東京 – 日本の上位2ブランドがその地位を維持したものの、それ以外では大きな動きがあったことが、今年の「アジアのトップ1000ブランド」ランキングで明らかとなった。
Campaign Asia-Pacificはニールセンと、アジア太平洋地域の13市場におけるブランドの消費者意識を毎年調査している(調査方法については下記を参照)。
日本のトップは昨年に引き続きパナソニックで、第2位はソニーだった。パナソニックは2014年に3位から2位に浮上し、昨年ついにソニーからトップの座を奪った。どちらのブランドも、マーケティングにおいて特筆に価するようなことを行ったわけではないが、大手企業の中でも信頼と評価を保ち続けたブランドだ。ただしアップルが僅差でこれに続き、3位まで浮上してきている。
上位10ブランド | |||
日本 | アジア太平洋 | ||
順位 | 広告費 (米ドル) | 順位 | 広告費 (米ドル) |
1.パナソニック (=) | 122,308,867 | 5 (=) | 323,492,375 |
2.ソニー (=) | 233,257,945 | 3 (-1) | 396,319,775 |
3.アップル (+1) | 129,809,286 | 2 (+2) | 666,437,711 |
4.明治 (-1) | 139,185,492 | 18 (+1) | 148,378,606 |
5.資生堂 (+3) | 175,062,131 | 32 (+4) | 229,376,551 |
6.森永 (=) | 不明 | 104 (+22) | 不明 |
7.キヤノン (+4) | 50,973,266 | 8 (=) | 160,029,922 |
8.東芝 (-3) | 16,835,997 | 17 (-5) | 36,723,875 |
9.ロッテ (+1) | 56,344,652 | 16 (+1) | 214,862,048 |
10.シャネル (+3) | 40,415,978 | 9 (=) | 159,890,188 |
出所:ニールセン |
パナソニックとソニーは、アジア太平洋地域全体においても強いブランドイメージを保っている。ソニーはアップルに抜かれ、順位を1つ落とし3位となったが、5位のパナソニックと比べると安定感がある。地域のトップ10位に入っている日本ブランドは他に、8位のキヤノンがある。サムソンは、5年連続アジア太平洋地域全体のトップに輝いた。
日本のトップ10に話を戻すと、資生堂が順位を3つ上げて5位に浮上した。144年の歴史を誇るこの老舗ブランドは、ネット動画「High School Girl?」など、ブランディングにおける冒険的な試みが評価されたと考えられる。資生堂の復活には、近年社長に就任した魚谷雅彦氏の力も大きく寄与している。日本コカ・コーラの元副社長という経歴を持つ魚谷氏は、「良いマーケティング」の価値を深く理解しているようだ。
シャープと東芝は、それぞれ順位を落としている。シャープは7位から16位に転落。一方、東芝は3つ順位を落としているが、なんとか上位10位内に残った。東芝の不適切会計問題が一般消費者のブランド意識に影響を与えたとは考えづらいが、両社ともブランドの構築と維持をあまり重視してこなかったのではと思われる。
三菱自動車が71位から38位へと大躍進したのには驚かされた。何が幸運をもたらしたのか定かではないが、燃費偽装問題を考慮すると、この運も長くは続かないだろう。三菱自動車は三菱グループの中では小規模だが、最も目立つ企業であり、グループ内の他ブランドの評判に傷をつけるリスクを抱えている。
高級自動車の分野でも、動きがあった。メルセデスベンツは社長が乗る古風な車から、若者にも選ばれるスタイリッシュな車へと大胆なイメージチェンジを図ったことが奏功し、BMWを引き離した。
今年、BMWは172位から212位に転落しており、一方でメルセデスベンツは210位から200位へと順位を上げて逆転している。
他に苦戦を強いられているのは、78位から107位に転落したマクドナルドだ。大手ハンバーガーチェーンのマクドナルドは、食の安全の信頼回復に苦戦しており、ヘルシーで高品質なファーストフード店への消費者の流出が止まらない。
小売業界では、昨年ランキングに初登場したアマゾンが今年も好調な売り上げを維持している。その好調ぶりは、競合する日本企業の楽天より20位も高い、22位という順位にも反映されている。
IT分野では、ヤフーがグーグルの1つ下の25位に転落したが、日本においては引き続き強いブランド力と収益性を維持している。これは他の地域とは対照的で、ヤフーの日本法人はグループ全体の価値を上げる重要な存在と見なされている。
ツイッターは2つ順位を上げ79位となった一方で、フェイスブックは79位から92位へ大きく転落した。フェイスブックはパーソナルでもビジネスでも人気だが、その勢いには衰えが見られる。また、ラインは日本で167位につけているが、2015年から順位を7つ下げた。またアジア太平洋地域では順位を31位下げ、245位にとどまった。しかし、ラインは新規上場が視野に入っている他、今年夏のLINEモバイルの開始のような先進的な取り組みが奏功し、順位が再び上昇することが見込まれる。
旅行・レジャー分野の注目企業として、Airbnb(326位)とBooking.com(314位)の2社が新たにランクインした。両社とも業界内の既存企業という障壁が立ちはだかるが、消費者から一定の評価を得ていることがランキングから分かる。この2社や、他の「破壊的」な企業の健闘を、今後12カ月間で追い続けるのも興味深いだろう。
ランキングの調査方法
「アジアのトップ1000ブランド」は、Campaign Asia-Pacificとニールセンがインターネット調査で得たデータの集計結果である。中国、インド、日本、インドネシア、香港、シンガポール、台湾、マレーシア、韓国、タイ、ベトナム、オーストラリア、フィリピンの市場を網羅している。調査対象者は各市場から400人だが、中国は1,200人、インドは800人となっている。
市場での人口の比率に合わせるため、ターゲットを年齢、性別、毎月の世帯所得といった属性で抽出して調査した。ランキングは14の主要カテゴリーと73のサブカテゴリーに対して、次の2つの質問を行った。
1. 次のカテゴリーを見て、最も良いブランドといえば何が思い浮かびますか?ここで「最も良い」とは、ご自身が最も信頼できるブランド、あるいは評判が最も良いと思われるブランドを指します。
2. そのカテゴリーの中で、次に良いブランドといえば何だと思いますか?
(編集:田崎亮子)