ソーシャルメディアのトレンドや行動様式が、コウモリの瞬きのように目まぐるしく変化する時代へようこそ。
この1、2年、マーケターはメタバースの盛衰や、ファッショントレンドのサイクル崩壊など、ソーシャルメディア終焉の危機を目の当たりにしてきた。そして、今やソーシャルメディアは、ホラー映画のような不気味な雰囲気に包まれている。
不気味な変貌
ネットの闇に潜む監視者、ゾンビのようにしつこい性的ボット、シャドウワーク・ジャーナル(怪しいメンタルヘルス本)の流布、誰か分からない不気味なフォロワー、詐欺師からのダイレクトメッセージ、 極悪非道な企業オーナによる破滅的スクロール:ネットの世界はとても怖い。
ソーシャルメディアは、2、3年くらい前から、ローンチ当時とは大きく様変わりしてきた。最初は、人々もこの変化を冷静に受け止めていたが、だんだん楽しめなくなってきている。
ソーシャルメディアが不吉な方向へと変貌しつつある今、年配のユーザーは「かつてのソーシャルメディアに戻りたい・・・」とつぶやきながら、リアルでオープンなつながりを築けていた昔のソーシャルを懐かしんでいる。
普通に趣味を共有し、友人や見知らぬ人々と親密な交流をしていた、かつてのソーシャルメディアが恋しいのだ。TikTokのバイラル「エイジング(老化)」フィルターが、「60年代末」のサウンドとともに流行っているという。今はすべてが奇妙で、偽物で、そしてどこかおかしい。
3、2、1、アクション!
投稿に何のつながりもなく、何だか奇妙なもののように感じられるのは、それがすべて演じられたものだからだ。今日のソーシャルユーザーが投稿するコンテンツの数々は、まるでストリーミング配信されるB級ホラー映画のようだ。
演技の苦手な役者(ユーザー)にとって、ソーシャルメディアはキュレーションされたカルーセルやフィードを見るためのものだ。たとえそれが自然で、本物のように感じられても、あるいは不気味に感じられても、何が本物で、何が嘘で、何がぼったくりなのか、見分けることは難しい。今日のソーシャルの世界では、すべてを演出することができる。それ自体は良くも悪くもないが、私たちのソーシャルホラー映画にとっては最悪で、それが映画『ゲット・アウト』の雰囲気を醸し出す原因になっている。
誰もが、何が本物か偽物かを見極めようとすることに疲れ果て、不気味の谷のような雰囲気に怯えている。そして、それが人々の精神の安定をかき乱している。よく言えば、ほとんどのユーザーは、考え過ぎているだけで、被害妄想であり、判断を恐れているだけだ。しかし最悪の場合、自分自身を仲間や他人と比較して精神に大きなダメージを負うことになる。
コンテンツ制作者は、「いいね!」の数よりもシェアの数が多いのは、投稿が面白いからか、親近感が湧くからか、失笑を買っているからか、それとも、誰かのグループチャットで話題になっているからか、まるで分からず、独り悩んでいる。しかし、これは誰にもわからないのだ。制作者に分かるのは、コンテンツ制作やソーシャル投稿の裏には、不自由な恐怖や不安があるということだけだ。現代のソーシャルメディアでは、誰かが見ているが故に、さまざまなネガティブな感情が渦巻くことになる。
もし彼らに勝てないなら・・・
悲惨なのは、私たちは皆、ソーシャルメディア上では「自分らしく、好きなことを投稿すればいい」と励まされてきたはずなのに、今ではまるで、映画『イービル・デッドII』の邪悪な渦の中にいて、虚空に向かって叫んでいるだけのように感じられることだ。私たちは皆、恐怖のエコーチェンバーから逃れたいのに、それすらできないでいる。
だが、私たちは今、このソーシャルホラー物語の重要な局面を迎えようとしている。ソーシャル時代が前向きな結末を迎え、願わくは次の時代がもっと良くなることを望みたい。
続編はジャンルを変えるかもしれない?
理想的な物語の続編は、ソーシャルメディアを悩ませたクリックベイトやセンセーショナリズムの、暗く危険な領域からの脱出から始まる。ヒーローが進む旅は、かつて私たちを悩ませたステレオタイプがもたらす社会的ホラーを打ち負かし、感動的な結末へと導くのだ。私たちはより快適で安心な空間への扉を開け放ち、インターネットの「より安全な」コーナーを駆け抜けていく。
ソーシャルメディア世界における次の章では、少しずつユートピアに近づく雰囲気が漂い、私たちにはすでにそれが見え始めている。新しいソーシャル・プラットフォームやソーシャル・チャンネルが登場し、そこでの行動はすべて、コミュニティ感覚とその温かさを受け入れることにつながっている。
ソーシャル・インタラクションやエンゲージメントの風景は変貌を遂げつつある。大手ソーシャル・プラットフォームの画一的なアプローチに代わり、小規模なコミュニティが繁栄し始めているのだ。
調査によると、30歳未満の消費者の60%は、このような小規模なソーシャルコミュニティを好むだけでなく、むしろ積極的に求めているのだという。このようなコミュニティは、ダイレクトメッセージやワッツアップ(WhatsApp)のグループチャットなど、より自分らしくいられるデジタル空間を形づくっている。それらは、インターネットの不吉な影から外れた、隠れたエアポケットやニッチなスペースだ。このような新興のソーシャル・ユートピアでは、熱狂的でありながらリラックスした交流が行われ、共通の興味に基づいて絆が築かれている。
映画ファンが集まるLetterboxdのような熱狂的なプラットフォームや、ビーハイブ(Beehive)、アーミー(Army)、ネイビー(Navy)、テイラー・スウィフトのファンが集まるスウィフティーズ(Swifties)のようなソーシャルメディア上の専用スペースがそれだ。レディット(Reddit)のサブレディットr/nosleepには、キャンプファイヤーのような雰囲気さえ漂っている。
ソーシャルメディアの次の時代は、ダークウェブの対極にある。そして多くの人々が、すでに自分だけの居心地の良い最終目的地を探す旅に出ている。さあ、あなたも自分の居場所を見つける旅に出かけよう。
ブリー・パトリックは、バーバリアンのアソシエイト・ストラテジー・ディレクター