Shawn Lim
2024年8月20日

オラクルが広告事業から撤退 アドテク企業は何を学ぶべきか?

ビューアビリティとアドベリフィケーションでアドテク業界をリードしてきたオラクルが、9月で広告事業から撤退する。この件から得られる、アドテク業界への教訓とは?

オラクルが広告事業から撤退 アドテク企業は何を学ぶべきか?

* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

かつて広告データのリーダーであったオラクル(Oracle)が2024年6月に、広告部門であるオラクル・アドバタイジング(Oracle Advertising)を閉鎖すると発表した。

この決定は、データロジックス(Datalogix)、グレープショット(Grapeshot)、モート(Moat)、ブルーカイ(BlueKai)といったサービス群を含むODC(Oracle Data Cloud)の終了を意味する。同社は現在の戦略的ビジョンとの不一致を閉鎖の理由として挙げており、今年の9月末まで広告事業をサポートする予定だ。

この情報はODCチームに事前に通知されることなく投資家に共有され、現従業員や元従業員を驚かせた。オラクルの広告事業の売上高は2024年に3億米ドルに減少し、データロジックスやブルーカイなどの資産が売却される可能性がある。

同社はモートやグレープショットなどの資産を有していたにもかかわらず、オラクルの戦略的な失策や規制上の課題、社内の資金不足が低迷を招いたといわれている。アドビ(Adobe)との競争に失敗し、ケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica)のスキャンダルやEU一般データ保護規則(GDPR)の施行に挫折したことも逆風となった。

オラクルが広告事業からの撤退を決めた理由と、このことがアドテクノロジー業界にとって何を意味するのか、専門家に話を聞いた。

オラクル撤退で生じた穴を埋めるのは誰か?

特にビューアビリティ(視認可能性)やアドベリフィケーション(広告検証)といった分野で大きな影響力を持っていたオラクルが、収益減少を理由に広告事業を閉鎖したことで、プログラマティック広告市場に大きな穴が生じる。

収益減少の主な要因は二つある。まず、テック大手の間の競争により、各社は自社プラットフォームでのデータ収集を互いにブロックするようになった。その結果、オラクル・アドバタイジングのさまざまなテクノロジーが、こうしたウォールドガーデン(エコシステム内で閉じられた環境)から排除されることになった。

次に、歴史的観点から見ると、人気を博したものは往々にしてコモディティー化する。当初はデータが無いため、ブランドやエージェンシーは新しいメディアを理解するために実験的な広告予算を割り当てることになる。このパターンは印刷物やラジオ、現在はコネクテッドTV(CTV)やポッドキャストでも見られる。

ブランドメトリクス(Brand Metrics)CEOのアンダース・リトナー氏は、オラクルの広告ビジネスの多くはビューアビリティを注目の指標として評価することから始まったと説く。現在ビューアビリティのデータは話題に上ることがなく、もはや当たり前のものと見なされている。そのため価値は低く認識され、予算はアテンション(注目度)やブランドリフト(広告が与えた効果)など他の指標に振り向けられてしまう。

「このことは、データベンダーとして技術革新を止めることはできないということを証明しています。収益がメディアでの配信と、キャンペーンの配信の把握に偏っている場合はなおさらです」とリトナー氏。「この知見はいずれ、キャンペーン効果に近い知見、つまり広告主の実際のビジネス成果に近い知見に取って代わられるでしょう」。

オラクルが強い存在感を示していたもう一つの市場はアドベリフィケーションで、同社のモートはダブルベリファイ(DoubleVerify)やインテグラル アド サイエンス(Integral Ad Science)と競合していた。

モートの閉鎖により、オラクルの顧客はブランドセーフティや文脈ターゲティング、データマネジメントといった重要なサービスについて、代替となるベンダーを探さなければならなくなった。これは他のアドテク企業にとって、新規顧客を獲得する絶好の機会となる。

しかし他社にもたらされるのは、新規事業という形でのチャンスだけではない。オラクルの広告事業が人員削減を行うことで、経験豊富で熟練したアドテク専門家が数多く転職市場に出てくるのだ。

メディアコンサルタントのナディヤ・オマル氏は、オラクルの撤退によって生じた穴はすぐに埋まるだろうと予想している。オラクルの製品やサービス群には、同等の能力を持つ競合相手がアドテク業界に存在するため、他社がクライアントを獲得するからだ。

他のアドテク企業にとって、プライバシーに準拠した広告主向けのオーディエンス・ターゲティング・ソリューションへの取り組みを加速させることがチャンスにつながると同氏は指摘する。

「その一方で、広告主の支出は依然としてメタ(Meta)やグーグル(Google)といった少数の有力企業に偏っているため、即座に状況が大きく変わることはないでしょう。しかし、リテールメディアは既に大きく成長しており、先行きが楽しみです」。

同じような運命を回避するために

オラクルの広告事業の低迷は、厳しいデータプライバシー法によって時代遅れになったサードパーティデータへの依存度が高かったことにも起因している。グーグルは最終的にCookie廃止の方針を撤回したが、オラクルにとっては遅すぎる判断だった。

例えばオラクルは、消費者データの扱いに関するプライバシー訴訟で1億1500万米ドルの和解に合意。サードパーティデータへの依存と、GDPRのような規制上の課題が、この件で明るみになった。

同社のように消費者データの収集や転送、利用を専門とする企業はもちろんのこと、あらゆる広告ビジネスにとって、サードパーティデータからの脱却やさまざまなプライバシー規制への準拠は難しいことだ。

クリアコード(Clearcode)のマーケティング責任者であるマイケル・スウィーニー氏は、競争が激しくて細分化された業界で、数億から数十億米ドル規模の買収から投資利益率をプラスにすることは難しいと言う。

「数年前に、通信事業会社がこのような事態に陥りました。世界最大級の通信会社のいくつかが、巨額の資金でアドテク企業を買収しましたが、数年後に損失を出して売却しました」とスウィーニー氏は説明する。「オラクルと通信会社では状況が違いますが、イノベーション、成長、既存システムとの統合に重点を置く戦略的ビジョンを持たずに、高額なアドテク企業を買収することには問題があります」。

サードパーティデータからファーストパーティデータへの移行は数年前から進んでいる。だがプライバシーをめぐる状況が常に変化する中で、過去のビジネスモデルやプロセスに基づいて構築した広告ビジネスやデータビジネスを維持し、成功させることは非常に難しいことに、他の企業も気付いている。

オラクルの広告事業の閉鎖とプライバシー訴訟の和解は、プライバシーに準拠しながら主要な広告プロセスを実行する方法を見つけることの重要性を浮き彫りにしている。

今日の企業にとっての課題は、プライバシー法を遵守しながら、特に個人データの収集を中心とした広告事業を成功させるのが難しくなっていることだ。

非営利のコンソーシアム「IABテクノロジーラボラトリー(IAB Technology Laboratory)」のSDA(Seller Defined Audiences)など、プライバシーに配慮した代替手段は数多く市場に出回っているが、こうしたソリューションに対する需要は低いようだ。

オラクルの閉鎖は、トラブルに巻き込まれずに利益を上げたいと考えるアドテク企業にとって、データプライバシー法に準拠した方法での運営に投資とエネルギーを集中させるべきだと明確に示すだろうとオマル氏は説く。

「プライバシーのコンプライアンスと、オーディエンスに効果的にリーチする革新的な方法は、評判の高いほとんどのアドテク企業にとって優先事項です。イノベーションを起こし、未来がどうあるべきかを見極める以外の選択肢は彼らにはありません」とオマル氏。「Unified ID 2.0、リテールメディアとデータ、パブリッシャーのファーストパーティのオーディエンスなどは既に利用可能です。広告主やエージェンシーが頼りにできる技術はいくらでもあるので、必要なのはただやり遂げるということです」。

アドテク業界の未来

多くの企業はGDPRやその他のプライバシー法、アップル(Apple)のSafariやモジラ(Mozilla)のFirefoxのプライバシーポリシーの変更を踏まえ、ファーストパーティデータの収集と活用に注力してきた。サードパーティデータを大々的に利用する時代は、基本的に終わったのだ。

データ企業は今後、さまざまなプライバシー法に準拠しながら顧客に価値を提供する、革新的で新しいソリューションの開発に注力するだろう。

データクリーンルームの導入によって、このような動きは既に始まっている。そして今後数年間で、特に機械学習やAIによるデータ分析を中心に、さらなるイノベーションが起こることは間違いない。

既存のテック系事業を買収する際の主な課題の一つは、他のシステムとの統合だとスウィーニー氏は指摘する。例えばオラクルは4年間で6社を買収したが、多くのレガシーシステムを統合しなければならなかった。

「このようなシステムの統合が半分ほど終わった頃に、市場は変化しているもの。技術や顧客基盤のために企業を買収することは、市場シェアを拡大するための優れた戦略です」とスウィーニー氏。「革新的なソリューションを作るのはもちろん、それらを統合して成長と価値を生み出すのは、しばしば困難なことです」。

小売のプラットフォームもデータの宝庫であり、広告主とアドテク企業がどのようにパートナーシップを進化させ、リテールメディアを活用していくかが注目される。

現在、ソーシャルプラットフォームはウォールドガーデンの豊富なデータを満喫しているようだが、アドテク業界全体でみればまだ関心は高くない。

しかし、規制上の課題に直面しており、規制当局が監視を強化するのは時間の問題だ。そのため、アドテク企業は今のところ、他の分野に焦点を当てている。

「コンテンツマーケティングと、インフルエンサーとのパートナーシップは、広告主がオーディエンスを探し出してリーチできる可能性がある方法です。これが、ソーシャルプラットフォームのパートナーシップが長期的に進化できる領域なのかもしれません」。

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