David Blecken
2018年9月20日

ラグビーが頭脳戦であると訴求する三菱地所

「ラグビー選手は“筋肉バカ”」という不名誉なイメージを覆そうと、三菱地所が電通とタッグを組む。

人々がラグビーに抱くイメージを変えるべく、三菱地所と電通が新プロジェクト「丸の内15丁目PROJECT」を始動した。

三菱地所は、キヤノン、NEC、TOTO、セコム、リポビタンDと共に、ラグビーワールドカップ2019日本大会のオフィシャルスポンサーを務める。同社はラグビーのフィジカルな側面だけでなく「知的な」スポーツであることを広く知ってほしいのだと、このプロジェクトを手掛けた電通のコピーライター、礒部建多氏は語る。

三菱地所は、丸の内ビルディング(丸ビル)を含む丸の内一帯の再開発を手掛けることで知られる。同社はこの地域で大会開幕日までの間、体験型の作品を15点展示する。
最初に行われたのは、ラグビーの緻密な戦略や戦術を表現したインスタレーション。丸ビル1階「マルキューブ」で行われたこの展示に、Campaignも参加してきた。240枚の透明なポスターには、歴史的勝利となった2015年大会の日本対南アフリカ戦における、ラスト4分間(=240秒)の選手たちの動きやパスの軌跡が、実際の試合データをもとに1秒ごとに描かれている。また、同試合を動画形式で見ることもできる。

240枚のポスターに描かれた、両チームの軌跡
礒部建多氏と小柳祐介氏


他にも、オンラインからの事前申込者を対象として実施される「RUG BIZ SHOW」では、ラグビーからビジネスを学ぶセミナーも開催。玉塚元一氏(ローソンの元CEO)などが講師となり、ラグビーでの経験がいかにビジネス戦略に役立ったかを語った。

このセミナーでは、トップリーダーたちにとってラグビーが意味するもの、ビジネスとスポーツの関係、ラグビーから学んだことなどが収録された、ラグビーボール型の「テキストブック」も配布された。


 


礒部氏によると、多くの人々はラグビーを迫力あるスポーツとしてしか見ておらず、緻密な頭脳戦としての魅力に気付いていないとのこと。さらに、もっと過激な言葉を使うならば「筋肉バカ」として見る者もあると、アートディレクターの小柳祐介氏は語る。

今回のインスタレーションでは、人々の好奇心を刺激することを目指し、あえて複雑さを演出しつつも、選手の動きを分かりやすく描写した、と語る礒部氏。「ラグビーが、野球やサッカーのようにポピュラーな競技になれば」との願いを込める。

ラグビーワールドカップは夏季オリンピック、FIFAワールドカップに次ぐ規模で、世界三大スポーツイベントの一つといわれている。2019日本大会は9月20日~11月2日の期間中、日本全国の12都市で開催される。

Campaignの視点:
紳士的な選手もいるが「rugger bugger(荒々しいスポーツマン)」のイメージが依然として強い――。ラグビーに対する、このようにあまり芳しくない評価は、それなりに理解もできる。だが開催が1年後に迫る中、誰もこの大会に関心を寄せないのであれば、こんな残念なことはない。

大会スポンサーが、競技そのもののイメージアップのために尽力するという例はあまり見ないが、独自のコンセプトであり、水平展開も可能。三菱地所がこの大会に関与していることの認知向上にも貢献すると考えられる。このチャレンジによって、ラグビーがエキサイティングさと品行方正さを併せ持つ競技だと印象付けることだろう。今後はぜひユーモアを交えた作品も期待したい。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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