David Blecken
2017年10月05日

スパイクスアジア2017:日本勢の活躍

今年度のスパイクスアジアでは博報堂と電通、オグルヴィ・アンド・メイザーがグランプリを受賞。日本のクリエイティブの質の高さを示した。

佐々木康晴氏
佐々木康晴氏

シンガポールで開催された今年のスパイクスアジアでは、日本勢が計87の賞を獲得。豪州の124に次ぐ受賞数だった。

スパイクスアジアは、カンヌライオンズの主催団体とCampaignの発行元であるヘイマーケット・メディア(Haymarket Media)が共催するアワード。アジアで最も権威ある広告のクリエイティブ賞とされている。

ポイント獲得数に基づく「トップ・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれたのは、電通。その国際的な活動が評価され、「ネットワーク・オブ・ザ・イヤー」でも2位となった。また、3社が選ばれた「インディペンデント・エージェンシーズ・オブ・ザ・イヤー」ではenjin(エンジン)が受賞。最も活躍した制作会社に贈られる「スパイクス・パーム・アワード」は、東北新社が受賞した。

グランプリは日本企業3社が受賞。エンターテインメント部門ではソニー・インタラクティブエンタテインメントの「重力猫」(制作:博報堂)、イノベーション部門ではトヨタの「Smile Lock Outlet」(同:電通)、そしてプリント・アンド・アウトドアクラフト部門では佐川醤油ポスター(同:オグルヴィ・アンド・メイザー)がそれぞれ選ばれた。重力猫はフィルム部門とフィルムクラフト部門で金賞、デジタル部門でも銀賞を獲得した。

デザイン部門でも日本勢は顕著な活躍を見せ、39の賞のうち14の賞を獲得。金賞を受けたオグルヴィの佐川醤油以外では、地震への備えを人々に奨励する神戸新聞の「避難所もっとより良く非常袋」(電通)、佐賀市のPR「佐賀海苔 名刺のりプロジェクト」(ジオメトリー・グローバル)などが受賞。PR部門では、同じく災害への備えを説いたヤフージャパン(博報堂ケトル / 博報堂)が銀賞を獲得した。

デジタル部門は、電通と博報堂が席巻。日清の「Instant Buzz 侍ドローン猫アイドル神業ピタゴラ閲覧注意爆速すぎる女子高生」やヤフージャパンの「聞こえる選挙」などが受賞。モバイル部門では江崎グリコの「GLICODE(グリコード)」(電通)が金賞を獲得した。

フィルム部門ではこれら2大広告代理店に加え、ADKやマッキャン、TBWA\Hakuhodo、I&S BBDOなど数多くの企業が受賞。フィルムクラフト部門ではビームスの「Tokyo Culture Story」(SIX / 博報堂)が金賞、アウトドア部門ではアディダスの「Green Light Run」(TBWA HAKUHODO)が銀賞を獲得した。後者は都会を走るランナーのためにテクノロジーを駆使したサービスを創出、アウトドアのジャンルに新風を吹き込んだことが評価された。

ヘルスケア部門は日本ではあまり重視されない分野だが、バンドエイドは創意に富んだ「踊るバンドエイド」(I&S BBDO)を出品、銅賞を獲得した。 バンドエイドを面白く見せるという、ショート動画でもかなり難度の高い課題をクリアしたことが評価された。

デジタル、モバイル、デジタルクラフトの部門で審査委員長を務めた佐々木康晴氏は、全部門の中で最も気に入った作品として、豪州マクドナルドが人材採用のために取り入れた「Snaplication」を挙げた。これは10秒の動画を利用することで、誰でも簡単に仕事に応募できる仕組み。

同氏は「ブランドが人々に力を与えるため、テクノロジーを活用していることを心強く思った」と述べる。だが、「AI(人工知能)をもっと賢く活用してほしい。まだ安易なプロモーション目的で使用されているケースが目立ちます」とも。「もしクリエイティブに携わる人々がアイデアとAIをきちんと結びつけることができれば、非常にパワフルなイノベーションになるでしょう」。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

1 日前

トランプ再選 テック業界への影響

トランプ新大統領はどのような政策を打ち出すのか。テック企業や広告業界、アジア太平洋地域への影響を考える。

1 日前

誰も教えてくれない、若手クリエイターの人生

競争の激しいエージェンシーの若手クリエイターとして働く著者はこの匿名記事で、ハードワークと挫折、厳しい教訓に満ちた1年を赤裸々に記す。

2024年11月15日

世界マーケティング短信:化石燃料企業との取引がリスクに

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2024年11月13日

生成AIはメディアの倫理観の根幹を揺るがしているか?

SearchGPT(サーチGPT)が登場し、メディア業界は倫理的な判断を迫られている。AIを活用したメディアバイイングのための堅牢な倫理的フレームワークはもはや必要不可欠で、即時の行動が必要だとイニシアティブ(Initiative)のチャールズ・ダンジボー氏は説く。