Annabelle Black
2 日前

燃え尽き症候群に、あなたができること

広告業界で15年以上の経験を持つアナベル・ブラック氏は、静かなる流行病であるバーンアウト(燃え尽き症候群)を明るみに出し、その対処法を早急に転換する必要性を訴える。そして従業員とリーダーの両方に、手遅れになる前に行動を起こすよう促す。

燃え尽き症候群に、あなたができること

* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

編集部注:この記事はメンタルヘルスと自殺について言及しています。

私が初めて極度の疲労を理由に退職してから2年を迎えるにあたり、バーンアウト(燃え尽き症候群)がいかに心身を衰弱させるか、いかに自殺願望につながりやすいか、そして再び元の状態に戻るのがいかに難しいかについてリンクトイン(LinkedIn)に投稿した。

以来、業界内のあらゆる階層の人々から何百ものコメントやメッセージ、電子メール、電話、ビデオ通話を受け、バーンアウトの悲惨な体験を語ってくれた。

悲惨な体験談の数々から、一つの共通したテーマが浮かび上がった。それは、誰もがそのことを公に話すことを恐れているということだ。仕事ができないと思われたらどうしよう? もし今の雇用主に知られたらどうしよう? もし将来の雇用主がそれを読んで、採用してもらえなかったらどうしよう?

英団体「NABS」がパンデミック前に広告業界に従事する576人を対象に実施した調査では63%が、仕事がウェルビーイングに悪影響を及ぼしているためこの業界を辞めたいと考えたことがあると回答しており、英国の広告・メディア業界が人材のバーンアウトのリスクにさらされていることが明らかになった。調査対象者の77%が40歳未満で、業界はこの世代を失う可能性があるのだ。

この結果には納得がいく。国として、私たちは次から次へと危機を乗り越えてきた。ブレグジット(英国の欧州連合離脱)の次にはCOVID-19、そしてその後は生活費が高騰し、この国でただ生きていくための物価はかつてないほど高くなった。職場からはより少ない報酬でより多くのものを要求され、私たちはただ耐えるか、全てを失うリスクを負うかしかない。恐ろしいことだ。

納品や仕事のプレッシャーは徐々に増え、積み重なっていく。しかし絶対に失敗は許されない……。これらは私がキャリアを通じて耳にし、経験してきた共通のテーマだ。

メディアの予約は済んでいるため納品しなくてはならず、締め切りは絶対に厳守だ。シニアリーダーの承諾を得なければならない。スケジュールをねじ込まなくては。フィードバックを得なくては。クライアントの満足度が昨年より下がっているので、次の仕事では印象付ける必要がある。週に4日は出勤し、週末も働かなくては。次のブリーフをクライアントからもらわなくては。ブランド担当代理店に新しい会社が加わったので、自分たちの縄張りを守らなくては。このピッチにも、次のピッチにも勝たなければならない。子どもたちの就寝時間にまた間に合わない。プレゼン用のスライドを仕上げなければ。今夜は遅くまで残業できるだろうか――。

本当に疲労困憊してしまう。

自殺防止活動を行う英国の慈善団体「サマリタンズ(Samaritans)」によると、2023年にイングランドだけで20~64歳の女性1,156人と、20~64歳の男性3,348人が自殺で亡くなっている。

さらに心配なことに、この数字には自殺未遂が含まれていない。2023年9月の『フロンティアズ・イン・パブリック・ヘルス(Frontiers in Public Health)』に掲載された査読付き論文は、19~65歳の12,083人を対象にバーンアウトと自殺念慮の関連を調査し、「うつ病の状態にかかわらず、従業員の極度の疲労は自殺念慮のリスクと関連している」と結論付けている。

さらに論文の結論部分で「疲弊した従業員、特に仕事のリソースが乏しい従業員は『リスクのある』グループとして認識されるべきである」と述べている。

仕事をこなすためのリソースが無いと感じたことのある人はいるだろうか?

それでも一生懸命に、仕事をこなさねばならない。自分がその仕事に取り組まなければ、一体誰がするというのか?

問題なのは、自分自身に嘘を信じ込ませてしまうことだ。その嘘とは、自分がバーンアウトしたことを受け入れて他人にもそれを話すことは、失敗を認めてしまうこと、というものだ。まるで「私は仕事が下手だ」と言っているように感じられるだろうが、実際にはそうではない。悪いのは仕事の方だ。非常に控えめに言って「成功に向けた準備が整えられていなかった」のだ。

成功に向けた準備が整えられていなかったのは、以下のような点だ。

  • 誰もが多過ぎる量の仕事を与えられており、それを分かってもいる。売上トップになるためにスタッフを激務に追い込むというのは非常に不快なもの。それにもかかわらず、このありさまだ。
  • 「金曜日の午後7時以降にメールを送信する」とか「日曜の夜に恐ろしい内容のメールを送信する」といった悪い手本を経営幹部たちが示す中で、私たちはどのようにスイッチをオフにすればよいのだろうか?
  • 親として子どもたちと過ごす時間を犠牲にして、広告を作ることを期待されている。
  • 女性として、「女性は全てを手に入れることができる」という幻想を抱かされる。だが助けやお金が無くては、何かを犠牲にしなくては、広告の世界では不可能だ。
  • 誰がいつ、どのように勤怠を管理しているのか? もし従業員が週50~60時間も働いていると記録しているのに、それを指摘されないのだとしたら、実際に責任を負うのは誰なのか? タイムシートはチェックされていないのか、あるいはチェック後に無視されているのだろうか?
画像は、私が金曜夜7時に緊急の案件でクライアントと電話していた際に、当時5歳だった娘が私のノートに描いたもの。娘は、学校での長い一日を終えて放課後のクラブ活動に参加し、午後7時半に就寝するまでのわずかな時間に、私と触れ合いたかっただけなのだ。

これは、さまざまな側面を持つ問題だ。

そして、いくら人々がリンクトインに記事を書いたとしても、簡単に解決する問題ではない。また、どのような解決策を適用できるかは、どのような仕事をしているかによって異なる。

もしあなたが従業員でバーンアウトの症状が現れているのならば、いくつか選択肢があるということを知っておいてほしい。窮地に追い込まれているわけではなく、救いの手は差し伸べられている。どうか、愛する人やかかりつけ医、セラピスト、コーチ、上司、人事部、支援団体などに相談してほしい。何千人もの人がバーンアウトを経験しており、今苦しんでいる人もいる。あなたは一人ではない。バーンアウトの兆候が現れている人がいたら、その人にこの記事を渡してほしい。

もしも人事/人材開発/人材管理に携わっているのであれば、あなたには配慮する義務がある。タイムシートを確認し、なぜこれほど多くの社員がメンタルヘルスを理由に休業しているのか問うてみよう。なぜいつも同じチーム、同じアカウント、同じクライアントなのだろうか(その理由は分かっているはずだ)。社員を守ろう。社員は自分自身を守る方法を知らないかもしれない。

もしあなたがエージェンシーのリーダーであるならば、このような事態を防ぐことができる。空虚な言葉やウェルビーイング・ウォッシング(ウェルビーイングに取り組んでいるように見せかけて実態が伴わないこと)はやめよう。既にスタッフが苦労しているにもかかわらず、追加の案件を引き受けようとするのはやめよう。

もし現在、あなたのエージェンシーにメンタルヘルスを理由に休業しているメンバーが複数名いるのならば、取り組みは不十分だということなのだ。

  • タイムシートをモニタリングし、介入しよう! 休息と回復のための休暇を、従業員に直ちに与えよう。クライアントと予算とスケジュールを再検討しよう。
  • 年間のピッチ数を制限し、サポートするフリーランスを十分に確保しよう。リソースを分散させないようにしよう。
  • 自ら境界線を明確に引き、模範を示そう。(例えば、メールは勤務時間内に受信トレイに届くようスケジュールを組もう。私が広告業界で働いていた数年間、ぎょっとするような数のメールを日曜夜に受信したものだった。人々が「日曜の夜が怖い」と怯えるのも無理はない)

あなたがどの立場にいようとも、助けを受けることは可能だ。

私自身は、自分の経験を語れるようになるまで2年かかった。

恥ずかしさと恐怖心に圧倒されていた。私は「全てを手に入れよう」として、失敗した。私は、考え得る限り最高の作品を作りたいという精神で、とるべきと感じた選択をした。その結果として、私は何を示すことができたのだろうか? 自分の名前で、広告の賞をいくつか獲得したが、それだけの価値があったのだろうか? 娘が成長する間、私はどれほど多くの時間を失ったことだろうか?

一番大切なのは、私が今もここにいるということ。そして、8歳になる美しい娘のそばには、今もママがいるということだ。

しかし、親を自殺で亡くした子どもたちもいるという、悲しみで胸が張り裂けそうな現実がある。そして広告業界は今も多くの人々を、非常に弱い立場に置き続けている。

雇用主は、代わりになる人材を配置することができるし、遅かれ早かれそうするだろう。しかし、子どもたちの親の代わりになる人材を、配置することはできないのだ。

私たちは皆、バーンアウトの兆候を知っておく必要がある。そうすれば、自分や他の人にその症状が現れたときに、気付くことができる。もしも気が付いたり、自分が経験した場合には何らかの対策を講じるよう、切にお願いしたい。


アナベル・ブラック氏は広告会社で15年の経験を持つシニアアカウントディレクター。

Profile photo of Annabelle Black

提供:
Campaign UK

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