Ryoko Tasaki
12 時間前

世界マーケティング短信:米司法省がグーグルにChrome売却などを要求

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:米司法省がグーグルにChrome売却などを要求

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

独占状態の是正策としてChrome売却を要求 米司法省

米司法省はグーグル(Google)に対し、独占解消のためウェブブラウザ「Chrome」の売却などを求める是正案を裁判所に提出したとブルームバーグ(Bloomberg)が報じた。グーグルはオンライン検索市場を違法に独占したとして米司法省から訴えられ、今年8月に反トラスト法(独占禁止法)違反の判決を下されている。Chromeは同社の最も貴重な資産の一つで、ユーザー数は34.5億人に上る。スタティスタ(Statista)によると、Chromeの世界シェアは63.6%で、数十億米ドル規模の広告事業には欠かせない存在といえる。

他にも、Android(OS)については検索やPlay(アプリストア)からの切り離しを司法省は求めている。広告掲載場所についての透明性を高め、選択肢をもっと広告主に与えることや、パブリッシャーがAI製品からオプトアウトできるようにすることも要請した。

減少が続く、Xの広告収入

世界広告研究センター(WARC)の新たな調査によると、コンテンツモデレーションがほとんど行われていないX(旧ツイッター)は広告収入が今後も減少し続けると予想される。

分析によると、Xは2022年にイーロン・マスク氏が買収して以来、広告収入が45億米ドル(2022年)から22億米ドル(2023年)とほぼ半減。この傾向は今後も続き、今年の収益は20億米ドル、来年はそれ以下になるとみられる。同期間にインスタグラム(Instagram)の広告収入は+24.9%、スナップチャット(Snapchat)は+13.8%、ピンタレスト(Pinterest)は+18.1%と大幅に増加しているのとは対照的だ。

WARCのデータ・インテリジェンス・予測担当ディレクター、ジェームズ・マクドナルド氏は「世界トップ20のメディアオーナーの一つだったXの広告事業は、その地位が転落し、2022年の第4四半期以降は大幅に衰退しています」と述べる。コンテンツモデレーションの欠如を理由に、大手広告主がブランドセーフティーへの懸念から広告出稿を控えるようになったためとみられ、「買収前の成長を維持していたならば、Xの広告収入は現在の2倍以上になっていた可能性があります」。

また、カンター(Kantar)の調査によると、Xでの広告がブランドにとって安全であると考えるマーケターはわずか4%で、2025年に支出を削減する予定だと回答したのは26%に上る。同社のソートリーダーシップ担当EVPを務めるジェーン・オルスター氏は「マーケターは、Xが特に信頼できるわけでも革新的でもないと認識しています。これは広告主を呼び戻すために乗り越えなくてはならない、2つのハードルです」と語った。

大手広告主の7割強が、広告会社への支払方法の見直しを検討

世界の大手ブランドの75%が、今後3年以内にエージェンシーへの支払方法を見直す予定だという。世界広告主連盟(WFA)とメディアセンス(MediaSense)の調査で明らかになった。調査対象となったのは年間600億米ドル以上の広告予算を持つ80社以上の多国籍企業で、従来の時間ベースでの支払いから、成果に重点を置いたモデルへの移行を示す結果となった。

ブランドの58%が、エージェンシーとの公正な価値交換を促すため、成果に重点を置いた価格設定への移行を検討している。だが84%が、エージェンシーの成果を評価するためのデータや指標が不足していることが大きな障害だと指摘。さらに87%が、エージェンシーが利益の透明性を高めるモデルの採用に抵抗していると考えているという。

支払モデル変更の主な理由として、コスト削減を挙げたブランドはわずか15%だ。61%は、高レベルな戦略や技術といった専門性に対するエージェンシーへのフィーは、今後3年間で上昇すると予想している。一方で、AIによって自動化される定型のタスクについて、コスト削減を期待しているブランドは58%だ。

WFAのメディアサービス部門グローバルリーダーのトム・アシュビー氏は「メディア環境は前例のない速さで進化しています。新しいチャネルが急増し、AIが業界を再編し、新たな複雑性が生まれ、広告主やエージェンシー、メディアオーナーの役割を再定義しています。エージェンシーのビジネスモデルや報酬の構造は、適応し続けていく必要があります」と語った。

「パフォーマンス重視のより洗練された報酬モデルを推進するか、あるいは予測しやすい従来のアプローチに戻って複雑な領域を管理しながら削減を進めていくか、今日の広告主は極めて重要な選択を迫られています。この調査で、大多数が前者に注目していることが明らかになりました。これはエージェンシーのパフォーマンスと成果を一致させたいという要望の高まりを反映したもの。エージェンシーと広告主の協力的かつ前向きなアプローチによってのみ達成できると、私たちは考えています」。

電通グループ、好調な日本市場とAPACの落ち込みが対照的

電通グループが第3四半期の決算を発表し、オーガニック成長率は+0.3%とプラス成長を維持できた。だが通期予想は+1%から0%に下方修正した。

地域別にみると、日本市場(売上総利益の4割を占める)の売上総利益は1,099億円で、累計は過去最高を記録。オーガニック成長率は+2.8%だった。広告事業はテレビが好調だった他、インターネット広告が2桁成長を続けている。

米州は売上総利益が813億円、オーガニック成長率は-3.1%。CXM(顧客体験マネジメント)事業への顧客企業からの支出が減少し、回復が想定よりも遅れていることから、第4四半期もマイナス成長となりそうだ。一方、EMEA(欧州・中東・アフリカ)は売上総利益が649億円、オーガニック成長率は+6.9%と好調だ。

上半期に既に低迷していたAPAC(アジア太平洋)の業績はさらに悪化し、売上総利益は265億円、オーガニック成長率は-11.6%だった。CXMの厳しい状況が続く他、クリエイティブも顧客企業の予算削減の影響を受けた。

代表執行役 社長 グローバルCEOの五十嵐博氏は、「業績の回復は緩やかではありますが、One dentsuの下でこれまで取り組んできた戦略は確実に戦略につながっており、引き続き強化してまいります」とコメント。また過去9カ月でデータ&テクノロジー、人材&カルチャー、ビジネスオペレーションの領域において内部投資を強化してきたと語った。新たな中期経営計画は来年2月に公表される予定。

防災の視点を全国から集め、世の中に共有

福島民報社、岩手日報社、電通が今年3月に立ち上げた「未来防災イニシアチブ」が、全国から防災の視点を集めて世の中に共有する「防災新視点」を開始した。

これは全国の新聞社41社42紙の協力を受けた企画で、備えるべきなのに見落とされている課題や、世の中に十分に広まっていない防災対策における考え方、誰かにとっての「いい気づき」となる事例やナレッジなどを全国から集めてまとめ、公式サイトや来年3月に都内で開催予定の「防災新視点サミット」での展示を通して共有していくというもの。1月31日までエントリーを受け付けている。

【お知らせ】

Campaign Asia-Pacificが主催する「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー2025」の日本/韓国におけるショートリスト(最終候補)が発表されました。授賞イベントは11月28日に都内での開催を予定しています。

また、Campaign Asia-Pacific主催「Women to Watch 2024」の受賞者が発表となりました。詳しくはこちら(英語)をご覧ください。

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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