エアビーは今後もブランドマーケティングに特化した戦略で、消費者へのアピールを図っていく。
同社は米証券取引委員会に提出した報告書の中で、ブランドマーケティングとパフォーマンスマーケティングを合わせたマーケティング支出が第1四半期は9860万ドル(約108億円)減少し、1億1900万ドルになったと発表。収益は5%増の8億8700万ドルだった。
マーケティング支出が減少した最大の要因は、「パフォーマンスマーケティングを減らし、ブランドマーケティングを増やしたこと」。エアビーは今年2月、これまでで最大となるグローバルキャンペーン「Made possible by hosts」をスタートさせた。今後5年間の展開を予定している。
共同創業者でCEOのブライアン・チェスキー氏とCFO(チーフフィナンシャルオフィサー、最高財政責任者)のデイブ・スティーブンソン氏は株主向け説明会で、「我が社のマーケティング戦略は大きな成功をもたらしている。マーケティング支出をほぼ半減させたにもかかわらず、トラフィック効果(クリック数やクリック率など、消費者に広告をクリックさせること)は2019年に近いレベル。大きな自信を持てた」と語った。
株主向けのレターでは、「ブランドマーケティングを増やし、ブランド力を活用するのが我が社の戦略。ダイレクトチャネルやアンペイドチャネルを通して訴求し、ゲストをさらに増やしていく」と記述。
「第1四半期のトラフィックの9割はダイレクトチャネルとアンペイドチャネルによってもたらされたもの」(チェスキー氏)
「ユニークで個性的な商品を持っていれば、マーケティングの役割は顧客を『買う』ことでも、ブームをつくることでもない。『知ってもらう』ことが大切なのです」。ゲストとホストを増やすための新しいキャンペーンの重要性を、同氏はこのように語る。
コロナ禍以前、エアビーはトラフィックを増やすためにペイドサーチやアフィリエイト広告などのパフォーマンスマーケティングに多額の支出をしていた。だが昨年、その戦略を転換。年間のマーケティング支出は11億4000万ドルから4億8200万ドルと激減した。
チェスキー氏は今年2月の年次決算報告で、「収益に占めるマーケティング支出の割合を2019年のレベルから大きく下げる」と公言。その理由として、「パンデミックの間、パフォーマンスマーケティングを一切行わなかったにもかかわらず、オンライントラフィックの95%を維持できた」ことを挙げた。
スティーブンソン氏は第1四半期決算説明会で、「パンデミックの間にそれ以前のマーケティング戦略を変更し、新しい戦略を決定した」と話した。
エアビーは昨年12月、米ナスダック市場で新規株式公開(IPO)を実施。それ以来、厳正なマーケティング投資を行っていることを熱心に投資家に説く。そして、「今年の残り3四半期でマーケティング効果を実質的に高めていく」とも。
エアビーのクリエイティブを担うのはDroga5(ドロガファイブ)で、メディアはエッセンス社(WPP傘下)。テレビとデジタルチャネルを活用した「Made possible by hosts」は、エアビーの5大市場である米・英・仏・加・豪で展開する。
「消費者はロックダウンが終わり、再び旅行ができるようになるのを心待ちにしており、このキャンペーンは非常に高い関心を呼んでいる」(エアビー)
競合するブッキングドットコム社も、収益に占めるマーケティング支出の割合を縮小したと発表。「第1四半期はダイレクトなトラフィックが増え、ペイドチャネルのROI(投資利益率)が改善した」
ブッキングのデビッド・グールデンCFOは、「CPC(コスト・パー・クリック)やコンバージョン率など、ROIを左右する要因は多数ある。パンデミックによる不透明感は今も高く、デジタル広告市場はいまだ非常に不安定な状態だ」と述べている。
(文:ギデオン・スパニエ 翻訳・編集:水野龍哉)