車のCFは、いつも紋切り型である必要はない。トヨタ・ヴィッツハイブリッドの新作は、CF制作のプロセスの舞台裏を楽しく見せている点で出色だ。会社の上司から車の性能を逐一紹介するよう求められたり、クライアントが納得するようストーリーの変更を求められたり……クリエイティブディレクターが必ず遭遇する局面をユーモアたっぷりに描いている。
「The making of new Vitz story」と名付けられたこのCFは、タグボート(ディレクターは田中秀幸氏)と東北新社の手によるもの。オーストラリアのポストプロダクション会社「Alt.vfx」が過去のCFで使用したVFXからヒントを得ている。
ストーリーは、血気盛んな若手クリエイティブディレクターが映像で大胆な発想を次々と披露するが、クライアントや視聴者からのクレームを恐れる彼の上司がいちいち分別じみた意見を述べ、全く違う展開にしてしまうというもの。その過程で様々な映像技術が披露される。
「タグボートも田中氏も、CF制作に駆使される最新の映像技術にインスピレーションを受けたようです。それがこのアイデアにつながり、トヨタ・ブランドに全く新しい息吹を与える作品を生み出しました」(Alt.vfxエクゼクティブプロデューサー高田健氏)
このCFは、これまでユーチューブ上で230万回以上のビューを記録している。
Campaignの視点:
見ていて楽しく、魅力的なCFだ。車の宣伝に必要な要素を全て備えた、稀な作品と言えよう。特に、最後に登場するトラックが良い味わいを出している。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:水野龍哉)