ユニクロは3月16日、東京湾に近い有明に設けた新たな本部、「ユニクロ シティ トウキョウ」を報道陣に公開した。ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長・柳井正氏は記者説明会の席上、「ここが お客様や取引先、そして社会に向けたユニクロのクリエイティブの発信地となる」と語った。
新オフィスは開放的な空間が特徴で、移動しやすいよう仕切りがほとんどない。ここを設立した主な理由について、同社グローバルクリエイティブ統括のジョン・ジェイ氏は「スタッフに敬意を表し、より創造性を発揮してもらうため」と語る。「社員を尊重し、素晴らしい職場環境を提供するのが私たちの役目です。環境の悪い職場で、どうして素晴らしい仕事ができるでしょう」。
ここはユニクロのイノベーションセンターにもなる。内装のデザインは、ワイデン アンド ケネディや映像制作会社「ピクサー」のオフィスなどを手がけた「アライド・ワークス・アーキテクチャー(Allied Works Architecture)」の創設者、ブラッド・クロエフィル氏。異なる部署が活発に交流し、デジタルコマースがより効率的に機能するよう考案したという。
グループ執行役員でプロジェクト推進室の田中大氏は、「ユニクロを製造小売業から『情報製造小売業(デジタル・コンシューマー・リテール・カンパニー)』に変えたい。お客様からのフィードバックにより注意深く耳を傾け、プロダクトデザインに反映させていきます」と語った。
「服を作る人と着る人との境をなくしたいのです。今後はお客様の声をもっとよく聴き、それを商品開発に生かすことで、さらにお客様に寄り添っていきます」
「これまでは我々は、自分たちの作ったものをお客様に押しつけるだけでした。これからはお客様が求めるものだけを作っていきます。すべての商品は顧客情報に裏付けられたものになるので、プランニングは極めて迅速になる。生産のサイクルも月単位から週単位になります。商品の修正・改良も、お客様と共に手がけていきたいと考えています」(以上、田中氏)
これらの目標を実現するには、仕事の流れを縦型から「リアルタイム」に変換する必要があった。「社員同士のやり取りが容易になった有明の新オフィスは、それを促進するための一手」と同氏。
「有明プロジェクト」に深く関わったジェイ氏は、「ユニクロはまだ完全なグローバル企業とは言えません。今は転換期。マーケティング面で大幅な進歩が必要です」と語る。
ユニクロは、日本向けオンラインストアもリニューアル。モバイル上でより多くの商品のセレクトやカスタマイズを実現し、よりリアルなショッピング体験を提供していく。更には、試作段階の人工知能によるチャット機能も導入。かつてAKQAでグローバルクリエイティブチームのリーダーを務め、現在はイナモト・アンド・カンパニー(Inamoto & Co)を率いるレイ・イナモト氏は、女優でブランドアンバサダーの佐々木希さんと共に新しいUniqlo.comを披露した。注文したユニクロの商品は全国4万3千店のセブン-イレブンやファミリーマート、ローソンといったコンビニエンスストアで受け取りが可能となる。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:水野龍哉)