Ryoko Tasaki
2024年5月17日

世界マーケティング短信:WPPのCEOがディープフェイクの標的に

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:WPPのCEOがディープフェイクの標的に

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

CEOの偽アカウントを作成、音声クローンでオンライン会議

WPPのマーク・リードCEOが、ディープフェイクを用いた詐欺未遂事件に巻き込まれた。ガーディアン(The Guardian)が報じたところによると、詐欺師は公開されているリード氏の写真を使ってワッツアップ(WhatsApp)の偽アカウントを作成し、幹部とのオンライン会議を設定。金銭や個人情報の要求が目的で、AIによる音声クローンやユーチューブの動画が使われた。会議に参加したエージェンシーリーダーに、リード氏になりすました詐欺師がチャット画面で新規事業の立ち上げを依頼したが、試みは失敗に終わった。

リード氏は社内のリーダー層に向けて事件の詳細を伝えるメールを送り、「私たちは皆、電子メールを越えたバーチャル会議やAI、ディープフェイクの悪用に警戒する必要があります」と述べた。「アカウントに私の写真が載っていても、それが私であるとは限りません」。WPPの広報担当も「関係幹部を含む職員が警戒したおかげで、事件を防ぐことができました」とコメントしている。

マイナス成長率の電通グループ、下期は回復の見込み

電通グループが第1四半期の決算を発表し、売上総利益は2,864億円、オーガニック成長率は-3.7%だった。

同社が力を入れるカスタマートランスフォーメーション&テクノロジー(CT&T)領域の売上総利益構成比は29.6%で、前年同期(34.5%)から5ポイント低下。景況感の悪化に伴う減速が続いているが、同社としては構成比を50%へと引き上げていきたい考えだ。

国内事業(売上総利益に占める構成比は43%)は競合勝率の向上と良好なマクロ環境に伴う顧客支出の増加により、オーガニック成長率は+2.4%、売上総利益は1,230億円と第1四半期としては過去最高を記録し、通期で引き続き堅調な業績を見込む。米州(構成比28%)は-6.6%、欧州・中東・アフリカ(同20%)は-9.4%、アジア太平洋(同9%)は-7.1%だった。

なお昨年の失注による影響が一巡したことや、新規案件受注の効果から、下期は回復を見込んでいる。

アップル、次期OSChatGPT搭載で交渉か 

アップルが6月の年次開発者会議に先立ち、次期OSである「iOS18」にオープンAI社(OpenAI)のChatGPTを搭載するため、合意条件を最終調整しているとブルームバーグ(Bloomberg)が報じた。

アップルとオープンAI社は今年初めから協議を始め、4月に対話が再開したと報じられた。またグーグルともAIチャットボット「Gemini」の搭載について交渉していると報じられたが、まだ合意には至っていない。

ティム・クックCEOは今月初めの決算説明会で「AIが持つ変革の力や可能性を信じている」と述べ、巨額を投資してきたと説明。これらを近いうちにお披露目する予定だと語っていた。

ハッピーセットから笑顔が消えた 英マクドナルド

マクドナルドは英国でメンタルヘルス啓発週間(今年は5月13~19日)に合わせ、ハッピーセットの箱から笑顔を削除した。企画・制作はレオ・バーネットUKとReady10。BBCの慈善団体「BBC Children in Need」とも提携している。

英国の子どもの約半数(48%)が、たとえ実際には幸せでなくても常に幸せでいなければならないと感じているという。この調査を受け、いつも幸せである必要はないというメッセージを訴求するため限定版のハッピーセットの箱を250万個用意し、店舗で提供した。さまざまな感情を示すステッカーも一緒に配られ、好きな表情の箱を作ることができる。

マクドナルドの消費者コミュニケーション&パートナーシップ責任者を務めるルイーズ・ペイジ氏は「家族のメンタルヘルスについて、率直な会話を促すことが重要だと理解しています。ハッピーミールの箱を変えることで、より多くの家族が子どもの感情やウェルビーイングに関して、前向きな会話を始めてもらえるよう願っています」と語った。

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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