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発信を続けるウクライナのクリエイティブエージェンシー
「最も身近な隣人が我々を戦車で攻撃してくるとき、我々は他の隣人たちにありがとうと伝えます」というナレーションで始まる約1分の動画が、3月に公開された。これまでウクライナを支援してきた著名人や実業家、企業、国々への感謝を伝える内容で、制作したのは同国の独立系クリエイティブエージェンシー「バンダ(Banda)」だ。
同社のスタッフ約80名のうち、今も首都に残るのは10名のみ。10名が近隣諸国に逃げ、残りは国内に散り散りとなった。オフィスでの勤務は危険なため見合わせており、避難先やシェルターなどで働く社員もいるという。クライアントの多くは国内企業であるため、業務を続けるのも困難な状態だ。しかし最高業務責任者であるドミトリー・アダビル氏は「仕事を得て、給与を支払い、そして生き残るために最善を尽くしています」と語る。
「みんな疲れていて、精神を強く保つことが日に日に難しくなっています」と吐露するのは、同社デザイナーのダニロ・ネステレヴィチ氏だ。「『軍は戦いには勝つが、戦争に勝つのは経済だ』という言葉があります。ウクライナにはITやデザイン、広告、音楽などあらゆる分野で才能を発揮する人材がたくさんいるため、全世界はウクライナと共に働く準備をしておく必要があります。全世界ともっとつながり、もっと出会い、もっと身近に感じる良い機会なのです」。インタビューの詳細はこちら(英語)。
気候変動のフェイク情報に対抗するプラットフォーム
ピンタレストが、気候変動に関する誤情報や偽情報についてのガイドラインを定義し、「一般社会の健全性、安全、信頼を損なう可能性のある」コンテンツを削除していくと発表した。削除の対象となるコンテンツは、気候変動の存在や影響などの事実を否定するもの、気候変動の解決策に関する虚偽または誤解を招くもの、科学的データを不正確に伝えるもの、そして公共安全の危機に関する虚偽または誤解を招くものだ。
「ガイドラインは、公衆衛生に関する誤情報に対処するため2017年に初めて設けられて以来、世界の情勢の変化にあわせてアップデートを重ねてきました」とコメントするのは、同社のポリシー担当シニアバイスプレジデント、サラ・ブロンマ氏。「気候変動に関する誤情報ポリシーの拡充は、誤情報と戦い、安全な場所をオンラインに生み出すためのピンタレストの取り組みにおける新たな一歩です」。
気候変動関連の誤情報については、他のソーシャルメディアも取り組んでいる。昨年秋にはメタ(旧フェイスブック)が、気候変動関連の正確な情報を提供する「気候学センター」を公開し、誤情報に対抗するため助成金プログラムに100万ドルを投資した。
その後まもなくアルファベット社(グーグルの親会社)も「気候変動問題の存在とその原因に関して、十分な評価が確立された科学的な合意と矛盾するコンテンツを宣伝する広告の掲載と、そうしたコンテンツの収益化」を禁止すると発表した。
世界のマーケティング費の成長、中国とインドが牽引
2021~2025年の世界のマーケティング費は毎年7%成長し、2025年には4.7兆米ドルに達するという予測を、フォレスター(Forrester)が発表した。成長率がグローバル平均を上回る市場は中国(13.4%)、インド(12.7%)、スペイン(10.4%)、米国(8.0%)、韓国(7.5%)。日本の成長率は3.4%という見通しだ。
この成長を最も牽引するのはITソフトウェア&サービス業界で、2021年のマーケティング投資額は全体の7%を占めるにすぎないが、2025年には14%にまで成長すると推定している。
クリエイティブディレクターが中高一貫校の校長に
電通のクリエイティブディレクターである福田崇氏が、茨城県立校の校長に就任予定(在籍出向)だ。初年度は副校長として勤務し、来年から3年間校長を務めることとなる。茨城県では学校教育の変革の一環として公立校の中高一貫校化を推進しており、5校を新たに設立し、校長職を民間出身者など幅広い層から募っていた。
「私は今、広告を去るわけですが、クリエイティブ業界を去るわけではありません」と同氏はCampaignに語る。「学校で働くには、さまざまなクリエイティブスキルも求められます。カスタマー・エクスペリエンスはこれから、スチューデント・エクスペリエンスになるのです」。同氏は子どもの誕生をきっかけに教育に関心を持つようになった。2019年には、旧来型の教育モデルに問題提起し「新しい時代の、新しい学び文化づくり」をテーマに活動する「教育ガラガラポン」プロジェクトを立ち上げている。
(文:田崎亮子)