があることがわかった」と、ヨ氏は明かす。
有名俳優のパク・ソジュンが、宿泊客として施設内のさまざまなアトラクションを楽しむ映像は、身なりの良いスタッフがゲストを迎える様子やホテルの部屋やレストランを紹介するだけの従来のホテル広告のイメージとは異なり、非常に斬新で面白い。
もっとも、撮影と制作のスケジュールをやりくりするのは大変だったようだ。ホテルは24時間年中無休で稼働しているため、宿泊客との接触を最小限に抑えながら、撮影を中断させないよう緻密な計画を立てることが最優先の課題だったと、ヨ氏は語った。