Matthew Keegan
1 日前

広告業界は「AI社長」に適応できるか

企業の中で急速に存在感を高めるAI。AIボットをCEOにする企業も現れる中、広告業界はどのようにAIのリーダーシップを受け入れられるのか。AIの管理・責任能力を考える。

人型AIロボットとして世界で初めてCEOとなった「ミカ」
人型AIロボットとして世界で初めてCEOとなった「ミカ」

* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

もしAIボットから注文が届いたら、あなたはどう感じるだろうか。また、AIがあなたの業績評価をするとしたら……。あるいは、AIが会社の重要な意思決定を担うとしたら、それに従うだろうか。

AIが急速なスピードで浸透するなか、こうした疑問は急速に現実味を帯びつつある。AIがあなたの仕事をこなせるのであれば、CEOの代わりも務まるかもしれない。いずれにせよ、AIは冷酷なまでに野心的で、すでに経営幹部の椅子を狙っているようにもみえる。すでにそれが現実になったケースもあるのだ。

一昨年、中国のゲーム会社ネットドラゴンは人型AIロボット「タン・ユー(Tang Yu)」をCEOに任命した。これは副社長からの昇進だ。「ビッグデータとAIを統合することで、3D表現の正確性と双方向性が強化された。タン・ユーは有能な管理職としての資格を十分に有している」とネットドラゴンのスポークスパーソン。

AIのCEOは実際に何をするのだろう。ネットドラゴンによると、タン・ユーは先頃「中国年間最優秀バーチャル社員」の称号を獲得。文書の承認や高度なプロジェクトのトラッキング、従業員の業績評価、会社のシステムやカルチャーに関する包括的トレーニングなど、様々な案件を処理しているという。

 社員と会話をするネットドラゴンのCEO、タン・ユー
 

タン・ユーはネットドラゴンの効率・生産性を大幅に向上させた。これまで30万件を超える「承認」、50万件に及ぶ「注意喚起」と誤りの「指摘」、4万人以上の社員の成長を促す「助言」を行ったという。

AIのリーダーシップを信用しているのはネットドラゴンだけではない。昨年、コロンビアのラム酒ブランド「ディクタドール」は世界初の人型AIロボット「ミカ」をCEOに任命し、注目を集めた。

「当初は実験的な試みでした」と話すのは、同社デジタルマーケティングマネージャー、ナタリー・グジェブ氏。「ミカは初め、弊社のスポークスマンを務めていた。理由は、オーナーがインタビュー嫌いでメディアに出たがらなかったからです。しかし、ミカはすぐにその能力を証明し、より大きな責任を担うようになりました」

今ではミカはデータインサイトと戦略を提供し、同社で極めて重要な役割を果たす。実験的活用から始まり、ビジネス戦略の核心を担うまでになったミカ。同社はAIリーダーシップの長期的継続を公言している。

「AIのリーダーシップには独自の利点がある。個人的なバイアスを排除し、企業の戦略目標に即したデータ主導の意思決定を実行できます」とグジェブ氏。「AIは膨大なデータを迅速かつ正確に処理する。人間が見落としてしまうようなパターンやインサイトを特定できるので、より戦略的・客観的な決定ができます」

広告業界はAIリーダーを受け入れられるか

ピュブリシスのアーサー・サドーンCEOやWPPのマーク・リードCEOがすぐにAIボットに取って代わられることはないだろうが、すでにAIへのシフトを加速させているエージェンシーもある。中国最大のマーケティングエージェンシーグループ「ブルーフォーカス」は、人間に委託する外部委託をAIに切り替えた

「いま人間が担っているデジタルマーケティング業務は将来、半分がなくなる。AIやデジタル社員、『スーパーアシスタント』が取って代わるでしょう」と話すのは同社のパン・フェイCEO。「今後はマシンを超えるクリエイティビティーとイマジネーションを持つ、強い競争力を持つ人々だけがは生き残れる」

この方程式に、リーダーたちはどう当てはまるのだろう。彼らはマシンを凌駕できるのだろうか。あるいは、AIリーダーは社員を鼓舞できるのか……。

「テクノロジーは人に奉仕すべきであって、その逆はあり得ない」と話すのは、モンクスのグレーターチャイナ担当マネージングディレクター、ロジェ・ビッカー氏。「AIはリーダーの効率性を高められる。しかし、人間のリーダーから引き継げないものがたくさんあります。私はまだ、AIが部下たちとビールを飲んでいるところを見たことがない」
 

AIはデータに基づくインサイトや最適化の提案に関しては強力なツールとなり得る。しかし、リーダーシップに関してはAIが学んでいない要素が多々あり、これからも学ぶことはないだろう。

「社員を指導し、鼓舞し、モチベーションを高めるには感情的な知性や共感力、大局的な理解が必要」と話すのは電通インドネシアのCEO、エルヴィラ・ジャクブ氏。「特にエージェンシーの世界で求められるのは、真の人間的リーダーシップです。それこそがクリエイティビティーを育み、強力なチームを編成できる」

さらには信頼性という、決して小さくはない課題がある。企業はAIにどれだけの責任を委ねる心構えがあるのか。 また、人間はAIの指示を快く受け入れるのか。あるいは、AIに重要な意思決定を任せられるのか。

「自分の業務に役立つのなら、AIの指示を受けることに問題はないと思います」とビッカー氏。「我々はグーグルマップというボットを、すでに何年も信頼しているのがその証」

また、売上に関わる意思決定では、「AIは営業・財務担当チームに多くのインサイトをもたらす。人間はエクセルシートを作成する代わりに、より効果的な意思決定に集中できます」とビッカー氏。

ハイブリッドな労働力

マーケティング業界ではすでに、AIボットと人をミックスした新しいタイプのハイブリッドな労働力を導入する動きが始まっている。

「人のエキスパートとAI、両方の強みを生かして共生関係を築くのが未来の労働力でしょう」と話すのは、ウェーバー・シャンドウィック・フィーチャーズの会長兼チーフイノベーションオフィサーのクリス・ペリー氏。「AIを理論的に理解し、実践的に応用していく。自分たちがスキルアップしながら、クライアントもスキルアップできるようサポートしていくのが弊社の目標です」

あらゆる業界がすぐにAIのリーダーシップやハイブリッドな労働力に対応できるわけではないが、AIを有効活用することで多くの業界が利を得られることは間違いない。

「AIがデータに基づいたインサイトを提供し、単純労働を担うことで、人間の能力を向上させられる。人間はクリエイティビティーや感情的な知性、複雑な問題解決に集中することができます」とグジェブ氏。「このハイブリッドなアプローチが効率を上げるだけでなく、社員のあらゆる面での幸福を高めることに弊社は気付きました」

AIのリーダーシップがいかに優れているかを学んだディクタドールは、その役割をさらに増やし、業務の質と優位性を高めていく計画だ。

究極的には人間とAIの共生関係を育んでいくことが、両者の可能性を最大限に引き出す鍵となろう。「こうしたハイブリッドモデルは今後ますます普及し、様々な業界のリーダーシップと経営をAIが変革できることを証明していくでしょう」(グジェブ氏)

 

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