電通の新たな大物コンサルタント
カンヌライオンズ運営会社のテリー・サベージ前会長が、電通ブランドのエージェンシー(国外のクリエイティブネットワーク)のコンサルタントを務めることになった。豪・広告業界誌「マンブレラ(Mumbrella)」がいち早くこのニュースを報道。電通イージス・ネットワークのスポークスパーソンはCampaignに事実であることを認めたが、詳細は伏せた。サベージ氏はカンヌライオンズに33年間勤務。昨年退職し、自身のコンサルティング会社を設立していた。
ユニクロは最も急成長したアパレル
コンサルティング会社ブランドファイナンスが毎年発表するアパレル企業のブランド価値査定ランキング、「アパレル50」。その中でトップ10入りしたユニクロを「最も成長が速いブランド」と評価した。ブランド価値は前年比で48%上昇し、119億米ドルに。評価の要因となったのはマーケティングへの投資や株主資本、ビジネスパフォーマンスに基づいたブランド力。ブランドファイナンスは具体的に、国際的な展開力やブランドアンバサダーとしてテニスのロジャー・フェデラー選手と契約したこと、「強力なサプライチェーンの構築と、性別や年齢、民族を超越した質の高い、イノベーティブで手頃な価格の衣料品の提供」などを挙げる。
最も価値の高いアパレルブランドに選ばれたのは今年もナイキで、その価値は324億ドル。ブランドファイナンスのマネージングディレクター、リチャード・ハイ氏は「ナイキの大胆なマーケティングと明確なメッセージ性が、競争の激しい業界での差別化にひと役買っている」とコメントしている。
個人データ保護に再び脚光
ウォール・ストリート・ジャーナルによると、IAB(インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー)のランドール・ローゼンバーグCEOが、消費者の個人データ保護のため米国内で法規を統一すべきだと訴えた。現在米国では、個人データ保護法は各州が独自に制定している。また同氏は、EUのGDPR(一般データ保護規則)などこれまでの法規は条項が多すぎ、「消費者は全て読んだり理解したりしないうちに企業と契約してしまう」と批判。どのようなモデルが最も適切か定義が難しいところだが、突きつめていけば消費者の立場で考え、消費者本人が個人データを完全に管理できるようなものでなければならない。そして企業にとっても比較的理解しやすく、適応しやすいものであるべきだろう。GDPRは決してそうではないが。
これとは別件ながら、TikTok(ティックトック)が米国で違法に子どもたちの個人情報を収集したとして、570万ドル(約6億3000万円)の罰金刑を受けた。13歳未満のユーザーとの契約に必要な親の同意を得ていなかったという。世界で5億人いるTikTokのユーザーの大半は子どもたちとされている。
今も怒る中国
2019-20年秋冬ミラノ・ファッション・ウィークで行われたドルチェ&ガッバーナのショーに、中国をはじめアジアからのメディアの姿はなかった。サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙によれば、同ショーでのアジア人モデルの数も例年よりずっと少なかったという。同ブランドに対しては中国の愛国主義者たちがオンラインキャンペーンを広く展開。依然、中国内ではイメージが悪いままであることを物語る。昨年11月には民衆の怒りを買い、上海でのファッションショーが中止に追い込まれた。
メディアモンクス、WPPを愚弄?
デジタル制作会社メディアモンクスは新たにロンドン支社を構えるにあたり、何とWPP傘下のAKQAの向かい側をロケーションとして選んだ。昨年メディアモンクはWPPからの買収提案を断り、マーティン・ソレル卿が設立したS4キャピタルの買収を受け入れている。新たなオフィスは約450平方メートルで25人が勤務。今年中に3割ほどスタッフを増やす予定という。マネージングディレクターのマーティン・ヴァーダルト氏は、場所の選定理由について真意を明かさない。「便利な地域で雰囲気が良く、編集やブレインストーム、社交用のスペースもある。ジンとトニックを並べられる棚まであるんですよ」とだけコメントしている。
ファーウェイを推すプロパガンダ動画
子どもたちが「美しきファーウェイ(華為技術)」と歌う動画(原題「華為美」)が今週、中国で大きな話題となった。覚えやすいメロディーに合わせて愛らしい子どもたちが歌い、曲の中盤にはラップ調の部分もある。
作詞は李幼容(中国人民解放軍)と臧思佳(公安部)、作曲は鄭冷橫。歌詞には「世界で最も美しい携帯電話とは? それはファーウェイ製の電話だと誰もが言う。電池は長持ちするし見た目がよく、貴重な中国のチップも使われている!」とあり、愛国心に燃えたブランディングだ。これを超えるものには、なかなかお目にかかれないだろう。
ファーウェイ側は、この動画の制作への関与を否定。中国企業の国際的なスキャンダルが相次ぐ中、中国政府はファーウェイを外交面で力強くサポートしている。今回の動画は、厳密には「ブランディング」とは言えないかもしれないが、無視できない作品ではある。
この作品は、数年前に日立が公開したグループビジョンの動画を思い起こさせる。だが今回の作品はそれを凌駕する出来だ。
WPP、ウォルマートの人材部門トップをウォルマートを招き入れる
小売大手ウォルマートで最高人材活用責任者(CPO)を務めたジャッキー・カーニー氏が、6月からWPPに移り、同じポジションに就く。同氏は2015年にウォルマートに移る前は、アクセンチュアに22年在籍。WPPのマーク・リードCEOによると、カーニー氏は「変革の遂行」の実績があり、「インクルーシブ(受容的)な職場環境を熱心に提唱してきた」人物だという。
またウォルマートは、アマゾンに挑むべく広告サービスを提供すると報じられている。オンラインならびに実店舗での広告を社内チームで一元管理して販売し、ユニリーバやP&Gなどサプライヤーに提供。同社が所有する膨大な消費者データを活用し、収益化を目指していく。
マッキンゼーがロゴ刷新…だが旧ロゴと酷似している
経営コンサルティング会社のマッキンゼーは時折、あまり成果の出ないものに多くの時間とお金を費やしている、そして専門用語を羅列してそれを正当化していると批判されることがある。デザインコンサルティング会社「ウルフ・オリンズ(Wolff Olins)」が手掛けた今回のロゴ変更にも、同様の批判が集まりそうだ。
英グラフィックデザイン会社によるデザインのレビューサイトでは、旧ロゴも「十分に端正なたたずまい」ではあるものの、新ロゴには「個性やユニークさが付加されている」と評価。「コントラストがよく調整されており、(セリフ体は小さくすると潰れやすいが)きれいに縮小できる」とも称賛している。まぁ、確かにとても素晴らしいロゴではある。だが「デザイナーはこの仕事のフィーの根拠を、どのように示したのだろうか?」と、デザイナー以外の人間には謎に思えることもあるのだ。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉、田崎亮子)