Jessica Goodfellow
2021年7月30日

コカ・コーラ、マーケティング投資を対前年比で倍増

飲料大手のコカ・コーラでは、2020年に大きく削減したマーケティング投資が順調に回復してきている。投下した費用に対する質の向上とターゲティング重視の方針により、東京オリンピックでのプロモーション計画は縮小されたが、顧客へのダイレクト販売(D2C)は成長が続いている。

コカ・コーラは、東京オリンピックに向けて特別デザインの自動販売機を公開したが、その後は、リアルなプロモーション活動は縮小している。
コカ・コーラは、東京オリンピックに向けて特別デザインの自動販売機を公開したが、その後は、リアルなプロモーション活動は縮小している。

コカ・コーラは、フォーカスするブランドの数を絞り、より効率的なマーケティングを展開すると決定したことで、パンデミックに突入した頃よりも力強く、その影響からの脱却が進んでいるように見える。同社の第2四半期の売上は予想を上回り、通期の見通しも上方修正された。

2020年、コカ・コーラはパンデミックを乗り切るため、マーケティングコストの削減、ブランドポートフォリオの合理化、組織構造の見直しなどを断行した。

その結果、予想以上に早い回復を成し遂げている。7月2日までの3カ月間の売上高は、42%増の101億ドル(約1兆1090億円)となり、純利益は、前年同期の17億8000万ドルから48%増えて26億4000万ドル(約2898億円)となった。

1年前を振り返ると、2020年の第2四半期には、少なくとも過去30年間において最大の四半期売上急落を報告しており、今期の決算は大きな好転といえる。

2021年の売上高のオーガニックグロースは1桁台後半という予想だったが、これも12~14%に上方修正された。

最高財務責任者のジョン・マーフィー氏は、7月21日の決算発表において、2020年はマーケティングコストを大幅に削減したが、今期は前年同期比で「2倍」まで増やしており、それが好結果につながっているとアナリストらに説明した。

同社の年次報告書によれば、2020年の広告費支出は前年比35%減の27億7000万ドル(約3040億円)だった。金額にすると、14億7000万ドル(約1614億円)の減少だ。現在は、合理化されたブランドポートフォリオを支えるため、「より強力なマーケティングとイノベーションの計画」に投資しているとマーフィー氏は述べている。

マーフィー氏は決算発表で、「2021年のこれまでを振り返ると、第2四半期は大きく回復した」として、「今期の目標を達成するだけでなく、2022年に向けて万全の準備を整えるため、消費者向けの活動や今期後半のプロモーション活動にあてる予算を倍増させている。パンデミック前の、2019年に匹敵するレベルの積極的な投資計画だ」と語った。

しかし、ただマーケティングへの予算配分を増やすだけでなく、投下した費用に対する質を高めることにも注力していると言い添えた。

そして「私たちの目的は、同程度の予算でもより多くのものを生み出すことであり、特にデジタルメディアのような新しい分野については、これまでの進捗にとても満足している」と述べた。

マーフィー氏は、コカ・コーラのマーケティング投資における3つの優先事項についても明らかにした。それは、消費者向けのマーケティング予算を2019年の水準まで引き上げること、投下した費用に対する質を高めること、そして、よりターゲットを絞って予算を配分することだ。同社のグローバルマーケティング・カテゴリーリーダーシップチームは、特にイノベーションとマーケティングの効果・効率を重視しているという。

CEOのジェームズ・クインシー氏は、2020年7月に、サプライチェーンの回復力強化のため、主力ブランドと最小管理単位(ストックキーピングユニット/SKU)を「断固として優先」し、「ゾンビブランド」を撤廃するという計画を発表していた。その結果、オドワラのジュース事業からは撤退することとなった。

2020年8月に発表された新しい組織構造は、コラボレーションを促進し、商品の規模をより早く拡大し、リソースの重複をなくすことを目的としている。新組織は、オペレーティングユニット、カテゴリーリーダー(グローバルマーケティング・カテゴリーリーダーシップチームなど)やプラットフォームサービス(データ管理、消費者分析、デジタルコマースなど)、そして、グローバルにおける戦略やガバナンス、規模を提供する「センター」で構成されている。なお、新体制への移行に伴い、7月2日までの6カ月間に2億500万ドル(約225億円)の費用を計上したが、これは主に退職金と年金に関連するものだとコカ・コーラは説明している。

東京オリンピックのプロモーション活動は縮小

コカ・コーラは、東京オリンピックのトップパートナーとして、リアルでのプロモーション活動を予定していたが、すべてのプランを「縮小」したと明らかにした。

「基本的に、リアルなプロモーション活動は実行されない(中略)実行できるかどうかわからないという不確実性が理由の一つだ」とクインシー氏は決算発表の席上で語った。「(その結果)市場を活気づけるための大きな投資はこれ以上行わないことになった」

その代わりとして、コカ・コーラは、アスリートに飲料を提供し、米国などでオリンピックの放映時間帯に商品CMを流すなど、オリンピックを「適切に支援」しているという。

ダイレクト販売(D2C)のイノベーション

マーフィー氏はコカ・コーラの「継続的な成長の原動力」として、マーケティングに加えて、D2C(direct-to-consumer)投資を含むイノベーションを挙げた。

その一つがWabiアプリで、消費者がアプリでコカ・コーラ商品を注文すると、人口密度の高い都市にある小規模店舗が商品を配送してくれるというものだ。

クインシー氏によれば、Wabiは「配車サービスとよく似た」仕組みのアプリで、消費者は15~20分で注文した商品を受け取ることができる。最初は中南米のB2B2Cエコシステムでテスト運用を実施したが、現在はすでに14カ国で展開している。さらに、ほかの日用消費財(FMCG)のパートナーもアプリに追加され、今では飲料だけでなくあらゆるカテゴリーの商品を注文できるようになっているという。

クインシー氏は決算発表において、「これは興味深い試みであり、多くのインサイトやデータが得られている」と語った。

一方、日本では、消費者と自動販売機をつなぐD2Cアプリ「Coke ON」のダウンロード数が、この第2四半期に2800万回を超え、消費者の認知度が前年より格段に高まっている。

また、北米では、eコマースにおけるリテール販売額が、年初から54%上昇しており、ヨーロッパの主要市場でも、50%以上の伸びを示しているという。

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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