Ryoko Tasaki
2020年12月18日

世界マーケティング短信:積み残した課題

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

アンドリュー・ロバートソン氏(左)、永井祥裕氏(右上)、スーション・キー氏
アンドリュー・ロバートソン氏(左)、永井祥裕氏(右上)、スーション・キー氏

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。
 

ファーウェイ、欧州のコミュニケーション担当が相次いで辞任

これまでにも中国当局によるウイグル人の収容施設への収容や、綿花生産への強制動員などがたびたび指摘されてきたが、今月初旬に複数のメディアが、ウイグル人を検出し中国当局に報告する顔認識ソフト「ウイグル・アラーム」をファーウェイが試験運用している疑いがあると報じた。そんな同社で最近、2名のコミュニケーション担当が相次いで同社を去った

デンマークのジャーナリスト、ヘンリク・モルトケ氏が今週火曜日、ファーウェイ・デンマークのコミュニケーション担当バイスプレジデント(当時)トミー・ズウィッキー氏にこの件についてコメントを求めたところ、「できない。それが理由で私は辞任した」との返答があったという。ズウィッキー氏のツイッターアカウントにも、役職を解かれた旨が記されている。

英国でコミュニケーションディレクターを務めるエドワード・ブリュースター氏も、9年以上勤めたファーウェイを1月に去るとリンクトインで報告した。この投稿の中で、英国政府がファーウェイを5Gネットワークから排除しているのは「誤り」だと批判している。

なお、サッカーのアントワーヌ・グリーズマン選手(FCバルセロナ)も、「ウイグル・アラーム」問題を受けて同社との広告契約を打ち切ることを発表した。

 

I&S BBDO 経営層の異動を発表

I&S BBDO、BBDO JAPAN、BBDO J WESTは、意思決定と業務遂行のスピード向上による経営力強化を目指し、来年1月1日付で経営層の新任と異動を内定した。I&S BBDOの会長には、アンドリュー・ロバートソン氏が就任する。永井祥裕氏はI&S BBDOとBBDO JAPANの代表取締役社長、BBDO J WESTの代表取締役に就任。また、スーション・キー氏は3社の取締役副会長となる。

 

エージェンシーの年齢差別を批判

「60歳以上の従業員が1%にも満たないエージェンシーに、まだ支払っているのか?」――このような文章をリンクトインに投稿したのは、元オグルヴィのクリエイティブディレクター、ジョージ・タンネンバウム氏だ。同氏は今年1月、62歳でオグルヴィから「追い出された」と主張しており、年齢による差別を強く批判している。この投稿に寄せられたコメントは43件(原稿執筆時点)で、マーケティングコミュニケーション業界の人々による共感や応援の内容が大多数だ。

オグルヴィが属するWPPグループのマーク・リードCEOは今年9月、社員の平均年齢が30歳未満であり「1980年代を思い返すことがないのは幸運だ」と発言。これに対して年齢差別だとの批判が集中し、その後謝罪している。

 

WARCメディアアワード 受賞作品が決定

今年で5年目を迎えたWARCメディアアワードの、全部門の受賞作品が発表された。Effective Channel Integration部門でグランプリを獲得したのは、ジョンソン&ジョンソンが日本で展開したバンドエイドのキャンペーン「#スニ活」。就職活動生の靴擦れを減らすため、スニーカーでの就職活動を提唱したものだ。同社の調査によると、77%もの就職活動生が靴擦れを経験する。企画・制作はBBDO JAPAN。

その他の受賞作品の一覧はこちら(英語)。

 

インフルエンサーも認めた本格グルメ

シンガポールのドッグフードブランド「Furry’s Kitchen」が、人気のグルメ系インフルエンサーに試食してもらった様子を公開した。このブランドの訴求ポイントは、新鮮な食材で作られており、保存料や添加物を使用していないヒューマングレード(人間向けの食品と同等の品質)であることだ。インフルエンサー達に、これから試食する料理がドッグフードから作られていることは知らされていない。

本格的なコース料理に舌鼓を打つ参加者たちは、味わいの複雑さや口当たりの良さを大絶賛。グルメ系インフルエンサーが認めた味ならば、犬もきっと夢中になるはず…と締めくくられる。企画・制作はオグルヴィ。


【お知らせ】
Campaign Asia-Pacificが主催する「イベント・マーケティング・アワード2021」のエントリーを受付中です。詳しくはこちらから。

 

今号が、2020年最後の「世界マーケティング短信」となります。年明けは、18日より配信いたします。

皆さまには日ごろよりご愛読いただき、大変感謝しております。どうか良いお年をお迎えください。2021年も皆さまのさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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