「マゴ写レター」と名付けられたこのサービス、ターゲットはスマートフォンを自在に使いこなすミレニアル世代(1980年代から2000年代初頭までに生まれた世代)だ。
送り主である孫世代は、スマホを操作するだけで写真の付いた往復はがきを祖父母や両親に送ることができる。受取人は写真を手元に残して返事を出し、両者間にコミュニケーションが生まれるという仕組みだ。
サービス受付期間は10月19日までで、はがきは11月5日前後に受取人に届く。企画・開発を担ったマッキャンエリクソンは、この日を「祖父母との交流・いい孫の日」として日本記念日協会に登録した。
離れて暮らす祖父母との日常的な交流は、なかなか難しい。ましてや今はコロナ禍の最中だ。「家族をつなぐ一つの手段、そしてきっかけになってほしいという思いを込めて開発しました」とマッキャンのクリエイティブディレクター吉富亮介氏。「マゴ写レターをきっかけに電話をしたり、実際に会いに行ったり……。コミュニケーションが様々に広がって家族の絆が深まればと願っています」。
また、「スマホ世代とアナログ世代、それぞれに馴染む形のサービスも意識した」という。「返事を受け取るスマホ世代には、手書きのはがきの温かみに触れていただけると嬉しい」。
さらには、お年寄りの認知症予防のサポートという意味合いも含まれる。日本郵便はサービスに伴う様々な動作が認知症に与える影響について、医師120人を対象にアンケート調査を行った。その結果、「家族・知人とのコミュニケーションが認知症にとってポジティブに働くと考えられる」と回答した医師は8割以上。返信する際の見る・書く・歩くといった行動が「認知症患者のサポートの充実化につながる」と答えた医師は6割以上だった。
精神面だけでなく、肉体面でも祖父母世代に孝行ができるサービスと言えそうだ。
Campaignの視点:
折しも先週、総務省は日本の65歳以上の高齢者人口が3588万人となり、総人口に占める割合(28.4%)は世界で最も高いと発表した。2位のイタリアは23%で、その隔たりは大きい。また、2025年には日本で認知症にかかる高齢者が5人に1人になるという予測もある。
否応なく高齢化の道を突き進む日本社会。そうした時勢をよく反映した、と言うか、時勢が生み出したサービスと言えようか。
サービスの発想と仕組みは至ってシンプルで、そこが良い。「社会善」的側面はもちろん、デジタル世代とアナログ世代をつなぎ合わせるアイデアも秀逸だ。利用料も500円で手頃。概してミレニアル世代は家族とのつながりを重んじるという調査結果もあり、大きな需要を生む可能性がある。
ただし、期間限定なのがいかにも惜しい。記念日にかかわらず、こうしたサービスは社会が常時必要とするものだ。継続的な実施が望まれる。
(文:水野龍哉)