WARCの調査報告書「Global Advertising Trends : State of the Industry (広告業界の現状)2020/21」によると、今年の世界の広告費は10.2%(634億米ドル)減、総額で5573億ドルになるいう。
前回、5月に発表された同報告書の予測(8.1%減)よりもさらに2.1ポイント悪化した。
2021年は6.7%増となるが、今年の減少分の59%を取り戻すに過ぎない。2019年のレベル(6206億ドル)まで戻るには、2022年にさらに4.4%の成長が必要と指摘する。
今年、米国大統領選挙で使われた49億ドル分を除けば、世界の広告費は11%(680億ドル)減。リーマンショックで613億ドル減(前年比12.9%減)となった2009年の減少額を上回る。
従来型メディアは記録的な減少
従来型メディアはすべての分野で広告費が減少。全体で19.7%(624億ドル)減で、総額2539億ドルになる。リニアTV(配信中の番組が流れる従来型のTV放送)は16.1%(299億ドル)減。
広告費全体の54.4%を占めるオンライン広告はほぼ横ばい(0.3%減)で、総額3033億ドルに。ITバブルがはじけた2000年以降で、今年は初めて成長が止まる。
映画とOOH(屋外)広告は今年大きなダメージを受けるが、来年はそれぞれ41.2%、20.2%増と急速な回復を遂げる。
今年最も伸びるのはソーシャルメディアで、9.3%増の983億ドル。来年はさらに12.2%の成長を遂げて1103億ドルとなり、全広告費のほぼ5分の1(18.6%)を占める。
着実な成長を遂げるオンライン動画は今年7.9%増の527億ドルで、来年はさらに12.8%増。ペイドサーチ(検索結果に連動して表示する広告)は今年若干減となるが、来年は回復して7.0%増、1306億ドルとなり、全広告費の5分の1を超える(22.0%)。
「旅行」「自動車」が大きな痛手
自動車業界の広告費は今年21.2%(110億ドル)減で410億ドルに。この減少額は全業界の減少額の17.4%に相当する。小売業は16.2%減の543億ドル、旅行業界は33.8%(84億ドル)減の164億ドルとなる。
(文:マシュー・ミラー 翻訳・編集:水野龍哉)