今月初め、エデルマン傘下のUEGが日本支社を発足させた。スポーツやエンターテインメント、コンテンツマーケティングを専門とする同社は、今後の事業に楽観的な見通しを抱く。だが、他の国際的エージェンシーと同じ難題を抱えていることも事実。それは、2020年東京五輪をはじめとする一大イベントを仕切る電通に対抗していかねばならぬことだ。CampaignはUEGのマネージングディレクターを務める文原徹氏に、今後どのように市場で地盤を築いていくのかを尋ねた。(以下、同氏の答えは編集・要約した)
現在はどのようなブランドと協働していますか? また、日本やアジア市場における最大の可能性は何でしょう?
来年にはラグビーW杯、その後には東京五輪、そして再来年には「ワールドマスターズゲームズ2021関西」が日本で開催されます。スポンサーシップを通して、各企業の名を国内や世界に知らしめるサポートができる大きなチャンスです。現在主要なオリンピックスポンサー企業と協働していますが、今ここで名前を挙げることはできません。
東京は我々にとって初のアジア支社であり、まず日本市場で基盤を築いた上で、その実績を武器に中国や香港、シンガポール、台湾といった国々に進出していく予定です。
エデルマンとはどのように協業していますか?
非常に密な協業を行っています。我々はフリーランスの人々とも仕事ができる。エデルマンは世界最大のPRエージェンシーですが、スポーツやエンターテインメントに関する専門知識においては我々の方が上なので、エデルマンを補完することができます。
現在はどのような人材を求めていますか?
スポーツPRやエンターテインメントビジネスの分野で豊富な経験や知識を持つ人々です。バイリンガルである必要もあるので、見つけるのは容易ではありません。
日本におけるスポーツスポンサーシップでは、どのような分野に可能性を見出していますか?
大きな国際的イベントは巨大広告代理店が独占し、オリンピックのスポンサーシップは電通のような企業がセールスを行っています。しかしブランドは彼らとどう活動していいのか、また買い取った権利をどのように活用していいのか時に迷うことがある。我々はアクティベーションや、世界中にスポンサーシップを広める点でサポートができると考えています。巨大な権利を最大限に活用する上で、ブランドができることはたくさんあります。
なぜブランドは、自分たちの買い取った権利を十分に理解できないのでしょう?
いくつかの日本企業は東京に本社を置いているので、東京五輪では東京で活動をしなければならないと考えているからでしょう。スポンサーシップを買うことは、時に政治やプライドを超越した意義がある。ですが多くの企業には、その権利をどう活用していいか具体策を出せる五輪の専門家が社内にいません。
スポーツ界での電通の存在は、事業を行う上でどのような障害になっていますか?
確かに参入を難しくしているかもしれません。我々の米国での実績を訴えても、ブランドは「日本で何ができるのか」と問いかけてきます。それでも今はいくつかのRFP(提案依頼書)を依頼されているので、そこからスタートできるでしょう。実際にプロジェクトが動き出せば、優れたストーリーを提供することで信頼を勝ち取ることができるはずです。
市場はほぼ独占状態です。どのようなニッチ市場を狙いますか?
やや曖昧かもしれませんが、我々は電通とはまったく異なる「クール」な手法でエグゼキューションができると信じています。重要なのはカルチャーとの関わりです。クールなスタッフ、クールなプロパティー、クールなプラットフォームを活用できることが、我々と大手代理店との違いです。
重要な成長分野はどこにあると見ていますか?
インフルエンサーマーケティングは米国における我々の得意分野で、現在日本市場への適用に懸命に取り組んでいます。インフルエンサーマーケティングは日本も進んでいますが、米国のレベルではありません。ですから、インフルエンサーを探し、交渉し、アクティベーションを実現することを我々の強みにしたいと考えています。これまで映画製作会社とも話し合いを続けてきました。米国では多くの映画製作会社とつながりがあり、ブランドの統合やプロダクトプレイスメント、映画キャンペーンを行っています。ゆえに、日本でも同じことをやっていきたい。ブランドと映画製作会社との架け橋になれれば、エージェンシーとしてユニークな仕事ができるでしょう。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)