ピュブリシスグループの2022年第3四半期決算は、オーガニック成長率が10.3%となり、3四半期連続で10%を超え、予想以上の上振れとなった。さらに、今年2回目となる年間売上高予想の上方修正も行った。
フランスのエージェンシーグループであるピュブリシスは、2022年の売上高成長率を、ウクライナ戦争が始まる前の2月には4%~5%、7月時点では6%~7%と予想していたが、今回約8.5%に上方修正した。
この好調な業績は、大方のアナリストの予想を上回るものであり、加速するインフレと世界経済の減速に対する懸念が高まり、逆風が吹くなかで成し遂げられたものだ。
ピュブリシスは、好業績と生活費の上昇を考慮して、過去12カ月間同グループで勤務し、変動報酬を受け取る権利のない従業員に対して、1週間分の給与に相当する「特別ボーナス」を支払うと発表した。
同グループは、全従業員9万人の約半数となる4万5000人ほどに対して、約5000万ユーロ(約73億7500万円)を引き当てる。
計算すると、1人あたりの平均支給額は約1100ドル(約16万円)になる。
この1週間分の給与相当の特別ボーナスを受け取る権利を持つ従業員には、感謝祭やクリスマスなどのホリデーシーズンに合わせて11月に支給される予定だ。
他の従業員は、報酬の一部として年次ボーナスを受け取る権利があるが、こちらは通常通り、2023年2月に予定されている同社の年次決算終了後の3月まで待たなければならない。
ピュブリシスグループのCEOを務めるアーサー・サドゥン氏は、「並々ならぬ努力をしたすべての従業員に大きな『感謝』を贈りたい」と述べた。
サドゥン氏はこう説明する。「インフレが、多くの従業員の日常生活に影響を及ぼしている状況の中でホリデーシーズンを迎えるにあたり、最も必要とされるところに、さらなる支援を確実に行いたい」
「そのため、この1年の業績すべてに貢献してくれた全社員のうち、変動報酬制ではない約半数の従業員に、来月1週間分の給与を追加で支給することにした」
「特に経済危機とインフレの影響を最も受けている人たち」を支援することが重要だと、サドゥン氏は従業員向けの動画メッセージで付け加えた。
ピュブリシスが変動報酬対象外の従業員にボーナスを支払うのは、2022年中で2回目となる。
2022年2月にも、従業員のうち約3万5000人が、過去2年間の努力に対して1週間分の給与に相当する額を、それ以外の従業員が年次変動ボーナスを受け取るのと同じタイミングで、支給されていた。
ピュブリシスは第3四半期決算で、ボーナス支給の発表に加え、2022年の全従業員の平均昇給率が7%になったことも明らかにした。
第3四半期業績では英国支社が突出
ピュブリシスは、第3四半期の成長をけん引した事業部門として、デジタルコンサルティング部門のピュブリシス・サピエント(18.1%増)と、データ部門のイプシロン(13.9%増)を挙げた。
北米は11%増、欧州は11.1%増、アジア太平洋地域は4.1%増となった。
アネット・キング氏がCEOを務める英国支社は、ピュブリシス・サピエントの「力強い成長」とメディアおよびクリエイティブ部門の「極めて堅調な」業績により、22.6%増と際立った伸びを示した。
サドゥン氏はこう語る。「3四半期連続で2桁成長を達成できたのは、ファーストパーティデータ管理、デジタルメディア、ビジネストランスフォーメーションに向けられた顧客の予算を、当社のビジネスモデルがうまく取り込めたからだ」
「年初からの好業績により、本日、2022年通年での予想について、今年2度目となる上方修正を行う。オーガニック成長率に関しては、前回予想の6~7%から、約8.5%になると確信している」
さらに営業利益率については、前回予想の上限である「18%近く」になるはずだとしている。
サドゥン氏はこう付け加える。「第3四半期の数字は確かに素晴らしい。しかし、本当に際立っているのは、パンデミック前の水準に比べた当社の業績だ。2019年と比較すると、第3四半期のオーガニック成長率は16%にまで加速している」
「これは、世界経済の浮き沈みに十分に耐える当社の力を示すものであり、マクロ経済の継続的な不確実性に立ち向かう当社の能力に自信を与えるものだ」
1~9月期のオーガニック売上高は 10.3%増の56億4000万ドル(約8350億円)だった。
米国で競合するオムニコムも、ピュブリシスに続いて第3四半期の業績を発表している。
ピュブリシス、オムニコム、インターパブリック、WPPはいずれも第2四半期決算で売上高見通しを上方修正しており、エージェンシー各社の対応力が証明された格好だ。
ピュブリシスグループの株価は、第3四半期決算の発表と新たな売上高予想の上方修正を受けて、取引開始直後に約4%上昇した。