この数年、日本企業はアジア諸国でのマーケティング活動に一段と本腰を入れるようになり、ある程度の成功を収めた。「ある程度」と表現したのは、各企業が直面する課題と、グローバルなアプローチをとるために構造改革の必要性が浮かび上がったからだ。
それでも、大局的に見れば日本ブランドは順調と言える。アジアの消費者たちが日本の各主要ブランドをどのように受け止めているかを示す「アジアのトップ1000ブランド」で、100位以内の約4分の1を占めたのは日本ブランドだ。トップ10では、キヤノンが外れたものの、ソニーとパナソニックは過去2年間、3位と5位を堅持している。
それと同時に多くのブランドが若干ランクを下げ、これまでの実績に安閑としていられなくなったのも事実。最もランクを下げたのはニコンで、24位から91位に。100位以内にランクインしたのはシャープ、ニンテンドーWii、セブン-イレブン、花王などだった(以下の表参照)。
「アジア・トップ100」に入った日本ブランド
ブランド | 2017年(位) | 2016年(位) |
ソニー | 3 | 3 |
パナソニック | 5 | 5 |
キヤノン | 12 | 8 |
東芝 | 18 | 17 |
ソニー PS | 23 | 19 |
明治 | 21 | 18 |
シャープ | 25 | 29 |
ホンダ | 32 | 28 |
日立 | 34 | 31 |
資生堂 | 35 | 32 |
ヤマハ | 44 | 44 |
ニンテンドー Wii | 45 | 48 |
三菱自動車 | 52 | 50 |
セブン-イレブン | 55 | 56 |
ブリヂストン | 64 | 57 |
エプソン | 78 | 65 |
トヨタ自動車 | 70 | 68 |
日清 | 81 | 76 |
SK-II | 82 | 80 |
花王 | 89 | 101 |
ニコン | 91 | 24 |
森永製菓 | 95 | 104 |
世界最大の自動車メーカーであるトヨタは、BMWやメルセデスを抜いて自動車部門で首位に。ホンダや日産もトップ10入りした。だが、全ブランドの総合ランキングではこれら3ブランドの間で大きなねじれが生じ、最もランクが上だったのはホンダで32位。トヨタは70位で、日産ははるか下位の464位だった。
家電部門では、昨今の一連のスキャンダルにもかかわらずサムスンが首位を堅持。ソニーとパナソニックが2位と3位で肉薄し、シャープや東芝、日立もトップ10入りを果たした。総合ランキングではサムスンとアップルが首位を争い、サムスンは韓国、シンガポール、豪州、インド、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンで1位を獲得。アップルは中国、香港、そして長らくソニーがトップだった台湾で1位となった。
日本勢が名をはせるコンビニエンスストアの部門では、セブン-イレブンとファミリーマートが予想通り上位に。総合ランキングでもそれぞれ55位と176位で、前年よりもややランクを上げた。
日本の航空会社も若干の伸びを示し、総合ランキングで日本航空は前年の270位から258位、全日空は同385位から363位に。航空会社部門ではそれぞれ4位と6位になった。1位はシンガポール航空で、エミレーツ航空とキャセイパシフィック航空がそれに続いた。
ランキング調査方法
「アジアのトップ1000ブランド」は、Campaign Asia-Pacificとニールセンがインターネットで共同調査を行い、そのデータ結果を集計したもの。対象となった市場は中国、インド、日本、インドネシア、香港、シンガポール、台湾、マレーシア、韓国、タイ、ベトナム、オーストラリア、フィリピン。調査対象者は中国が1200人、インド800人で、それ以外の市場は400人。
対象者は市場の人口比に合わせ、年齢・性別・毎月の世帯所得といった属性から抽出。14の主要なカテゴリーと73のサブカテゴリーで、次の2つの質問を行った。
1. 次のカテゴリーの中で、最も優れたブランドはどれだと思いますか? 「優れた」とは、ご自身が最も信頼できるブランド、あるいは最も評判が良いと思われるブランドを意味します。
2. 同じカテゴリーの中で、2番目に優れたブランドはどれだと思いますか?
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)