Byravee Iyer
2016年7月08日

今、最もホットな12の新グローバル市場とその攻略法

オグルヴィ・アンド・メイザーが発表したレポート「VELOCITY 12(V12)」では、今後10年で12の市場において、10億人の中間層が台頭し、世界の経済成長の形を作り変えるとされている。

今、最もホットな12の新グローバル市場とその攻略法

インド、インドネシア、パキスタン、バングラデシュ、中国、ミャンマー、ベトナム、フィリピンなどの12の市場(V12市場)では、今後10年間で10億人規模の中流層が生まれる。これらの市場では、中流層がマイノリティーからマジョリティーに転じる時期が訪れると、オグルヴィ・アンド・メイザーの最新レポートは指摘する。

V12市場の中には他に、メキシコ、ブラジル、ナイジェリア、エジプトといった国々も含まれている。

レポートによると、新しい世代の消費者は経済的に重要な役割を担うだけではない。社会変革を進め、政治への影響力を持ち、消費者として力を持つようになると考えられる。

このような変化は、台頭する消費者に対してブランドがどのように売り込み、コミュニケーションを図るべきかに重大な影響を及ぼすと、オグルヴィ・アンド・メイザー・アジアパシフィックの共同CEO、ケント・ワータイム氏は話す。主なポイントを、以下にまとめた。

マーケターによるローカルインサイトの習得は必須:
旧来の欧米諸国の中流層と比較すると、V12市場の中流層は民族、言語、文化、宗教の多様性に富み、複雑な社会的背景を持つ。

オムニチャネル戦略が新しいスタンダード:
V12市場の中流層は、グローバルな商業・影響力・社会交流の舞台であるネットワークにつながり、恩恵を享受している。つまり、成長や変化が速い市場では多くの消費者が、高所得な市場の消費者と同じ情報や選択肢にアクセスできる。そのためマーケターは、かつての「新興市場」で展開されたものよりも先進的なオムニチャネル戦略やソーシャル戦略、メッセージ発信を行い、これらV12市場にアプローチしなければならない。

コミュニケーション戦略の域を越えることが必要:
今後10年の中流層は、旧来の中流層と比べて自らの選択肢について把握し、好みや意見を広く訴求する手段を持つだろう。マーケターに求められるのは、影響力をより発揮できる戦略を持つことだ。ここで言う戦略は、単なるコミュニケーション戦略の域に止まらない。

変化の原動力は女性:
女性は文化や宗教、デモグラフィー属性を越えて強い購買力を持ち、社会の変化を推進し、起業家としての役割も担うようになる。同調査によると、パキスタンの94%を筆頭に、バングラデシュで92%、インドで91%、V12市場全体では85%の女性が、以前よりもキャリアに関する機会が増えていると感じている。またV12市場の女性の83%が、起業のチャンスが増えたと答えた。

イスラム教徒は重要な消費者層:
V12での主要な消費者となるのは、未来志向のイスラム教徒だ。しかしV12市場全体の回答者のうちイスラム教徒の約6割が、グローバルブランドはイスラム教徒のニーズを理解していない、あるいは対応していないと回答した。ブランドとイスラム教徒の間には、まだ温度差がある。

かつてないほど世界とつながった消費者層:
V12市場の多くを占めるのは、最近インターネットにつながった消費者だ。V12市場の約4分の3が、以前よりも世界との結びつきが強まったと回答した。

急速な都市化が創意を駆り立てる:
V12市場における都市は、世界のどの地域よりも速いスピードで都市化が進み、いくつもの都市がメガシティーとなり得ると予想される。また、メガシティーがつながり、巨大なバーチャル商圏「アーバンゲア」を作り出す。そして創意や起業精神、投資を促すのは、国ではなく都市になる。

ローカルブランドがグローバルブランドを前進させる:
回答者の約3人に2人が、ローカルブランドとグローバルブランドの両方を購入しているが、いくつかの市場ではローカルブランドの方が圧倒的に強い。各市場のローカルブランドは、地元での追い風を受けながらますます洗練され、ニーズに素早く対応するだろう。多国籍ブランドは今後ますます厳しい競争に駆り立てられると考えられる。

レポートの調査手法
オグルヴィのV12ランキングは、購買力平価(PPP)を用い、中流層の成長を資産ではなく収入で測定している(購買力平価は、異なる通貨による購買力を均一化する手法で、国際通貨基金や国連、世界銀行などで広く認められている)。また、成長と変化の「スピード(velocity)」に着目して市場を評価している点が、このレポートの大きな特徴である。グローバルな成長プランの策定にあたって、この点を過小評価する企業もあるが、スピードの重要性は増しているとオグルヴィでは考えている。

(文:バイラヴィー・アイヤー 翻訳:高野みどり 編集:田崎亮子)
 

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