※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。
広告からジェンダー偏見をなくしていく
今年も国際女性デー(3月8日)に合わせ、ジェンダー不平等の是正に向けたさまざまな活動が展開されている。Campaignではアジア太平洋地域で活躍する女性のブランドマーケターやエージェンシーリーダーたちに、広告から除外していきたいと考えている固定観念について聞いた。
「金融関連の商品や、退職後の計画、住宅ローンの広告に女性がほとんど登場しないこと。出てくるときといえば、目を閉じたままでも手続きできるほどシンプルであることを訴求する場合くらいです」(VMLY&R アジア Co-CEO トリプティー・ロチャン氏)
「献身的な女性像を広告で称賛するようなことは止めたいです。他人が女性のためにと選択したことを、罪悪感を与えながら受け入れさせるだけにすぎません」(ユニバーサルマッキャン中国 チーフ・ストラテジー・オフィサー リン・リュウ氏)
その他のコメントについては、こちら(動画、英語)から。
無自覚のうちに発せられる偏見ワードを指摘
女性の職場環境やリーダーシップを支える活動をグローバルに展開する非営利団体「カタリスト」が、無自覚のジェンダー偏見を是正するキャンペーンを今年も実施している。同団体は女性を表現するのにつかわれる言葉、例えばaggressive(攻撃的な)と打ち込むとassertive(意見をはっきり述べる)」といった中立的な単語を提案してくれるSlack(ビジネスチャットアプリ)のプラグイン(拡張機能)を昨年発表。自身の写真と、偏見に満ちた単語やその定義、代替できる中立的な言葉とを重ね合わせるフォトジェネレーターも公開した。今年はこれらの施策が、スペイン語、ドイツ語、フランス語、日本語にも対応した。
「昨年の#BiasCorrectキャンペーンへの反響から、職場で発せられる無自覚のジェンダー偏見が及ぼす影響に、多くの人々が気付いていないことが分かりました。そのため、言語がインクルージョンにどのように影響するか、引き続き啓発していく必要があると感じました」と語るのはロレイン・ハリトンCEO。「この問題がまだ解決されていないことは明らかです。2020年のキャンペーンには男性も、ジェンダーパートナーとして関わってもらっています」
ユニリーバ、管理職のジェンダー平等を計画前倒しで達成
管理職における女性比率50%を目標に掲げていたユニリーバが、計画よりも1年前倒しで実現した。2010年時点では課長職以上38%、非常勤役員45%であった。グローバル最高経営責任者のアラン・ジョープ氏は「ジェンダー平等は、世界中の社会および経済を発展させることができる唯一かつ最大の鍵」とコメント。そして社内のジェンダーバランスは「目指すべきものではなく、当たり前のものであるべき」とした。また、14,000人にも及ぶ同社の管理職でジェンダーバランスを実現できたことを「非常に誇らしいことですが、これで終わりではありません」と述べた。なお、日本における女性管理職比率は38%とのこと。
女性が多いはずのPR業界、だが女性の経営トップは数少ない
女性比率が男性を上回るPR業界だが、リーダーシップ層になるとこの比率が逆転する。このような現象は、なぜ起こるのか? CampaignがPR会社のリーダーたちにこの質問を投げかけたところ、「公私においてさまざまな役割を担うことが期待されている」「そもそも歴史的に、リーダーシップ層のジェンダー不平等が続いてきたため、ロールモデルが不在」などの回答が寄せられた。
「そもそも優れたリーダーシップやパフォーマンスの意味を再定義する必要がある」と指摘するのは、エデルマンのアジア太平洋地域COO、ボブ・グローブ氏だ。企業の業績はこれまで伝統的に男性によって定義づけされてきたが、男性の固定観念による「成功」の定義から前進する必要がある、というのだ。「最近はリーダーシップの要素として、聞く姿勢やインクルーシブであることも重視されるようになってきており、これらがチームのパフォーマンスを向上させていることは明らかです」
WEコミュニケーションズのシンガポール&豪州担当EVP、レベッカ・ウィルソン氏は、女性のエンパワーメント(活躍推進)がテーマの講演会に、女性ばかりが集まるのは皮肉なことだと感じている。男女平等の実現には、男性が重要な役割を果たすためだ。ゴリンの香港オフィスでマネージングディレクターを務めるジェーン・モーガン氏も、「言葉によって旗を振ることよりも、目に見える行動が必要。大げさなイニシアチブである必要はなく、日々のビジネスの環境で目にすること、そして企業文化に組み込まれなくてはなりません」と説く。
詳しくはこちら(英語)から。
(文:田崎亮子)