第2四半期(4〜6月)のオーガニック成長率は8.2%。売上総利益は前年同期比19.3%増の2600億円で、16.4%増だった第1四半期を上回った。
調整後営業利益は前年同期比31.5%増で、350億円。当期利益が前年同期比マイナス40%だったにもかかわらず、調整後当期利益は同49.9%増。オペレーティングマージン(調整後営業利益÷売上総利益)は13.5%増だった。
好決算の大きな要因はカスタマートランスフォーメーション&テクノロジー(CT&T)の増収で、1〜6月期(上期)は前年同期比22.5%増。売上総利益の32.3 %となり、海外事業ではさらに大きな数字を占めた。
「広告業界で急速な成長を遂げているCT&Tに注力したことで、弊社のサービスや収益構造、コスト構造が変わった。その結果が好業績をもたらしました」と五十嵐博・同グループ代表取締役執行役員CEO。同氏は売上総利益の50%をCT&Tに依存する「エージェンシーとコンサルタンシーのハイブリッドモデル」を目標に掲げる。同グループは7月にアイルランドのペクスリファイ社、8月にインドのエクステンシア社を買収、1千人近いスタッフを補充し、この分野の強化を加速させている。
電通グループは昨年の第2四半期から第4四半期にかけてふた桁のオーガニック成長率を記録、コロナ禍による業績不振から力強い回復を示した。今年第1四半期の売上総利益も前年同期比16.4%増だった。
地域別業績
第2四半期における電通インターナショナルのオーガニック成長率は8.4%で、電通ジャパンネットワークの7.9%を上回った。地域別では米州が9.6%でトップ。次いでEMEA(欧州・中東・アフリカ)の4.9%、APAC(アジア太平洋、日本を除く)の4.5%だった。
上期で最も高い成長率を記録したのも米州で、11.4%。メディアとCXM(カスタマーエクスペリエンス管理)は共にふた桁成長。特にカナダの業績が好調で、低調だったブラジルとメキシコをカバーした。
日本における上期のオーガニック成長率は9%。デジタル変革への旺盛な需要、11.9%の成長率を記録したセプテーニ・ホールディングスなどが成長を牽引した。日本を除くAPACは4.8%。中国での新型コロナウイルス感染拡大による行動制限が影響したが、オーストラリア、インド、韓国、シンガポールが好調に推移した。
成長率が最も低かったのはEMEAで、4%。ただしロシアでの事業を除くと、7.2%。ロシアでの事業は原則的に現地企業に売却予定で、すでに現地各社と合意に至っているという。他では英国、ドイツ、デンマークが好業績。CXMは全体でふた桁の成長率となった。
上期の売上総利益構成比では日本が42%、次いで米州が28%、EMEA 21%、APAC 9%だった。
サービス別ではCXMがグループ全体で13.6%とふた桁の成長率を記録。メディアは5.8%で、米州とAPACはふた桁成長。クリエイティブはわずかに1.1%増で、APACの低調さが重荷となった。
今後への手応え
好業績に支えられ、電通グループは2022年度通期(1〜12月)目標である「オーガニック成長率4〜5%」を変更せず、上限付近での着地を見込む。
配当性向も今後数年で35%まで漸進的に高めていく。同グループは今年2月、発行済み株式数の7.3%に当たる2000万株、400億円を上限とした自社株買いを年内中に実施すると発表。その一環として7月には80万3000株、総額33億9000万円の自己株式を取得した。
(文:ロバート・ザワツキー 翻訳・編集:水野龍哉)