日本は今後数年間、スポーツ界において話題の中心となるだろう。だが障害者スポーツ選手(パラアスリート)たちの、認知度向上にむけた奮闘は依然として続く。パラ卓球協会はこのたび、パラスポーツへの認知度を高めることを目指し、身体的制約のあるアスリートたちがどのように戦っているのかを具現化した。
制作に携わったTBWA HAKUHODOによると、パラスポーツを観戦したことがある人は、日本ではたったの1%。選手たちの非常に高い能力、そして彼らがどのような課題に挑んでいるのかが知られていないことに、原因があると考えた。
パラ卓球協会のリブランディングの一環として、パラ卓球の選手たちがどのように感じているのかを再現したのがパラ卓球台だ。同じ卓球台も、抱えている障害によって見え方が異なる。日本代表選手がそれぞれどのような難しさを抱えながらプレーしているのかを、形へと落とし込んだのだ。
例えば、左足のつま先に力が入らない選手にとって、卓球台の左サイドは遠く感じる。手が短い選手には、卓球台上のほとんどが手の届かないエリアだ。そして車椅子の選手には、手の届く範囲に限界がある。
リニューアルされた同協会のホームページに掲載されているこれらのパラ卓球台は、希望する商業施設やイベントスペース、学校などに貸し出される。イベントも実施しており、今月初めには都内の小学校での体験授業で、パラ卓球の渡邊剛選手と小学生がパラ卓球台を使った試合を体験。また先月はParaFes 2018(日本財団パラリンピックサポートセンター主催)で、パラ卓球の岩渕幸洋選手と、リオ五輪卓球男子団体銀メダリストの吉村真晴選手がパラ卓球台(IWABUCHI MODEL)を使って対戦した。勝利した吉村選手は「勝ててよかった。岩渕くんの凄さがよく分かった」と驚いていたという。
TBWA HAKUHODOのスポークスパーソンによると、1月末から2月中旬にかけて都内の商業施設でも展示を行う予定。パラスポーツへの興味が無い人々に興味を持ってもらえるよう、展示会、イベント、動画などを実施していくという。
Campaignの視点:
想像力や人間性が豊かで、具体的なメッセージを力強く伝える作品だ。エージェンシーがアワードの受賞を視野に入れた作品である可能性もあるが、そのことがこの作品の重要性を損なうものではない。課題となるのは、これまでパラスポーツを見たことがない新しいオーディエンスに向けて、パラ卓球台や、この台を使った試合を確実に訴求することだろう。人々がさまざまな場面で目にする機会が増えるよう、今後も継続的な施策展開が期待される。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)