ADKは事業運営に積極的だ。ベインキャピタル傘下となって2年余、大胆な改革や新しいアプローチを次々と実現。中でも昨年の最も大きな改革は、正式な持株会社体制に移行したことだろう。ADKホールディングスの下、改めて以下の3社に統合された。
- ADKマーケティング・ソリューションズ(MS):デジタルとマスメディア領域におけるプランニングやバイイングなど、マーケティングデータを活用した総合的ソリューションを提供。
- ADKクリエイティブ・ワン(CO):コミュニケーション戦略の企画や制作、実施までをワンストップで行う総合クリエイティブ会社。
- ADKエモーションズ(EM):コンテンツの企画・制作・商品化・販促活動・著作権といったビジネスを展開。
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「体制構築はまだ道半ばで、相乗効果が生まれるのはまだこれから」。ADKホールディングスの経営幹部はこのように語るが、「事業の核である制作物を各社とも最適化し、プロとしての力量を最大限に発揮している」とも評価する。
また、データやソーシャルメディア、eコマースに関する取り組みを幅広く推進。ジェイアール東日本企画、東急エージェンシーと共同開発するDMP(データマネジメントプラットフォーム)、IBMジャパンと協働した顧客体験のコンサルティングサービス「アルファボックス」、日本企業の海外でのマーケティングをサポートする「Croco Advertising」社の設立(マイクロアドチャイナと共同出資)などがその例だ。さらには大量のデータ統合・分析を行う機械学習(マシンラーニング)、アナリティクスとSEO(検索エンジン最適化)、デジタル広告及びソーシャルメディアのオペレーション、ダイナミック広告の制作・配信のためのデータフィード活用、中国のショッピングサイト「タオバオ」を通したeコマースといった事業にも注力する。
B+/A:昨年はカンヌライオンズ やアジア太平洋地域の広告祭で価値ある賞を獲得。特にパーティードリンク「ヘカテ」のCF「What happened?」と環境保全団体WWFの「#Animal_selfie(アニマルセルフィ)」は、発想とテーマ性で幅広い評価を受けた。また、日本広告業協会(JAAA)主催による2018年クリエイター・オブ・ザ・イヤー賞で弊社クリエイターの大塚智がメダリストに。ADK台湾も中国で数多くの広告賞を獲得した。 |
さらに、CO傘下で多くの小規模クリエイティブブティックをスタート。2018年の「CHERRY」に始まり、今では「FACT」「navy」「addict」「ADK WONDER RECORDS」といったブランドが出揃う。それぞれの専門性やセールスポイントを区別するのは難しい −− 例えば、FACTのコンセプトは「価値ある事実に光をあてて、人を動かす事象をつくる」 −− が、「このアプローチは適切に機能している」とADK経営幹部。「オリジナリティーとクリエイティビティーがより明確になり、直接的な関係が築けることでクライアントの満足度も高い」。また、「新しいクライアントの獲得にも一役買っている」。だが、この取り組みが確実な収益をもたらすかどうかの判断はまだ時期尚早だろう。
同時に注力してきたのが、パフォーマンスマーケティングを担う「ADK CONNECT」の立ち上げだ。これは最も重要なプロジェクトともいえ、準備には昨年1年を費やした。今年1月に正式な発足を発表、ADKは全ネットワークを通してパフォーマンスマーケティングの拡充を図る。今年のエージェンシー・レポートカードではまだその評価はできないが、ADKは既存のオフィスの人員配置を変えてまでその設立に尽力。例えば、バンコクでは20人いたデジタルチームを全員解雇し、新たに専門知識を有する30人近くのスタッフを採用した。
こうした改革は、まだ売上面では目立った変化をもたらしていない。昨年のMSとCOの売上高はほぼ横ばい状態で、海外事業がそれに占める割合も過去数年とさして変わらない。しかしながら、コスト削減で収益性は改善。経営幹部はADK CONNECTがROI(投資収益率)をさらに押し上げるとして、全体的な収益増を見込む。
クリエイティブの面では、CHERRYが手がけたヘカテのCF「What happened?」がカンヌライオンズ のフィルムクラフト部門でブロンズを獲得。さらに、WWFジャパンのキャンペーン「アニマルセルフィ」がアジア最大級の広告祭アドフェスト(ADFEST)でブロンズ、D&AD(ブリティッシュ・デザイン&アートディレクション)賞ではグラファイトペンシル(シルバーに相当)を獲得(共に制作はCHERRY)した。また、ADK台湾が手がけたセブン-イレブンとユニプレジデント(統一企業)のCFは、LIA(ロンドン・インターナショナル・アワーズ)とワンショー(One Show)・グレーターチャイナで共にゴールドを受賞した。
人材のダイバーシティに関しては、より明確な方針が求められよう。この分野における取り組みは、これまで一切発表されていない。経営幹部にこの点を問うと、「従業員のスキルセットをどのように多様化すべきか現在検討中」という答えが返ってきた。つまり、考慮すべきジェンダー平等などのダイバーシティは視野に入っていないことを意味する。
戦略プランニング
Acer(エイサー) 他の収益源
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(文:Campaign Asia-Pacific編集部 翻訳・編集:水野龍哉)